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ホバークラフトはゆっくり前に進んだ。真美子は達志に言った。

「ここは…どこなの?」

「ここは…さっきも言ったがはりぼての裏だ。いかに虚構の町を精巧に作りあげてるかがわかるだろう。」

ホバークラフトは進む。辺りは暗く、機械に包まれている。やがて一瞬だが、窓が見えた。中に大量の人間が横たわっている。

「何あれ!」

やがてホバークラフトは上昇し、青空が見えた。その時真美子が見たのは奇怪な光景であった。小さな町がいくつかあり、そこに非常に巨大な鉄壁がおおっていたのだ。

「こんな壁…あった?」

「あった。だがあの壁は精巧な3Dディスプレイで、町の住民からはただの山に見える。あのディスプレイの目的は、この場所を隠すためなのだろう。」

「でも、普通に探検とかしたらばれない?」

「そうなればすぐに処分される。」

「処分…て…人が減るの…」

「いや、そうではない…次行こう。」


ホバークラフトは下降した。そして先程通過した、大量の人間が横たわる部屋に着いた。それはよく見ると同じ顔であった。

「何これ!?」

「コピーだよ。」

「コピー?」

「君は3人の僕に会ったはずだ。一人は警察にさらわれた僕、もう一人は今あのはりぼて町に何食わぬ顔で君を『真美子ちゃん』と呼ぶ僕、三人目はこの僕だ。」

「?」

「僕も、あの並んでる人みたいに量産されているんだよ。皆記憶を植え付けられ、町の人が処分されるとストックされる。だが、完全にコピーができる訳ではなく、認識力の違いもある。だから記憶を植え付ける過程で何らかの差違は生じる。『真美子ちゃん』はその一つだ。」

真美子は聞いているうちに、ある恐ろしい予想が浮かんだ。

「じゃあ…私も…」

「そう、残念ながら君も僕と同じコピーだ。知らず知らずの内にね。君の前の数人はこの目で見た。」

真美子は後退りして言った。

「嘘!嘘!」

「証拠と言われれば君のコピーに案内するけど。」

「私がコピー?じゃあ本物はだれ?」

「分からない。」

「私は本当は誰なの?」

「君は、真美子だ。」

「違う!…」

真美子は混乱した。世界どころか自分が虚構だったとは…自分は現実を演ずる俳優に過ぎなかった。しかし、俳優が存在する為には観客が必要だ。つまり外部に誰かいる。

「そもそも誰が、こんな事を始めたの…?」

「それを調べるのが我々の目的だ。」



達志によると、警察もコピーらしい。つまり、彼らも何者かに操られているわけだ。それが誰かは完全に隠されている。従って残るはハッキングしかなかった。はりぼて町を管理するコンピューターから解析するしかない。


そして、

「ちょっと、報告があります。」

とパソコン前の組織員が言った。達志が「何?」と訊ねると答えた。

「警察のコンピューターを渡り渡りに見張った結果、不思議な話が。」

「何だ?」

「どのコンピューターも、あるコンピューターと直結しているらしいのです。らしいと言うのは、セキュリティが強すぎてアクセス拒否されたからです。ただし、場所の推測は可能です。」

「どこだ?」

「B3区です。」

「…ホバークラフトの通り抜けは不可能だな。」

「そうですね。確実に監視区域に入ってしまいます。」

「よし…真美!」

達志は振り返って叫んだ。すっかり組織員となった真美子に言った。

「行こう!」



二人は自動販売機から出た。いつもの町のはずだったが、今や真美子にとって何か違って見えた。達志は言った。

「帽子とサングラスをつけよう。今や違う真美子が町を歩いているはずだ。」

言い終わるや否や、真美子が二人の左を過ぎた。二人は何食わぬ顔をしたが、彼女は自分のコピーを見て背筋に寒気が走った。

ふと達志が奇妙な行動をしていることに真美子は気づいた。彼はあちこちに砂の粒を撒いていたのだ。

「達志・・・何やってるの?」

「・・・・後で分かるさ。」


そのうち、いつも登校で使っている最寄り駅に着く。

「乗ろう。」

「うん。」

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