ワタシが空を飛んだ日
しいなここみさま主催『空飛ぶ○○企画』参加作品になります。
ふたりの少年がいた。
塾の帰り道、親友であるかどうかは兎も角、共に帰る程度には仲のいい友人だ。 多少遠回りでも付いていく程度には友人だ。
そんなふたりが立っているのは信号の下。 信号待ちであるのは明白。
ただしその格好はスタンディングスタートの姿勢。
つまり信号がスターターピストル替わりの短距離走である。 片側二車線で中央分離帯も路側帯もある、おおよそ10m程度の短距離走だ。
彼等の様な小学校の児童であればよくやった行為だろう。 実は結構危険なのだが彼等がそれを知る由はない。
車道の信号は黄色に変わった、 歩道の信号が青に変わる、その瞬間を ――待つ。
息を整える。
靴紐は疾うに結び直され準備は万端。
何がそこまで彼等を掻き立てるのか、それを知るのは本人たちだけだろう。 いや、もしかしたら彼等もそんな事は知らないのかも知れない。
理由などはない。
そこに着いた時、タイミングよく信号が変わりそうだからそうするだけなのだ。
青に変わった瞬間、猛然と走り出すふたり。
もっとも、その勝敗など決まっている。
少年は友人より体格は大きくちからも強いが足は遅いのだ。
いつもの様に友人は先にゴールすると、振り返り少年を見た。
その瞬間、友人は恐らく何が起こったか解らなかっただろう。
少年も何があったか解らなかったに違いない。
――少年は
空を飛んでいた――
恐らく放射線を描き、蹴っ飛ばされたサッカーボールの様に、ポーンと
飛ばされた。
正確には跳ね飛ばされた。
話は変わるが、この作品のジャンルがエッセイである事をお気づきだろうか?
そう、この少年とはワタシの事である。
小学校4年生(5年だったかな?)の笹門優、人生初の『交通事故』であった。
信号無視、というか黄色になって加速してきたのか、青信号で曲がってきたのかは知らないが、普通乗用車がワタシのデカい図体を吹っ飛ばしたのである。 ……小学生だったワタシはその辺の状況、聞いてなかったからなあ(・・;)
ワタシにこの瞬間からその後に目覚めるまでの記憶はない、というかかなり欠けており曖昧なのだ。
友人曰く、「10mくらい飛んでった」 らしい。
その時は顔から落ちて大泣きしていた、と言うのだが、この辺りは全く記憶にない。
ワタシに残っているのは、救急車の中っぽい記憶と、レントゲン室の中らしい記憶くらいしかないのだ。
気づいたら自宅のベッドにいた感じである。
ちなみに学校は1~2日だけ休んで直ぐに登校している。
なにせ入院もしていない(´・_・`)
前歯が二本へし折れたくらいだし。
永久歯だったので、今でも差し歯だが。
そんな口の中はあちこち切れていて、ホチキスの針みたいなのが歯茎にグサグサと刺さっていたりしたのだが、回復するにつれて持ち上がってくるものだから「えいやっ」と抜いたら歯医者さんに注意された。
どうやら自分で抜くものではなかった様だ。
でもなあ、寝てる最中に抜けて間違って飲み込んでもヤだよね?
嘘もついてないのに針を飲む様な趣味はないのである。
そういえば当時、警察で「キミを轢いた人を刑務所に入れるかい?」なんて聞かれたのが記憶に残っている。
そんな事を小学生に聞くなよ、お巡り(゜Д゜;) いや、ブラックユーモアだったのか、アレは? 多分、入れるといった所でそうはならなかったとは思うんだが。
その問いに対してワタシが答えたのは「治療費を払ってくれればいい」であった。
まあ、そんなワタシであるが
あの日、望んでいた訳ではないにしろ
確かに空を飛んだのである。
ポーン、とね(*^▽^*)
ちなみに事故現場は自宅から1㎞もない様な場所であるが、後日ワタシのかけていた眼鏡がぺちゃんこになって自宅から10mほどの場所で発見されていたりする。
眼鏡にも帰巣本能があるのだろうか(・・;)
みんな、車には気をつけよう!




