理由
『俺達と族やらねーか?』
「はぁ?……お前等そんなくっだらねー理由で喧嘩売ってきたのかよ?連れションじゃあるまいし族なんか二人で入りやがれ!!ったく、痛ぇ思いして損したぜ。」
芹澤は拍子抜けした。わざわざ他校にまで喧嘩を売りに来た二人である。よっぽどな理由があると思っていたらなんと族に入ろうと誘われたのだ。
呆れている芹澤を見て晋也はツッコミを入れる。
「あれだな、お前は体で物を考えて人の話を理解しないのが欠点だな。」
「なんだとっ!なんつったてめぇ!!」
『落ち着けって!おまえらが喧嘩始めてどーすんだよ。晋也もチャチャ入れんじゃねーよ。』
「すまんすまん、つい、な。」
『芹澤、よく聞けよ。俺達は族に入るんじゃなくて、族を作ろうと思ってる。その族のメンバー候補としてお前をスカウトしに来たって訳さ。どーよ?一緒にやらねーか?』
「どーよって言われたって、そんなんいきなり言われて決めれる訳ねーだろ!第一何で俺なんだよ?強いヤツなんてそこら辺に一杯いんだろ?」
『まぁ最初はガタイ良くて強いヤツがいるって噂で聞いて試してみようって思っただけだ。そっから先はその場次第位で(笑)。でもいざ闘ってみたら強いし潔いし、こいつならって思ってよ。』
本音で話す達也を見て晋也も恥ずかしそうに口を開いた。
「俺はいつもこんなカンジで軽いヤツに見られっけど、族は硬派な族にしてぇんだよ。どこに行っても誰とカチ合っても一歩も退かねービッとした族によ。それにお前も達也と闘ってみて達也ならイケると思わねぇか?」
「確かにコイツのタフさは驚いたぜ。俺がラッシュしたのにぴんぴんしてやがった。だけどそれだけじゃ付き合えねーな。」
「なんでだよ?そんだけ強ぇの分かってりゃ問題ねーだろ?」
「族となりゃ話は別だ。」
さっきまでの口調から打って変わり真面目な顔で首を横に振る。そんな芹澤の態度に晋也が突っ込む。
「んだょ、ビビったのかぁ!?」
『晋也、止めとけよ。誰だってこの街の族の事知ってりゃビビるって。』
「…俺は一言もビビってるとは言ってねぇぞ。第一お前等は族作って何してぇんだよ?」
『ん?何してぇって言われたら[青春]ですかねぇ(笑)』
「…青春って、お前はバカか?」
『いやいや大マジで。楽しく走りてぇ、かといってどっかに入ると単独で走れねぇし。一度しかねぇ人生楽しくやりてぇじゃん?(笑)』
「ほぅ。んじゃトップとかは興味ねーのか?」
『んー、ねー訳じゃねーけど、楽しくやるのが先、かな。トップ狙ったって喧嘩しかねーだろ?そんなんじゃ楽しくねーっしょ!』
自分の理想を楽しそうに話す達也に続き晋也も話しだす。
「それに、ビッとした族っつっても別に喧嘩に明け暮れるバイオレンスを求めてるわけじゃないんだ。自分達の身を守るために筋違いな事はしない。誰かに絡まれても自分の身は自分で守る。ただそれだけさ。」
『…なぁ芹澤。お前本当に興味ねーのか?』
「は?な、なんで?」
『なんか顔がやりたそーな顔してる気が…。』
「そんな顔なんてしてねぇ!…くはねーか(笑)。…お前等の事、勘違いしてたわ。」
さっきまでの真面目顔から急に笑顔になった芹澤に今度は達也と晋也が驚かされた。
「はい?勘違いって何が!?」
「いや、今まで俺に近寄ってきた奴らは、ただ強いヤツと組んで偉そうにしたいってヤツばっかでよ。おまえらもそーゆーヤツ等かと思ってたわ(笑)。」
「それはひでーだろ(苦笑)」
「んなこと言ったって初対面で喧嘩売られて、その後族やろって言われりゃしゃーねーべ?」
『まぁ確かにな(笑)。…で?どーよ?やらねーか?』
「…いーだろ。付き合ってやるよ。だいたいおまえらみてーなアホはまともなヤツがいねーと何すっかわかんねーからな。監督約してやるよ!」
「ったく、素直じゃねーなー。やりたいならやりたいって言やーいーのによ。」
『まあまあ、晋也も素直になれよ?仲間増えて嬉しいくせに(笑)』
「ま、まあな。」
『じゃあこれから色々とあるとは思うけど、気合い入れてやってこーぜ?ただし、出来るだけてめぇらからは喧嘩を売らねーこと!筋の通らねえことはしねーこと!楽しくやるべ!』
「「おぅ!!」」