強者と2
高架下へと向う道程で芹澤が達也と晋也に聞く。
「なぁ、お前等なんでこんなことしてんだよ?」
『んー?まぁ色々と理由はあるんだけど、今はまだお前には言えねぇなぁ(笑)』
「てめぇ、バカにしてんのかよ!?」
答えにならない答えにイラついた芹澤が怒鳴る。
そしてそんな芹澤にやれやれといった表情で晋也が遮る
「まぁまぁ、怒んなよ。本当に理由はあるんだ。だけどお前の強さを確かめてみねぇと言えねぇんだわ。」
「ワケ分かんねぇな。おまえらは。」
『おっ、着いたぜ。理由は終わった後話してやっからよ。さぁ、始めようぜ。』
「本当にやんのかよ。まぁいい。かかってこいよ。俺はいつでもいいぜ?」
臨戦体制の二人に晋也が声を掛ける。
「そんじゃ、この石落ちたらスタートな。いいか?」
『おう!』「ああ」
「んじゃ行くぞ!せーのっ!」
[どすっ!]
石が落ちた瞬間に二人が全力で拳を繰り出す!
「だらぁぁ!」
『おぉらぁぁ!』
二人の拳は空を切る。しかし芹澤は拳を出したそのままの勢いで反対の手で裏拳を繰り出した。
[ゴスッ!]
ガタイがでかく動きが遅いとタカを括っていた達也は、避けるモーションが間に合わず見事に後頭部にくらってしまい、バランスを崩し倒れこんでしまう。
「っしゃあ!光葉の塚本ってのはこんなもんか、あぁ!?おら!おら!おらぁ!」
倒れた所に間髪いれず馬乗りになって芹澤が拳を振り下ろす。
[ガッ!ゴスッ!グチャ!]
[ゴンッ!ガンッ!]
一方的に殴られるままの達也の姿を見ていた晋也が呟く。
「…こいつこのガタイでこの動きかよ。しかも一発一発が重てぇ。こりゃあ達也でもやばいな。」
[ゴッ!バキッ!]
「オラッ!どうよ?痛てぇか?これで終わりだ!!オラァァッ!」
殴り続けた芹澤は、反撃出来ず一方的にボコボコにやられているだけの達也を見て勝利を確信し、最後の一撃を振り下ろす。しかしその拳は達也には入らなかった。
[ガシッ!]
マウントを取られ殴られるままだった達也が芹澤の腕を掴む、予期せぬことに芹澤の動きが一瞬止まった。
[ガンッ!]
その一瞬の隙を突き達也の拳が芹澤の顎に入る。そして芹澤が怯んだ一瞬でマウント状態から抜け出した。
『イテテテテ。いやー、ヤバかった。意識飛びそうになったぜ。強いね、お前。こりゃあ気ぃ引き締めて本気でやらなきゃな。』
「いいだけ殴られて強がってんなよ?今度こそ意識飛ばしてやるよ!」
芹澤がまたも殴りかかってくる。
[ブンッ]
達也は芹澤の右拳を躱し、カウンターで膝蹴りを食らわせる。
[どすっ!]
「ぐぅ!」
『本気で行くっつったろ?まだまだやられた分お返しすっからよ!』
「上等だ、コノヤロウ!」
『そうこなくちゃよ!!』
『「オラァァッ!」』
[ガンッ!ゴンッ!グシャ!ドンッ!ゴキッ!]
二人は息つく間もなく殴りあう。
(こいつら化けモンかよ?一体何十分殴りあうんだよ。面の形変わってんじゃん)
二人の殴り合いを見ていた晋也は溜め息を吐く
[ゴンッ!]
『はぁはぁ、渋てぇなこのゴリラ!いーかげん死んどけやゴラァ!』
[バキッ!]
「ふぅふぅ、こっちの台詞だ!足ガクガクさせて言ってんじゃねぇ!」
『うるせぇよ!行くぞコラ!』
「かかってこいや!」』
このタイマンを終わらせようと二人同時に拳を繰り出す。
[ガガンッ!]
『ぐぁっ!』「ぐぅ!」
それは見事にお互いの顎にキマり、二人同時に崩れ落ちた。
(こりゃ先に立った方の勝ちって事だよなぁ?立ってくれよ?達也。)
あえて晋也は達也に声を掛けようとはしなかった。それは、達也に声を掛け意識が戻ったとしても本当の勝利ではないと思ったからだ。そしてしばらく待つとようやく声が聞こえてきた。
『うぅ…ん…』
「達也!」
『お…。あれ?俺、気ぃ失ってた?』
「ああ。芹澤とクロスして顎に入ったんだよ。」
『っちゃ〜。マジかよ。したら俺の負けかぁ…。芹澤は?』
「あいつならまだ寝てるよ。ダブルノックアウトでどっちが先に起きるか待ってたんだよ。」
すると背後から芹澤が声を掛けてきた。
「もう起きてるよ。お前が塚本と話してる声で目が覚めた。」
「起きてたんか?言っとくけど俺が達也を先に起こしたわけじゃねーぞ?」
「言ったろ?塚本と話してんので起きたって。自分で塚本に起きんの待ってたって言ってんの聞こえてたんだよ。」
意外にもすんなりと状況を理解した芹澤にニヤつきながら達也が言う。
『お、意外に物分かりいーじゃねーか。それでこそタイマンはった甲斐があるってもんだ。』
「ふん。お前に誉められても嬉しくもねー。ったく、いーかげん教えろよ。何の為に俺に喧嘩売ってきたんだ?」
『まぁ焦んなよ。とりあえず一服しながら話すからよ。タバコ吸うか?』
「おー、一本貰うわ。だけどしょーもねぇ理由で喧嘩売ってきたんだったら殺すぞ?」
『ははは、ならちゃんと話さねーとな。単刀直入に言うぞ。…俺等と、【族】やらねーか?』