またね。大好き─────────私も大好き!!!!!!!
「どう?この服!これでいいかな?」
「…何回も言うけど、それでいいって。」
その場でくるっと回り、私に見せてくる。相変わらずゆなはちっこくて可愛い。
一ヶ月前から、ずっとずっと悩んでいた服。ゆなは選ぶ度に毎回毎回私の意見を聞いて来た。
「一緒に選んだんだから、大丈夫でしょ。」
毎回、私は行かないと言ってるのに「しぃなが行かないなら私も行かない!」とか言って駄々をこねてくるせいで、私も行かざるを得なかった。
ゆなの駄々こねには勝てない。
「…しぃな、なんか元気ない?」
「え?…いや、そんな事ないよ…」
今日、ゆなは好きな人とデートに行く。
私は会ったことが無いが、ゆな曰く、「私の好きな人は絶対に私の事好き!」と言っていたので、少なくとも好印象なのは間違いないだろう。
「ふふっ」
「…どうしたの?ゆな」
「いや、この後が楽しみすぎて…ふふふ…」
そんな顔を私以外にしないで欲しい。
ゆなはこの歳になるまで恋なんてしたことがなかったのに。
ずっとずっと私と一緒にいてくれたのに。
「しぃなぁ…ぎゅーってして〜」
「いいよ」
ゆなはちっこくて、小動物みたいで可愛い。本当に可愛い。
私にとっては、この世の全ての可愛いの頂点がゆなだ。
「しぃなとのぎゅーが1番だよ〜」
「…そうだね」
やっぱりデート当日となると本当に辛い。
本当に行ってほしくないし、本当は今日一中ずっと私の隣にいて欲しい。
ゆなの初めては全部わたしであって欲しいし、ほかの男なんかに渡したくない。
ゆなと一番関係性が深いのは絶対に私だ。
ゆなの事を一番好きなのは絶対に私だ。
なのに、ゆなは今日、私以外の人とデートに行く。
「じゃ、しぃなもこれ着て」
「…それに関しては本当に意味がわからないんだけど」
何故かゆなは私に、同じ服を買い、今日着させようとしてくる。私はこの後自分の家に帰って枕を涙で濡らすつもりなのに。
「いいから!これ着てくれないと私デートに行けない!」
「そんな訳無いでしょ…」
「ヤダ!着て!絶対似合うから!絶対可愛いから!」
ゆなの駄々こねモードが始まった。
そんなゆなも可愛いと思ってしまうのは惚れた弱みだろうか。
「はいはい。着ればいいんでしょ。家に戻ったらすぐ脱ぐからね。」
「やった〜!やっぱしぃなが着ないと始まらないね!」
そんなの嘘だ。
どうせ私が着なくたって結局ゆなは好きな人とデートに行く。
そんなにしぃなしぃな言うならデートに行かないで欲しい。デートに行かないで一生私の隣にいて欲しい。
「じゃ、そろそろ行こうかな。」
「…見送るよ」
遂にこの時が来てしまった。
本当に行かないで欲しい
こんなに私はゆなの事が好きなのに。なんでゆなは私を見てくれないの?
「じゃ!またね!」
「…」
パタン。という音と共にゆなが見えなくなった。
さっきまで騒がしかったこの家も、今や何の音もしない。
「ゆな…」
最後に、ずっとずっっっっっと言えなかった事。今なら言っても許されるはずだ。
「またね、大好き」
やっと言えた。やっと、長い間言えなかったことがやっと言えた。
ゆな本人には一生伝えることは無いだろうが、もはや私に未練など…無い。
「本当に。本当に大好きだったよ…ゆな」
未練が無いわけがない。
瞳からはボロボロと大量の涙が零れ落ちていく。
「本当は行かないで欲しかった。本当は一生私の隣にいて欲しかった。」
今まで我慢してた分、涙も、言葉も止まらない。
「本当は好きな人が出来てもそれは私であって欲しいし、本当は初めてのキスは私であって欲しい!ゆなの目には私だけを映しててほしい!!!」
「何で私以外の人を好きになるんだよ!!!ゆなのばか!!!!!!!!!!!!!!!!」
全てを出し切った。
もしかしたら聞こえちゃってたかもしれない。
でももうそんな事は関係ない。
もう今すぐにでも自分の家へ帰って寝たい。
私は、玄関の扉を開けた。
「ゥゥ…しぃなぁ…」
「………え、あ…え、な、なんでゆなが…」
扉を開けたそこには、デートに行ったはずのゆながいた。
しかも、ボロボロと、私以上に泣いている。
「しぃな!ゆなも大好きだよ!!!!!」
「え」
§
「まさかデート相手が私だったとは…」
「しぃながいつまで経っても私に告白しようとしてくれないから…」
「だとしてもこれはやりすぎ。一ヶ月も私がどれだけ辛かったか…」
「…ごめん」
今は、カフェで休憩している。一応デート中だ。
「…しぃな、ちょっと近くない?」
「それもこれも全てゆなが悪い」
2人でカフェに行ったら、普通は向かい合って座るだろうが、私は違う。
今日までずっっっっっと我慢してたのだ。もちろんこんな時でもゆなとくっついていたいに決まってる。
周りの目なんて関係ない。
「まぁでも、ゆなもしぃなとぎゅー出来て嬉しいけどね!」
「これからはゆなに束縛ヤンデレ彼女が出来ちゃったからね?」
「望むところだよ!これからもよろしくね、しぃな!」
「これからもよろしく、ゆな。」