魔王サイド会議シーン :魔王の武器庫暴走事件発生!
──魔王城・玉座の間。
荘厳な黒曜石の柱が並ぶ広い空間に、緊張感のある空気が張り詰めていた。
玉座に座るのは、この世界の支配者──魔王ヴェルゼルグ。
長く流れる血のような赤髪、鋭い黄金の瞳が部下たちを睥睨する。
「……で?」
その低く威圧感のある声が響くと、魔族の幹部たちがビクリと震えた。
ひときわ大きな角を持つ、武装隊長のグロスが、恐る恐る報告を始める。
「はっ、はい! 本日、第七武器庫の定期点検に向かった部隊が──」
「第七武器庫? あの、魔王直轄の最重要保管庫だろう?」
「は、はい! その武器庫にて、異常事態が発生したとの報告が……」
「異常事態?」
魔王の声が低くなる。その瞬間、場の空気がさらに冷え込み、部下たちの背筋が粟立つ。
グロスは冷や汗を流しながら、必死に言葉を絞り出した。
「そ、それが……武器庫内部で、武器が……勝手に動き出したと……!」
「……は?」
魔王の目が細くなる。
ざわっ、と周囲の幹部たちがざわめいた。
「勝手に、動いた? それはどういうことだ?」
「はっ……魔剣リリス、聖槍セレナ、鎌ノワール、弓アイリス、盾ソフィア、魔導書ミラ──
全ての封印武具が同時に、意思を持ったかのように暴走を始め、点検部隊を弾き飛ばしたとのことです!」
「……ふざけるな」
魔王の声が、静かに、だが確実に怒気を帯びたものへと変わる。
「封印武具は、厳重な魔力封印を施してあるはずだ。勝手に動き出すなどありえん。
しかも、リリスたちは“あれ”だぞ。もし制御を失えば──」
「……あの時の災厄が、再び……」
副官の一人が小声で呟き、場が凍りつく。
──あの時の災厄。
数百年前、世界を焼き尽くしかけた封印武具たちの暴走事件。
それを食い止めたのが、魔王ヴェルゼルグ自身だった。
それ以降、封印武具たちは魔王城最深部の第七武器庫に厳重に封印され、誰も触れることは許されなかったはずだった。
「……おい、グロス」
魔王が鋭く問いかける。
「その武器たちは、誰の命令で動いた?」
「はっ、確認中ではありますが、現場からの報告では──」
「現場からの報告では?」
「……“武器庫自身が、意思を持って動き出したように見えた”と……」
その言葉が落ちた瞬間、空気が変わった。
重苦しい沈黙。幹部たちの顔が青ざめ、震えが走る。
魔王の黄金の瞳が、妖しく輝く。
「──武器庫が、意思を持った?」
「そ、それは、まさか……」
「転生体……?」
誰かが震える声で呟いた。
だが魔王はゆっくりと立ち上がり、玉座の前に歩み出ると、力強く言い放った。
「……いいだろう。ならば、確かめるまでだ」
その瞳には、獰猛な光が宿っていた。
「“暴走する武器庫”など、私の支配下に置けぬ。
ならば、力づくで従わせるまでだ──我が手でな」
黒き雷鳴が、魔王の手のひらに弾けた。
静かなる戦慄が、魔王城を包み込んだ。