お手入れ要求
──戦いが終わり、静寂が戻った武器庫。
蓮は肩で息をしながら、周囲を見渡していた。
「はあ、はあ……な、なあ……」
目の前には、黒髪の魔剣・リリス、黄金の聖槍・セレナ、漆黒の鎌・ノワール、炎の弓・アイリス、盾のソフィア、魔導書のミラ。
彼女たちはそれぞれ、蓮の方を見つめ、微笑んでいた。
「お前ら、一体何なんだよ!?
俺は何でこんなところにいる!?
そして何でお前たちは全員美少女なんだ!?!?」
蓮の叫びに、リリスが小さく笑い、前に出た。
「ふふ、落ち着いて。説明してあげるわ、マスター」
リリスの言葉で、他の武器たちも順に口を開き始める。
「まず、私たちは“武器”であって、ただのモノじゃないの」
セレナが微笑み、澄んだ声で語る。
「かつての大戦で作られた、強大な力を持つ“半生体兵器”──それが私たち。
でもその力が強すぎて、制御できなくなり、暴走したことがあったの」
「だから、封印されたんだ」
ノワールが冷たい声で続ける。
「この“武器庫”に閉じ込められて、長い間、誰にも使われず、存在を忘れられて……」
「でも私たち、“使われたい”って思っちゃったんだ」
アイリスが少し寂しそうに笑いながら弦をいじる。
「寂しくて、寂しくて……暴走しちゃいそうになった」
「それを防ぐために、“緊急召喚プログラム”が発動したの」
ミラが理知的な瞳で蓮を見つめ、静かに言う。
「異世界から“適合する魂”を呼び寄せて、武器庫の中枢と融合させる緊急措置……
それが、あなた──天城 蓮」
「つまり……俺が、武器庫そのものに転生したってことか……?」
蓮は唖然とし、力が抜けたようにその場に座り込んだ。
「そう、私たちの“マスター”になったのよ」
リリスがそっと膝をつき、蓮の顔を覗き込む。
「だから、もう他の誰にも使わせない。
あなたは……私たちだけの“マスター”なのよ」
──沈黙が落ちた。
蓮が何とか状況を飲み込もうと頭を抱えていると、
突然、リリスがいたずらっぽく笑って顔を近づけた。
「ねえ、マスター……そろそろ“お手入れ”してくれない?」
「え……?」
「私たち、戦ったばかりで傷だらけなんだから……」
セレナがにこっと微笑み、槍の穂先を少しだけ差し出す。
「優しく、丁寧に、ね?」
「私も! 弦がピンと張ってないとダメなんだよー!」
アイリスがぴょんぴょん跳ねながら蓮に迫り、
「私も……磨いてくれる?」とノワールが少し頬を赤らめ、背後からそっと囁く。
ソフィアは無言で盾を差し出し、ミラは「……仕方ないわね。ページ、めくっていいわよ」と膝に魔導書を置いた。
「ま、待て待て待て!!!」
蓮は慌てて後ずさるが、武器美女たちは笑顔でじりじりと距離を詰めてくる。
「マスター……優しくしてね♡」
「丁寧に、ね?」
「……くすぐったいところは、気をつけて」
「えへへ、私、マスターに触られるの、好きだよ!」
「……早く、お願い」
「……変なページ、開かないでよ?」
蓮の心臓がドクンと跳ねる。
「お、俺、どうすればいいんだああああああああ!?」