プロローグ(キービジュアル挿絵有)
──暗闇の中、目を覚ますと、俺は知らない空間にいた。
高い天井、重厚な石造りの壁。目の前に広がるのは、見渡す限りの武器、武器、武器。
剣、槍、弓、斧、杖、盾……それらがまるで宝物のように並べられている。
「どこだ、ここ……?つーか、俺、死んだんじゃ……?」
頭を抱えて周囲を見回した瞬間──
目の前の黒い大剣が、突如として美女の姿に変わった。
「……やっと起きたのね。私を待たせるなんて、大した度胸じゃない?」
黒髪ロングのツンとした美女が、腰に手を当て、俺を見下ろしている。
艶やかな黒髪、スラリとした長身、鋭い眼差しに思わずドキリとする。
だが、目をこすっても、その美女はそこにいた。
「えっ、えっ?誰……?ていうか、何?!」
俺の混乱をよそに、美女は俺に向かって手を差し出してくる。
いや、よく見ると──それは手じゃない。大剣の柄だ。
「リリス。漆黒の魔剣。あなたが私の主なら、今すぐ私を握りなさい」
「握りなさい、って……?」
「早く私を振るって……!私を振るってくれないと、もう我慢できないの……!」
ドキリ、と心臓が跳ね上がる。
何を言ってるんだこの美女……いや、これは剣の擬人化……?
頭がぐるぐるする中、俺は無意識に手を伸ばしていた。
そして──黒い大剣(美女の姿のリリス)を握った瞬間、脳内に直接響いてくる声。
「──あぁっ……やっと、繋がった……♡」
「ちょ、ちょっと待って!これってどういう状況!?」
「ふふっ、あなたが私の主。これからたっぷり、私のことを“使って”くれるんでしょ?」
甘く囁く声、妖艶な微笑み。
俺はまだ、自分が異世界の魔王の武器庫に転生したなんて理解できていなかった──。