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光の在り処は闇の中  作者: 結野セキ


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 ドアノブに掛ける手が、震えている。指先から感じる冷たさからも、喜びを感じる。

 外の世界に一歩踏み出すと、足裏の感触、空気の柔らかさ、音の棘までが、目で見える気がして笑ってしまう。

 一歩一歩、着実に歩いた。右手に持つ白杖がなうからなのか、手持ち無沙汰で不安になってくる。ここでは必要ない、そうわかっていても、手に力が入ってしまう。

 町をゆっくりと進んでいく。高い建物はそれほどなかった。大体が二階建てか三階建て。中はどれも広そうに見える。

 男女くっついている二人が、何屋さんか知らない店から出てきた。ちらっと見えた店の中は、とても混雑している。声の数的に五十人は居そうだ。

 しばらく歩いていると、右上の雲の文字が変わった。ボイスマークを押す。


「やりたいことを見つけに行こう」


 やりたいことか。歩いているだけでも幸せなのだが、ここはゲームの世界。なんでもやってみたい。

 地図が指し示す場所には何があるのだろう。地図と現在地を交互に見ながら進んでいくと、建物が見えてきた。電子看板に文字が書いてある。


「マハセ?」


 周りの建物より、ひと回りもふた回りも大きく見えた。ここに入れば良いのだろうか。

 扉は重厚で、悲鳴のような音をあげながら開いた。空気が外とはがらりと変わる。

 中は案外静かだった。とはいえ、図書室みたいな、声を出してはいけない雰囲気でもない。職員室みたいな雰囲気の場所だった。しばらく歩いてみると、両脇にカウンターがあり、男性女性問わず対面しながら話している。顔を上げて見ると、小さな看板もかかげられている。僕の読める文字はと探していると、登録という文字が目に入った。ゲームを始めて、ユーザー登録したから覚えている。何をしたらいいのか見当もつかないので、ひとまずその看板がかかっている場所に顔を出すことにした。そこには女の人が笑顔で座っていた。


「ようこそ、本日はどのようなご用件でしょうか」


 この人は、プレイヤーなのか? 機械の人なのか……。声はとても自然だ。それに表情もある。僕が返事をしないから、笑顔を保ちつつも小首を傾げていた。


「あ、すみません。えっと……」


 何をしに僕はここに来たかも、自分で知らない。目をぐるぐる回して思案してから、そのまま言った。


「やりたいことを見つけに……」


 ほんのわずかな間があき、正面の女性は話し出す。


「承知いたしました。では手続きを続けさせていただきます」

「お願いします」


 僕は深々と頭を下げる。もし機械の人なら、僕は変なことをしているのではないだろうか。


「この世界、エイデンのことはご存じですか?」

「いいえ」

「では、エイデンの説明から入らせていただきます」


 女性は、モニターのような板を脇から出してきて、一度画面を触った。すると、動画が流れ始めた。僕はそれを入り込むような勢いで見る。音声も音楽も、映像も。映し出されたすべてが美しかった。

 説明もわかりやすかった。このエイデンという世界は、八つの地域にわかれているという。


 中立都市・最初の町

 大ピラミッド・ギーザ

 空中庭園・バビ

 アルメス神殿・エソス

 ゼウス・オリーピア

 マーソロス霊廟・カリア

 ヘリオス巨象・ロドー

 アレクサ大灯台・ファロス


 この八つで形成され、プレイヤーは必ずどこかの地域に所属する必要があるらしい。女性は言う。


「戸籍登録をすることにより、非常に強力なスキルがひとつ与えられます。そのスキルは、通常使用でも十分強いですが、戸籍がある地域の最終ダンジョンをクリアすることにより、覚醒できる材料が揃います。そして覚醒スキル獲得者には、他の地域に攻め入る権利が与えられるようです」


 だまって説明を聞いていた。このゲームの目指すところが見えてきた。ただ、海くんが言うには、エイデンが発売されてそれなりの時間が経過している。もうすでに、このゲームをクリアした人がいるのかもしれない。

 とはいえ、やることは変わらない。それに、僕は戦うことをメインには考えていない。現実世界で見なくてはできないことをここでやりたい。


「ですので、まずは所属したい地域を選択してください。参考までに、世界の分布図も表示します」


 女性がそう言うと、すぐに目の前の景色が変わった。映し出されているのは、世界地図のようだった。ど真ん中にある赤い点が付いているのが、現在地最初の町なのだろう。そこから四方八方に道が伸び、建造物が密集している場所がある。そこがさっき説明された各地域の本拠地か。

 顔を上げると、円グラフがあった。現在のプレイヤー数が掲げられ、赤や緑、青などにわかれた人口分布が書かれている。一番多いのが青色で、空中庭園・バビだった。一番少ないのが、ヘリオス巨象・ロドーか。


「あの、選んだエリアでスキルの差はあるんですか?」

「はい、ございます。それぞれのダンジョンにまつわるスキルが手に入ります」


 さて、どうしたものか。ここで長く考えていても、ゲームは進まないし残された時間も少ない。ひとつひとつのエリアを触ってみる。人口が一番多い、空中庭園・バビの人気の理由がわかった。とってもきれいだった。緑も水も豊富で、美しい。ぜひともここに住んでみたいと思わせる魅力がある。


「でもなぁ……」


 ひとつ気になる、エリアを選択してみる。アレクサ大灯台・ファロス。現実世界の本物は見たこともないからわからないが、なんとなく遠くまで見られそうな気がする。それに、見てももらえる。とても魅力的だ。海があるのも良い。

 一瞬間を置いて、僕はアレクサ大灯台を選択し、登録ボタンを押した。すぐに女性が話し出す。


「アレクサ大灯台ですね。確認しました。では、ここに名前を記入してください」


 空白の箱が出てくる。打ち込みではなく、手書きのようだった。光かがやくペンは書きにくそうで、ちゃんと認識してくれるか不安だ。けれど、こっそりと練習してきた。僕は空白の箇所に、ペンをなぞり動かす。


『ギヴ』


 読み取ってくれと願う。書いた文字が、抜き取られ、僕の視界の片隅に表示された。


「ギヴ、いい名前ですね。ではこちらが、所属証明書です。ファロスに入ったら、ギルド本部に行って証明書を出してください。そこで、スキルが貰えます」


 席から立ち上がる。もう今日のプレイ可能時間はなく、ここで中断だ。目の前には、ファロスまでスキップするか、地図を頼りに歩いていくかの選択画面が出ていた。この選択をゆっくり考えよう。

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