おめでとう
まだ冬の寒さが残るこの時期に、君は産声をあげたね。
危険伴う手術だったけど、元気な産声を聞かせてくれたよね。その日が、昨日のことのように思えるよ。
一歳の誕生日は、病院で過ごしたよね。昨年初め、危険な状態に陥って誕生日を迎えるのも難しいと、医師からの宣告を受けたね。あの時は、パパもママも二人で崩れ落ちてしまったよ。悲しすぎて涙も出ない。何も見えない。そんな状態だったんだよ。でも、頑張っている君の前で、泣き言だけは決して言わないように歯を食いしばったよ。筋弛緩剤を投入されていて動くことができなかった君の、小さな手を握って、朝から晩までずーっとずーっとICUにいたよ。だって、それしかできることがなかったから。
「心臓を私のと取り替えて」
お医者さんに言っても困らせることになるのはわかっていたのに、言わずにはいられなかった。わかっているけど、言ってしまった。だって本心だったから。
君は一人じゃないよって、耳元で何度もママが言ったのを覚えてる?
あれからすっかり元気になり、家で過ごしても問題ないでしょうと太鼓判を押されたときは本当に嬉しかったね。病院はやさしい看護師さんやお医者さんがいるけど、そこには自由はないから。
一歳の誕生日、たくさんの看護師さんやお医者さんからメッセージが沢山書かれたボードと、NICU時代から知っている看護師さんはちょっと贔屓して、いいプレゼント貰ったりと楽しく過ごせたよね。それはそれでいい思い出だけど……ママはお家で過ごしたかったな。
今日、二歳を迎えたね。
お家で過ごせるね。
笑って過ごせるね。
そうだ、大好きな苺も買おうね。もちろん、ケーキも。
ささやかだけど、笑って家族で、しかも家で誕生日を迎えられる幸せ。それを噛み締めて。
君の笑顔で、私たちは何度も救われている。だからいつまでもその笑顔を見せてね。
もう二度と、あんなに危険な状態にならないように、パパとママは細心の注意をはらうから。それが過保護だと言われても。
お誕生日おめでとう
この言葉を君にちゃんと伝えられる、それがとても幸せだよ。
だから、来年も言わせてね。
「おめでとう」の言葉を。