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そして聖地に降り立つ

電車を降りると向かいのホームにはつけ麺屋さんが営業している。

前来た時には牛丼屋だったと思うが、変わったようだ。

つけ麺はどうやら有名店らしく、結構な人数がお店にはいっている。

改札をでると、非常に多くの人達が行きかう場所となっているが、和風なイラストと写真がそこかしらに展開されている。

ここは川峠市。

なぜおれがこの街にいるというと、遡る事2週間くらい前だろうか、清水さんから連絡が来て呼び出しを受けた。


ーーー2週間前ペッ○ー君のいるカフェーーー

いつもながらLI○Eが来て呼び出しを受ける。

場所はペッ○ー君のいるカフェ、すっかり清水さんのお気に入りらしい。

俺も会社から近いし、帰りやすいから丁度良いのだが。

本日はどうやら時間通りに来れるという事で店の前で待ち合わせだ。

清水さんからは先に入っていていいと言われているが、あの女性が多い空間に一人でいるのはややプレッシャーを感じてしまう。

「お待たせしましたー。」

後ろからややけだるそうな声で声が掛かる。

「いえいえ、気にせずに」

そういうと、お店の店員さんに案内されて2名席に着席する。

「ねーねー鈴木さん、今日はこの後時間ある?」

「あーありますよ、どうしました?」

「あのねー私肉が食べたいのー。ここではお茶にして肉食べにいかない?」

「肉?焼肉です?」

「いやー焼肉はちょっと油があるからーそうねー。なんかでも肉が食べたい」

なるほど、焼肉は持たれると、そうすると、これか?

「じゃーステーキは?」

「ステーキ・・・あーいいかもー。赤身肉が食べたいー。」

「じゃーここは何にします?俺はとりあえずカフェオレにしますね。」

「私はーうーん」

ここでいつもながら迷いの時間だ。

その間に会社の連絡などをスマホでチェックすると、5分程度で決まった。

「うん、私はここは紅茶にしとくわ」

「はいはい、じゃーこれ入れておきますね」

そしてペッ○ー君にオーダーを入力する。

「さて、それで本日のご用は?」

「うん、あのね、正式に会社でも承認とれたから、動こうと思うのHSC。ハイスクールクワイヤね。」

「マジですか?通ったんですか?」

「うん、とりあえず会社では承認とれたわ。鈴木さんに作ってもらった資料がばっちり活躍だったよーありがとうー。ホント助かりました。」

正直あの根拠が薄い内容で通ると思っていなかったからそこまで感謝されても・・・と思うけど、役に立てたなら何よりだ。

「それでね、制作会社も決まったからいよいよ脚本も作り始めるのね。」

「あの言っていた制作会社?」

「そうそうー。」

「おーそんな状況ね?」

「うんうん。それでね、前に鈴木さんが話してた、聖地の件あるじゃない?」

そうだ、以前清水さんと一緒に取り組んだケリーは聖地があり、大いに盛り上がった。

以前話した時に、折角なら聖地がある設定がいいと言ったのだ。

「うん、そうねー言った言った。」

「その聖地だけど、鈴木さんが企画書の書いてくれていた川峠でいい?」

「確かに、俺は川峠って書いたね!」

あれはたしか夜中に企画書を作っていて本当に思い付きで記載をしたのだった。

「私、あんまり川峠って言った事無くてね。」

「俺も企画書作った時になんとなくいれただけだからこだわりはないけどー。」

「他にどこか候補ってあります?まだ決まってないからどこでもいいけど。」

一瞬、自分の住んでいる市も考えたが聖地という感じでもない。

特に出身地も同様だ。

一方で川峠は観光地として人気があり、様々な場面で見映えするものもあると思える。

「関東近郊だとやっぱり川峠っていい場所と思うけど、逆に地方の方がよい?」

「うーん・・・結構ロケハンとか大変だからねーできれば近場がいいかも」

「なるほど、じゃー川峠でよくないかな?」

「分かったーじゃー監督と脚本家のえりなさんに話しておくー。近々ロケハンに行こうと思うの、鈴木さんも行く?」

ロケハン、アニメに長く関わっているが制作段階のロケハンは初めてだ。

「あっ行ってみたいかも。」

「行こうよー鈴木さんは原案者なんだから。」

「おー原案者扱いなのねー。でも川峠市に声かけなくてよいかな?」

「あーまだ平気ーあくまで制作に入る前の段階のものだから。ここを登場させるみたいなイメージを作っておこうと思ってね。」

「OK!まーそれで決まったら正式に市の方に打診しようか!」

「いいねー楽しみだわ。」


ーーー再び川峠市ーーー

そうそういった事で川峠市への訪問が決まったのだ。

既に清水さんと監督、脚本家の人は先に街に入って探索を始めているらしい。

集合場所はランドマークに位置付けられている時計台集合だ。

時計台の近くまで行くと、こちらを見つけて手を振る女性。

季節は夏という事もあり、やや露出の高い恰好の清水さん。

そして、1人は全身黒づくめ、身長は俺とさほど変わらない日本時の平均身長位。やや伏し目がちで一瞬視線を感じたのでそちらに目を向けると直ぐに目をそらす感じの男性だ。

そして最後は女性で、やや派手目な格好に高級バック、年齢は清水さんよりも年上な感じだが綺麗な女性だ。

「鈴木さん、お疲れ様です。」

「お疲れ様です。」

「すいませんねーお休みのところ来て頂いて。」

「いえいえ、いいです。お気になさらずに。それよりもこのお二人が?」

「そうですん、監督、クリエさん紹介しますね。今回のHSCの原案者の鈴木さんです」

「原案者ってそんな、だいそれたものじゃないのですが、今回清水さんと一緒に作品に関わらせて頂く形になると思いますが、鈴木です。よろしくお願いいたします。」

「渡です。よろしくお願いします。」

かろうじて聞こえるくらいの声で渡監督からは返答を頂けた。

「鈴木さん!本日も、これからもよろしくお願いしますねー。」

対照的にややテンション高めのクリエさんからのご挨拶だ。

挨拶もそこそこに今日の行先予定地を清水さんが伝える。

「一応川峠を下調べしてきて、まずはこの時計塔のところが一番有名な場所みたいだからここら辺を探索しつつ、その後舞台の予定となっている川峠高校にいきたいんですよね。」

「そうよねー今回舞台は高校だからそのモデル校はゆっくりみたいなー。今日って中は入れるのでしたっけ?」

クリエさんから前のめりで確認が入る。

「あーごめんなさい。正式な話がまだなので、今日は外観の確認って感じです」

「そうよねーOKですー。」

そうよね、今日はあくまで正式確定前だものねっとぶつぶつ言うクリエさん。

「あとはー高校生がたち寄りそうなところはチェックしたいなーって」

「あーわかりますー。やっぱり商店街とかなのかなー。」

「そうでよねー。クリエさん的にほかで気になるところってあります?」

「うーん、そうねーちょっとした買い食いみたいなー?」

「あっいいですねー!そうするとやっぱり商店街のほうかなー。」

そんなやりとりが進みどんどんな行きたい場所は決まっていく。

その間監督は全く喋らず。寡黙過ぎて俺の方が気になってくる。

「渡さんはどうですー?」

ここでやっとこクリエさんから監督に確認がはいる。

「僕はうん、お二人の話していた内容でいいと思います」

「OKー。じゃーとりあえずどこから行きます?」

クリエさん若干テンションが高めでノリノリだ。

「まずは学校見ちゃいませんか?一番遠いのと、重要なところなので」

清水さんはいつも通りではあるようだ。

そう言ってみんなで川峠高校まで移動した。

といっても結構な距離を歩いたのだが、ほぼ清水さんとクリエさんのおしゃべりを聞きながらという感じだ。

「ここみたいですね」

清水さんが指さした方を見るとそこには『県立高校 川峠高等学校』との表札が書かれていた。

凄い特徴のある大きな大きな木、さらに門には三日月のようなオブジェ。

非常に特徴的な入口だ。

「いいですねー特徴あるから絵になるわー。」

そういうクリエさんの言葉に清水さんも監督もうなずいている。

どうやら全会一致で高校は川峠高校で賛成らしい。

さらに、街に戻ると高校生が買い食いするにはちょうど良いサイズのジャガイモのチップがあり

それも清水さんとクリエさんはお気に入りとなった。

「絶対これアニメに登場したら、ファンの人買いそう!」

とは清水さん談だ。

それ以外にも商店街では豆菓子や様々なお店があり、どれも女子2人からするといい雰囲気のものだらけのようだ。

「街並みも綺麗だしー気に入ったかもー。」

「わかります!クリエさん好きそうですよね。私もいいと思います。」

とここでも高評価だ。

「ご飯食べません?」との清水さんの振りから何食べます?となり

折角なら地元らしい、そして高校生が手に届きそうなお店という事で焼きそば屋さんに入る事に。

焼きそばが名物だったとは知らなかったのだが、ちゃんと下調べした清水さん情報なので確かだろう。

入ってみると、テーブル席があり4名かけがちょうど開いていた。

メニューを見ると、普通の焼きそばから、洋風やアレンジらしいメニューまでたくさんあるのだ。

4人とも熟考に熟考を重ねて、各々が別のメニューを頼んだ。

ここでも清水さんとクリエさんは大満足だ。

「すごい美味しい!もう高校生が食べにくるとかも絵になるし。」

「そうよねー清水さんちょっとこっちも食べておいしいから」

「やばっ!美味しい!」

といった二人のやりとりだ。

ここまで学校、商店街、街並み、名物の焼きそばときて、どうやら女性二人の意思は確定に近い雰囲気だ。

「監督どうでしょう?」

清水さんが、もう焼きそばも食べ終えて、俺に対してご自宅のリフォームの話を始める位時間にもて余していた監督に話を振る。

最初はとっつき辛かったが、目の前に人がいると、無言よりはコミュニケーションを取るタイプらしい。

それは俺とも似ている。

「僕はいいと思いますよ。お二人の言うように作品に必要要素はそろっているので。」

「じゃー監督もクリエさんもOKだから。基本的には舞台は川峠という事で進行したいと思いますね」

そう話して、まだまだ焼きそばをゆっくり食べる2人。

まだ物語にいれる場所を見るためにもう少し街を見よう。

そして次回は市にも連絡をいれて本格的なロケハンをしようという話になっている。

こうやってちゃくちゃくと聖地は決まった状況だった。


あれから何度も訪れた川峠。

今思うとこんな風に夢あふれる気持ちで訪れていた時を懐かしく思う。

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