9.メインストリート② 〜シュバルツside〜
「シュバルツ」
「レイフィン」
何でこんな所でばったり会ってしまうんだ。
「お兄様どうかされましたか?」
ルリアージュが心配して僕の後ろからぴょこと僕と前にいる人の事を見る。
「ルーベル公爵令息様?」
「マグワイア辺境伯令嬢!」
ルリアージュは出先でレイフィンと会うとは思っておらずとてもびっくりしているのに対しレイフィンはルリアージュを見た途端顔を綻ばせる。
僕の知ってるレイフィン=ルーベルはこんな顔をする男ではなかった。
父親同士が仲良かったのと、波長も合ったから気が付けば社交場などで一緒に行動を共にし、会話する仲になっていた。
いつも令嬢に囲まれてはいたが、義務的でいつも同じアルカイックスマイルを浮かべ距離を取っている印象だった。
一回だけ聞いてみた事があった『何故義務的なのか?』と、女性が苦手で興味がないとの事だった。僕は苦手ではないけど、妹が一番だったので分かるような気がした。
家族の話になって妹がいる事も話したが可愛いルリアージュに興味持たれるのが嫌だったのだが、幸い興味が無さそうだったのもあり多くを語らず話を切り上げた。
まさか王太子殿下のパーティーで初めて対面した時、このような社交場で全く光が宿っていない瞳が妹を見た途端徐々に目の色が鮮明になっていったのを見て驚いた。
常に義務的なレイフィンがあんな事を言ってしまう事も想定外だった。
今後の付き合いは無いなと思っていたが、辺境伯令嬢に公爵令息が直接謝罪に来るとは思わなかったし、友人になって欲しいという申し出を妹が断ろうとした時の了承を得るまで縋り付く勢いの姿勢をみて危惧していたことが起こってしまった事に気づく。
今まで物や人に執着するタイプではないと思っていたので恋とは人を変えるものだというが本当だったんだなと思った。
だからと言って傷付い妹の顔は忘れないし、何故あんな言葉を放ったのか知らないが、妹を傷付けた事は許せない。
という僕も今まで妹に悲しい思いをさせてきたのでレイフィンには妹に近寄るなとも言えないし、いずれは妹を大切にしてくれる誰かと結ばれる事もわかってはいる。
だから、僕は見極めなくてはならない。
今後僕の可愛い大事な妹を傷付けないで大切にしてくれるのかを‥。
「お二人共こんにちは。シュバルツ達はこのお店へ何用で来たんだ?」
「僕達は父上達にお土産と明後日辺境伯領へ帰るから、留守の者たちにも良いお土産を買う為に来た。
レイフィンも買いに来たのか?」
「僕もここのお店が有名だと聞いてちょっと用があってきたんだ。
お店に入ってわかったんだけど、ここはカフェも併設していて、紅茶やケーキも飲食する事ができるようだよ。
もしよければ、ここで会えたのも縁だし、一緒に入らない?」
こいつさり気なく同席しようとしているな?
距離を詰めようとしすぎはしないか?
流石に優しい妹が許して友人になってくるとしても僕はまだ許してないぞ。
「今日は買いに来ただけだから失礼す‥」
隣を見ると妹は目を輝かせて外から店内を見ていた。
「いや。やっぱり此方で紅茶とケーキを頂こう」
「まあ!本当ですか?私このような素敵なお店で食べて見たかったんです。」
嬉しそうに妹は頬を染めている。
前のレイフィンも穴が開くように見ている。
「ああ。もちろんだ。早く入ろう。」
可愛すぎるなと思いながら吸い込まれるように僕とレイフィンは店内へ入っていったのであった。
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