8.メインストリート①
公爵令息様が訪れた次の日朝、朝食が終わり其々紅茶やコーヒーを飲んでいる時、お父様がカップを置いた。
「明後日には辺境伯領へ帰ろうと思う。シュバルツ、ルリアージュ支度をしておきなさい」
「はい。父上」
「はい。お父様」
自室へ戻りソファに座る。
王都に居るのも残り2日。
半分以上屋敷に籠っていたので、何もしていないのですよね。
折角の機会だから何かしたいのですけれども‥。
悩んでいるとコンコンとノック音が響き「どうぞ」と言うとお兄様だった。
部屋のソファへ促すと表情を変えずにそわそわしている。
「ルリアージュは今日予定ある?」
「今日は何もないです。」
今日と明日は帰り支度の為予定が入っていないんですよね。
支度と言ってもリサが全てやってくれて、私がやる事は何もないのですが‥。
「じゃあ、街に買い物に付き合ってくれないか?万年筆を買いに行くのだが一緒に見て欲しい。」
「ご一緒していいのですか?」
今まで一緒に買い物や何かをする事がなかったので緊張してしまいます。
「もちろん。本当は前からずっと一緒に行きたかったけど、僕が不甲斐無い所為で誘えなかったんだ。来てくれると嬉しい。」
強面の顔に口角が上がっている。
「はい。是非。」
リサやミルファとなら買い物に行った事があるがいつも思うことは家族とも行きたいなと‥誘われたのも嬉しいがお兄様と一緒に行ける事が嬉しくて顔に出てしまう。
にやけてしまうのが恥ずかしいので、手で隠さなきゃ。
自分に精一杯で、前にいるお兄様が悶えていた事には気付かなかった。
馬車に乗りメインストリートまで行くと多くのお店が並んでいる。
私達の買い物にはリサと護衛1名が付いて行動を共にする事になった。
お父様とも一緒に行ければなと思い誘ったが書類仕事が残っていた為またの機会となった。
残りは帰ってきてからやると言って行こうとしてたけれど、ミルファに捕まっていたわ。
「ルリアージュはどこか行きたいところはあるか?」
馬車の中で正面にいるお兄様に聞かれる。
「スイーツのお店に行けたらなとお父様達にお土産も買いたいですし‥。あと、辺境伯領でお留守番の方々にも何か良いものが有れば買いたいなと思います。」
「そうだな。
父上達や留守番達にお土産買わないとな。
ルリアージュのものはないのか?」
「私の欲しいものはリサが買ってきてくれるみたいで‥。
お兄様との時間を大切にしてくださいですって。
リサには申し訳ないけれど、初めてお兄様とお買い物で一緒に過ごす時間が増えて嬉しいんです。」
リサに言われた事を思い出しながらうふふと声が出てしまう。
物思いにふけりあらいけないと思いお兄様を見ると顔を手で覆っている。
「お兄様大丈夫ですか?
ご気分でも悪いのですか?」
馬車だから揺れて気持ち悪いのねと思い心配になる。
「いや。大丈夫だ。
尊いだけだ。発作だと思ってくれ。
案ずることはない。」
誤解を解いてから、何故か発作?が多いような気がするけども大丈夫かしら‥?
深呼吸して整ってるから病気とかでは無さそうですけれども‥。
お兄様の目的地の文具屋に着き、お兄様のエスコートで店内へ入った。
リサには文具屋に行っている間にお願いしておいたのを買いに行ってもらった。
王都というだけあり、店内は品揃えが良く買う予定のなかった私でも目移りしてしまいそうになってしまう。
お兄様は早速お目当ての品を見つけたようで私に合図を送ってきた。
「僕がいつも使っているのはこれなんだけど、値段もお手頃で書きやすくて、握り心地が良いんだ。」
見本があるので、持ってみると手に馴染みやすい太さだった。
今使っているのも使いにくいわけではないが、此方の方が断然握り心地が良かった。
「本当です。とても良さそうですね。」
「ルリアージュもどう?もしよければプレゼントするよ。」
「いえ。買いたいなら自分で買いますよ?」
今にも店主に声をかけて買おうとしているお兄様を止める。
「いや。今まで一度も兄らしい振る舞いをしてこなかった償いとしてこれぐらいは買わせてくれ。」
そういうとスタスタ歩いて店主を呼びに行ってしまった。
ここの文具店ではイニシャルも入れてくれるとのことで、買った商品を並べるとお揃いで買ったとすぐわかる品で顔が綻ぶ。
そんな感じでお兄様の買い物も終え、スイーツのお店を探す。
文具屋から遠くない為歩いて移動する事になったのでリサから渡された地図を頼りに行くのだが初めてのメインストリートで、つい目新しさでキョロキョロとみてしまう。
リサが調べてくれたスイーツのお店『ル・エトワール』に着きお兄様と入ろうとした時、先にガチャリと開き扉を開けた人物とお兄様が立ち止まってしまった。
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