5.騎士団訓練場にて②
夕焼け前、騎士の方々が鍛錬を終え一人また一人鍛練を終え各自部屋へ帰っていく。
お兄様の息を切らせる音のみとなった。
私は何も言う事なくお兄様の鍛練を見る事となった。
夕焼け空になってきた頃、気付けばお兄様も終え立ち上がり、私に気付き目が合う。
「ルリアージュあれからずっとそこに居たのか?」
無言で頷く。
もっと早く私も屋敷へ戻る予定だったのだが一人頑張っているお兄様を置いていけなかった。
見守ることしか出来なかったですが‥。
「そこ隣いいか?
リサルリアージュに大切な話がある。終わるまで下 がっていて欲しい。」
「はい」
リサは下がり、二人だけとなる。
ひと時、沈黙が続いたがお兄様が口を開け語り出す。
「ずっとルリアージュに謝りたかった。母上が亡くなってから側にいなかった事、素直に接することが出来なかった事。
僕は物心ついた頃から父上のようになるのが夢なんだ。」
お兄様が夕日をみつめる。
「母上が亡くなった時僕は3歳だったからよく覚えていないんだけど、一つだけ覚えてる事があるって『お父様のような国を家族を守る領主に‥ルリアージュのことをよろしくね』と言われたんだ。
僕は約束を守りたくて、立派な次期辺境伯当主になる事がルリアージュを守る事だと思った。父上のようになる為に、勉強や剣術の練習で余裕が無くて、気づいた時にはルリアージュとどんな風会話すれば良いのかわからず素直に接せなくなってしまった。
本当は先日のドレスも似合ってて、綺麗だよって言いたかったんだ。ごめん。」
まさかお兄様からも謝られるとは思わず驚く。
お父様もお兄様も3日も部屋から出なかったから責任を感じてらっしゃるのかしら‥。
確かに今まで、お兄様とも必要最低限の会話しか出来なくて寂しかった、否定されて悲しかった。
「お父様もお兄様も素っ気ない態度だったので疎まれてるのかなとも思いましたし、寂しかったです。
でも、今日みたいにお兄様が日々遅くまで努力していたのは知っていました。」
擦り傷打撲が多かった事、部屋の灯りが夜遅くまで付いていた事。
「話すたびに否定されたりしたので、傷付きましたが、許します。日々努力を惜しまないお兄様を敬愛しています。」
「ごめん。もう恥ずかしいから、接し方がわからないからと誤魔化して言葉を偽ってルリアージュを傷付けないと約束する。」
お兄様をずっと頭を下げっぱなしである。
「それにドレスの件については平凡な私には華やかすぎて似合ってないのは事実でしたので、気にしないでくださいね。」
お兄様が驚いた顔してこちらを向き、少し考えた後申し訳ない顔をする。
「‥‥。そうやって自己肯定感を低くさせたのは僕だね。今後はルリアージュは僕の大切な可愛い妹だって行動で示すよ。
もう遅いから屋敷に戻ろう。そろそろ夕食の時間だ。」
お兄様はぎこちなく手を出し、私はそれを握る。
擦り傷だらけで不器用な温かい手。
帰り道眼鏡を着けている事気にならないのか聞いたら、どんな姿でも私の意思を尊重したかったから何も聞かなかったらしい。
お父様に言った事をそのまま伝えたら、返答も同じで、驚きつつ、照れ臭かった。
お兄様とはこの日から私の服装や仕草など過剰に褒め、会話も頻繁にするようになった。
今まで兄妹らしく接してこれなかったので嬉しく感じたのは夕食の時からのおはなし。
読んで頂きありがとうございます。
面白いなと思いましたら評価、ブックマーク、いいね、感想を頂けると嬉しいです。
継続できるように頑張ります。よろしくお願い致します。