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2 お父様と私①

あの後、王都の屋敷に戻り次の日の朝食以外部屋から出ず3日目となる。



ドラルク王国王太子殿下10歳の誕生日パーティーの日、ルーベル公爵令息様に「‥困るから僕を見ないで欲しい」と言われてショックだった。



その後、お父様とお兄様は事を荒立てないように静かに怒り。


公爵様と公爵夫人も私に謝り、子息と一緒に退場してしまった。


お父様もお兄様も公爵家が去った後、

「ルリアージュに何て事を言うんだ!」


「もう仲良くするのは辞めます!!」


「お父様、お兄様私は大丈夫ですわ。王族の方々に挨拶伺いましょう」


いつもは無関心なのに私の為に怒ってくれていた。


私は折角のパーティー何事もなかったようにしなきゃと思い、泣きそうになるのをしまい、微笑んだ。



「いや!ルリアージュは顔色が悪い。おまえはもう今日は帰りなさい。」お父様はお兄様に馬車で待機している従者に言付けを頼みに行かせた。



「ご迷惑はお掛けいたしません。」


初めてのパーティー最後まで頑張りたい!

そんな私の気持ちとは裏腹に、お父様は私の方をチラリと見ると前を向いた。



「‥そんな状態では辺境伯家の評判が落ちる。帰りなさい。」



お兄様から呼ばれた従者がこちらに近付く。


「お嬢様お迎えに上がりました。」


そうか、先程も私の為に怒ってくれたと言うより辺境伯家の評判の為に怒ったのかしら‥。



ちらっと周りを見る。


何処かの家の令嬢が両親と仲良く楽しそうに他家と交流をしている。



もし、お母様が生きていたらあの家族のようにお父様、お兄様とも笑い合う事ができたのでしょうか。


それに私の容姿があのように可愛らしかったら、ドレスを褒めてもらう事や見ないで欲しいとも言われなかったかもしれない‥。


私は馬車に乗り帰路についた。




次の日から食事ではお父様達と顔を合わせるものの気不味く、ショックも大きく部屋から出れなくなってしまった。


元々勉強を教えてくれるメイド長のミルファは部屋へきてくれるし、食事お願いしたら運んで持ってきてくれる。


王都に来たからとお買い物って気分でもないですし、お父様の騎士団を観に行ってもお父様はもちろんお兄様、騎士の皆さんも挨拶はするけど、いつもよそよそしいだけで、迷惑だったのかもしれませんし‥。



そんな事を考えながら自室で、本を読んでいると、ノック音が響き「どうぞ」と促す。


メイド長のミルファが小箱を持っており眉を八の字に下げている。


「お嬢様体調はいかがですか?」


「迷惑をかけてしまってごめんなさい。何処か悪いと言うわけではないの‥。」


「お嬢様皆迷惑だなんて思っておりません。

繊細で可憐なお嬢様を心配しているのです。

今日はこれを持ってきました。どうぞ受け取ってくださいませ。」


ミルファから渡された小箱を受け取り、中を開けてみる。



中から出てきたのは、瓶底のように厚い黒縁眼鏡だった。


受け取っておいて申し訳ないのだけれども‥。



「‥眼鏡?ミルファ、私、目は悪くないわよ?」


「お嬢様が目が悪くないのは存じております。これは魔法の眼鏡でして、元々可愛らしいお嬢様には不要なものですが、これを掛ける事によって今の悩みも解決してくれる眼鏡でございます。もちろん目が良いお嬢様も安心してつけられる目に優しいものとなっておりますので、視力低下する事もございませんのでご安心くださいませ。」


「‥ふふ。」


主人だからって謙遜しなくてもいいのに‥。


あまりのミルファの熱気に笑みが溢れる。


しかし、予想外の物を貰い着けるか悩んでしまう。


「お嬢様つけてみませんか?綺麗な瞳が隠れてお嬢様の魅力が半減してしまいますが、眼鏡かけてもお嬢様が美しすぎるので問題なしです。」


そんな事ないと思うのだけどと思いつつ、ニコニコと有無を言わさない雰囲気で私に勧めてくるのは物心ついた時から一緒にいるメイドのリサ。


8歳離れているので、本当のお姉様のようにいつも私を優しく見守ってくれている。


リサやミルファに後押しされて、気分転換に着けてみる事にしたが、着けたからと言って何か変わるのでしょうか‥。


余計酷くなったんじゃないかしらと悶々としていると、リサが「お嬢様は何を着けても可愛らしいです!」とうっとりとしている。


「そうだ!せっかく眼鏡かけてみたので、御庭や騎士団の演習場を見に行きませんか?

3日間お部屋でお過ごしでしたからお外の空気を吸いに行きましょうよ。」


二人もそうです、そうです!というように促してくる。


確かに王都に来てから外出をしていないので出た方がいいかしら‥。


「‥そうね。お外の空気でも吸いに行こうかしら。」



リサやミルファを連れて庭園に出たらネモフィラ、チューリップ私の好きな花が咲いていた。


いつもの辺境伯領の屋敷の庭園とは植えてある花や景観が違い、ついつい見渡し、花の香りを嗅いでしまう。


私の傷付いた心を少しずつ癒してくれる感じがした。



「‥ルリアージュ」



聞き慣れた声で振り向くとお父様が近くまで来ていた。


「その眼鏡は一体‥。」



いつもつけていない眼鏡を着けていて驚いている。


普段つけてないからびっくりしますよね。


しかも、部屋から篭りきりで気まずいからと食事も共にしないから凄く怒ってるわよね。


お父様と私に気まずい空気が流れ、どうしようと困っていると先に謝ってきたのはお父様だった。


「先日はすまなかった。」



「私もちゃんと出来ず、すみませんでした。」



「「‥‥‥」」



その後が続かず無言になってしまう。


いきなり謝ってきたお父様に困惑しているとミルファぷるぷるしていると思ったら、くわっとお父様をみる。

いつもお父様に従順なミルファだったのでびっくりしてしまった。


「旦那様!私はもう限界です!まさかそれだけじゃございませんよね?!お嬢様が言葉足らずのせいで普段からどんなに心痛めているか!今度ばかりはすまなかっただけじゃ済みません。何に対してそうなのか詳しく伝えてください。もちろん今後お嬢様を傷つけたら許しません。」


ミルファはそう言いながらじりじりとお父様に近づく。



「う、すまない」


お父様もまさかミルファが主人に物申し、こんな怒ると思わなかったのかびっくりしている。



「あの時は家の評判が落ちると言ってルリアージュの気持ちを顧みなかった。日頃からマナーのレッスンを頑張っていたのは知っていたし、やり遂げたい気持ちはわかっていたが、父親として傷付いている娘が心配だった。

評判なんてどうでもいいんだ。ルリアージュが心穏やかに過ごせれば‥。あんな言い方しか出来ずすまない。」



「‥お父様は私の事疎ましいのかと思ってました。」


こんなに喋るお父様は初めてだった。


物心ついた頃から、甘えられる雰囲気がなく、聞いたら返事が返ってくるだけ顔を合わるといつも眉間に皺が寄っていた。

あまり会話らしい会話をした事がないような気がする。


なんとなく私の事嫌いなのかなと思っていた。




「実の子を愛さないはずない!シュバルツもルリアージュも私の大切な宝物なんだ。ルリアージュは私の最愛の妻ローゼリアにそっくりで、可愛くて可愛くてしょうがない。

ローゼリアが亡くなった時私は隣国との戦争の真っ只中だった。」


お父様に肩を掴まれ、思い違いをしていたことに思考が固まる。


そしてお父様がなぜ私に素っ気ない態度だったのかをポツポツと話し出した。


「幸いローゼリアの死期には間に合ったが、最愛の妻を亡くした私は現実を受け入れられず、子供達を一番に考えなきゃいけないのにそのまま戦争へ戻ってしまった。」


ミルファから聞いたわ。


お父様はその戦争で英雄と呼ばれるようになったことを‥。



「無事戦争に勝利し、帰還してからも戦争の後始末を理由に3年王都と辺境伯領の屋敷の往復を続け、やっと辺境伯領の屋敷へ、子供達に再会したときには驚いた‥。逞しく成長したシュバルツ、そして赤子の時以来会うローゼリアとよく似たルリアージュ。

すくすく成長した子供達にやっと会えて嬉しい反面ルリアージュを見るのが最初は辛かったのだが‥。」


真面目な顔をして話していたお父様がいきなり手で顔を覆いだす。


「月日が経つにつれ愛らしくなっていくルリアージュが眩しくて!可愛すぎて!!顔を合わせると蕩けてしまいそうで‥。」


顔汗が凄い。

どちら様感が凄い。


「でも今更どんな態度で接すれば良い分らず、そうこうしている内に先日のように傷つけてしまった。本当にすまなかった。」


お父様が深く頭を下げたと同時に、ミルファが「やっと言えましたね」と言い睨んでいる。



そうだったのね。



ぽろぽろと涙が溢れる。


素っ気ないから疎まれてるのかと思っていた。でも疎まれているにしては嫌な事をされる訳でもないので、いつの日か甘えられ、仲良くできる日を信じ、日々マナーや勉学に励んできた。



「いってくれなきゃわからないです。」



「わたしおとうさまとたくさんおはなししたいんです。かなしくなるたいどとらないでください。」


涙で目がぼやける。


しゃくり上げながらお父様に言い眼鏡を外した、いつもの強面も私がいきなり泣き出したから困り顔である。


泣くつもりはなかったのに涙が止まらない。


「ルリアージュ泣かないでくれ。今まですまなかった。」


お父様がぎごちなく私を抱きしめた。


初めての抱擁は寂しかった心を温めてくれるような気がした。



読んで頂きありがとうございます。

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継続できるように頑張ります。よろしくお願い致します。

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