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13.傷付けてしまった女の子③〜レイフィンside

次の日辺境伯家へ謝罪の為の面会の手紙を出したが、帰ってきた手紙には令嬢に伝えておく旨や面会をお断りする事が記されていた。


次もまた次の日も4日間手紙を届けてはお断りの手紙が返ってくる。




何回も迷惑だろう事はわかっている。


娘を傷付けた男を二度と会わせたくないことも。


僕が謝りたいだけでただの自己満足でしかない事も‥。



つい溜め息が出てしまう。


丁度父上が玄関で手紙を待っていた僕の前を通り掛かる。


「どうした?返事は来たのか?」


「全てお断りですと書かれています。

でも、めげずに書き続けたいと思っております。」


途方に暮れそうだが、そんな弱気な事を思っていてはいけない。


自分に言い聞かせるように父上に伝えると、顎に手を当て、僕の方を見る。


「そうだ拒否されてもめげるんじゃないぞ。

困難な事はこの先いくらでもある。

‥明日は直接伺ってみなさい。」


「辺境伯様から許可も頂いていないのによろしいのですか?」


「私が許可する。

後悔のないよう誠心誠意謝ってきなさい。」


父上はこれから王城で会議があると言って家を出ていった。


明日は直接伺うので、花束の手配をしておき、朝食後に伺おうと思い普段より早くベッドに入った。





当日の朝は緊張してしまい早く目を覚ましたので、全体的に早く支度をし、身だしなみチェックも頻繁におこなってしまった。


辺境伯邸の前に着き、門番に名前と先約無しに来訪した事を謝罪し、辺境伯様に取次いで貰えるようお願いする。


毎日手紙で断られているが来てよかったのだろうか?


少しばかり勢いで来てしまった事に後悔したが、執事が此方へやって来て辺境伯邸の中に入れてくれた。


執事に広間へと案内されと既に辺境伯様とシュバルツはソファに座っており、反対側のソファへ座るよう促された。


元々お二人は強面なのでとても威圧感がある。



でも、今日は威圧されている訳にはいかない。



「本日は手紙でお断りされているにも関わらず前触れもなく訪れた事をお許し下さい。

手紙で書かれている通り、辺境伯令嬢に先日傷付けてしまった事を謝らせて頂きたく参りました。」



「謝罪を受け入れよう。

ルリアージュには伝えておく。

もうそれで直接会わなくても良いだろ?」



値踏みするような鋭い視線を向け僕がどうでるのか窺っている。


此処で曖昧な事を言うともう辺境伯令嬢に会う事は出来ない気がした。




「僕は初めて辺境伯令嬢にお会いした時今まで感じた事のない感情を知りました。

あの時は目を合わせるのが恥ずかしく、戸惑い、僕が至らないばかりに辺境伯令嬢を傷付けてしまいました。

直接お会いしても赦して頂けない事も覚悟しております。

辺境伯令嬢はもう僕の顔を見たくないかもしれませんが、一度だけ直接お会いして謝罪させて頂きたく存じます。」



「言いたい事はわかった。

娘が公爵令息の事を拒否したら、今後ニ度と近付かないように。」



「わかりました。」



辺境伯様に許可を頂けたことにホッとする。




このような話をしているうちにコンコンとノックされ、瓶底眼鏡を掛けた黒髪の令嬢が入ってきた。


シュバルツに促され辺境伯様の隣に座ったので不思議に思ったが、よく見ると瓶底眼鏡を掛けている令嬢は辺境伯令嬢であった。


誰か分かると辺境伯様とシュバルツのじっと監視するような目を流し、頭を下げて謝る。



「先日のパーティーの際に僕がマグワイア辺境伯令嬢を傷付けてしまった事を謝罪しにきました。

申し訳ありませんでした。」




緊張や拒否されたらと思うと頭があげられない。


そんな僕に辺境伯令嬢は年下であるにも関わらず優しく柔らかな声で僕を見ている。

  



「頭を上げてください。

謝罪を受け入れます。

確かに傷付きましたが、平凡な私が美しい公爵令息様とお話しさせていただく事が分不相応でしたので気になさらないでくださいまし。」


苦言を呈しても良い側であるのに僕に気を遣ってくれた。


なんて謙虚で優しい女の子なのだろうか‥。



「分布相応だなんて思わないでください!

平凡な令嬢だと思ったからあのように言ってしまった訳ではないのです。

信じて頂けないかもしれませんが、初めて心を動かされてしまい、恥ずかしながら動転してしまい貴女を傷付けてしまいました。

本当は‥可愛いらしいですねと言いたかったのです。」



自分で恥ずかしい事を告白しながら気付いてしまった。



‥僕は貴女に出会った時から惹かれてしまっていたのか。



仕草や容姿、その優しい心に‥。




気付いてしまったら、このまま帰る訳にはいかなかった。




元々印象最悪の僕は好意を持ってもらえるよう、そしてゆくゆくは結ばれるよう努めなければならない。



瓶底眼鏡を掛けていても可愛らしさは損なわれない。


他の誰かに見つけられる前に貴女の特別になりたい。


そんな事を思うとどうしたら特別になれるかを頭の中をフル回転させ、断られそうになったが、友人という名の特権と以前から父上に提案していた事も辺境伯様に了承して頂いた。


そして時々見せる微笑みが愛らしい。


いつもと違う僕を見てシュバルツは若干引いて忌まわしい感じで見ているがそんな事は気にしていられない。



僕の初恋が掛かっている。




今思うと今日上手くいったのは父上が上手く口添えしてくれたお陰であろう。


父上に帰宅後お礼をいったら、「初恋だもんな‥」と言って揶揄われた。

 

今まで女の子を憂鬱だった気持ちが嘘みたいだった。


マイナスからの出発で、これからどうなるかわからない。


勿論僕に好意を持ってくれたならどんなに幸せだろう。



傷付けてしまった僕だから思う事かもしれないが、やっぱり辺境伯令嬢には幸せでいて欲しい。



例え隣に居るのが僕じゃなかったとしても‥。



そんなふうに相手を思いやれる気持ちを教えてくれたのは貴女のお陰だ‥。



そんな事を思いながら馬車は辺境伯邸を目指し進むのであった。







読んで頂きありがとうございます。

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継続できるように頑張ります。よろしくお願い致します。


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