12.傷付けてしまった女の子②〜レイフィンside
社交場を出席する度に互いを威嚇し合っている上目使いの猫撫で声の令嬢達も皆両親と一緒に参加の為、今日ばかりは大人しく内心ほっとする。
入り口の方からざわざわとしたので向いて見ると、マグワイア辺境伯家が着いた様だった。
シュバルツは辺境伯様によく似ており、将来はガッシリとした男になるのではと思う。
唯一違うと言えば辺境伯様はくすんだ灰色に対し髪の色は黒なので母君に似たのであろうか?というところだけであった。
二人の陰で見えないが後ろに女の子らしき人影がある。
‥‥確か妹君がいるって言っていた気がする。
一回だけ兄弟の話が出たが軽く話して終わった。
シュバルツには悪いけど女の子に興味がないし、辺境伯様もシュバルツも知っているから似た様な強面の妹君な気がして容易に想像出来た。
だから、答え合わせしに行く気持ちでマグワイア辺境伯家へ挨拶しようと両親に言った。
後ろから出てきた君を見るまでは‥‥‥。
辺境伯から紹介された女の子は本当に辺境伯様の子供なのかというぐらい、全てが違った。
透き通る肌に頬や口は薔薇色、艶やかな黒髪、吸い込まれそうなエメラルドの輝く瞳。
他の令嬢たちとは違い、両親と話してる途中でも僕の方を頬を染めてチラチラ見てきたり、甘えてくるような事はなかった。
しぐさが美しく、清らかで柔らかな雰囲気で両親と話している。
今まで会った事がないタイプで気が付けば目で追っていた。
そうしたら今日に限って母上が僕に話を振ってきた。
驚いて言葉を探す。
いつもだったら簡単にお世辞を言うのだが、今日は出てこない。
何か言わなきゃと思い顔を上げたらマグワイア辺境伯令嬢と綺麗なエメラルドの瞳と目が合った途端に全身が熱くなった。
「‥困るから僕を見ないで欲しい」
眩しくて、目を合わせられなくて、気がついたら思ってもいない事を口にしてしまっていた。
全身の血の気が引き、辺境伯様とシュバルツも目を細め、一気にピリつく。
「そうですか。お目汚しをしてしまったようで申し訳なかった。では、失礼する。」
「ルリアージュちゃん、息子が傷付けて申し訳ない。」
父上と母上が謝るが既に辺境伯とシュバルツは令嬢を連れてここから離れており、父上は僕に此方に来なさいと言って人がいない方へ移動する為に歩き出してしまっている。
頭から離れない。
辺境伯令嬢の一瞬だけ見せた傷付いた顔が‥。
人の気配がないところまで連れてこられ父上に怒られる。
「何故、人を傷付けるような事を言った?彼方が騒ぎにしなかったからいいものを‥‥今日は王太子殿下が主役の誕生日パーティーなんだぞ?!」
「すみません。‥‥あんな言葉を言うつもりではありませんでした。」
いつもみたいに軽く言うつもりだった。
直ぐに謝りにいきたい‥僕には後悔しかなかった。
最初は怒っていた父上も僕の顔を見て眉を下げる。
「‥‥帰ってから話そう。
‥‥次は失敗するんじゃないぞ。」
父上と僕はまた会場に戻り、国王や王妃、王太子殿下に祝辞を述べて他の多くの貴族達と会話をする。
いつもより控えめな令嬢達の相手をしながら、
周りに気付かれないように辺境伯家を見つけたが、辺境伯令嬢の姿だけ見当たらず、パーティーが終わるまで罪悪感が頭から離れなかった。
パーティーも終了し、公爵邸に着き、着替え終えて父上の執務室に呼ばれたので、ノックして入室する。
「先程は父上と旧友の辺境伯様の仲を僕のせいで亀裂を作ってしまいすみませんでした。」
「起こってしまった事はしょうがない。
レイフィンはどうしたい?」
「僕は謝りにいきたいですが‥会って頂けるかわかりません‥。」
辺境伯様やシュバルツはもちろんお怒りだろうし、辺境伯令嬢も僕の顔など見たくないだろう。
「会ってくれないかもな。
そんな半分諦めているような人間には‥。
辺境伯令嬢を傷付けたままでいさせる気なのか?
そして、レイフィン、今後行動を起こさないと一切関わることが出来なくなるが諦められるのか?」
父上が真剣な顔で僕に問う。
父上は知っているのだ、僕が彼女を気になっている事を‥。
初めて心を揺さぶられた事を‥。
「彼女を傷付けたままでいさせたくありません!
会ってもらえなかったとしても嫌われたとしても、誠心誠意謝りたいのです。」
何故他の令嬢とは違うのか、心を揺さぶられたのか次会えた時に答えが出る気がする。
「諦められない想いは大切にしなさい。
たとえどんな結果であろうとも‥。」
父上は口角をあげ僕の背中を叩いた。
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