5. 門出
読んで下さる皆々様、本日もありがとうございます。
今週は特別週のため(作者が勝手に制定)水、木、金と本編の投稿をいたします。よろしくお願いいたします。
ハナオカの成人の日がやってきた。王は彼に部屋へ来るように命じた。
「ハナオカ・リュウジン、ここまで厳しい訓練にもよく耐えて、忠実に仕えてきた。そなたに大きな褒美をやりたい」
王はパチンと一回手をたたくと家来が入ってきた。きらびやかな着物や、数えきれないほどの豪華な食事が次々と運ばれてきた。
「全てをそなたに与えよう。私は今日からそなたを王族の一員として迎えたいと思う。そなたが必要とするもの、欲しいものは何でも与えよう」
ハナオカの部屋はさらに立派なものに変わった。壁には有名画家の絵画が飾られ、特注の大きなベッドは金がふんだんに施された一流のものだった。彼が窓辺に置かれた金の椅子に座って、窓の外に広がる湖を眺めていると、王が入ってきた。
「どうだ? 気に入ったか?ハナオカよ」
「ええ、もちろんです。私にはもったいないくらいです」
「実はこの部屋は、私の息子の部屋なのだ。しかし、息子は湖で溺れて死んでしまったのだよ……。十七の若さでな。息子は体が弱くていつもあのベッドの上で日々を過ごしていたのだ。
しかしあの日は不思議と体調が良くて、湖を散歩したいと言ったのだ。まだ外に出るのは早いと言ったが聞かなくてね。今すぐじゃないと駄目なんだと言った。勿論、家臣達が息子のそばにいて見守っていたのだ。私も王妃と共に岸辺に座って見ていたよ。
すると、どうだい! あの子はどんどん湖の中へ入っていくではないか!
私たちは急いで息子の元へ走っていった。もっと近くで控えていた家来達が叫んで湖の中へ走ったが、間に合わなかった。息子は湖の中へ沈んでいった。王妃はショックで何も口にしなくなって衰弱していき一年後には死んでしまったのだよ……。
息子はもう決して戻って来ないと分かっていたが、この部屋はあの時のままに残しておきたかった。この部屋は思い出のつまった部屋なんだ。
……そなたもあの子とちょうど同じ年になったのだね」
王はやつれた顔で部屋をしみじみと眺めた後、ハナオカの頭を優しくなでた。
「そのような心苦しい出来事があったのですね。知りませんでした。王子はさぞお苦しかったでしょう……」
「……それがなぁ、息子は少しも苦しそうではなかった。むしろ、今までに見たことのないような笑顔だったのだよ。非常に奇妙なことだとは思わんか?」
「……ええ」
一人広すぎる部屋に残されたハナオカは辺りが暗くなるまで考え続けていた。
王子はなぜ湖に行きたいと言ったのであろうか? なぜ王子は笑顔で沈んでいったのだろう?
これまで王に自分と親父の衣食住を世話してもらったのだから、気の沈んでいる王のために何かお返しがしたいと思った。ハナオカは日々の訓練になお一層力をいれるようになった。自分に何ができるか毎晩考えた。それからしばらくして王の部屋を訪れた。
「王よ、私は亡くなられたご子息が今も生きておられるのではないかと思うのです。もしかすると、王子は自ら湖の中へ沈んで行かれたのではないでしょうか。なぜわざわざ今すくにおっしゃたのでしょうか。何かの重大な指令を受けたか、あるいは何か秘密があってそうされたのではないかと思うのです」
「何と!? 息子が今も生きているというのか!」
「はっきりとしたことはまだ分かりませんが。しかし王子が苦しい様子を見せず、むしろ笑って沈むというのは普通では考えられません。そこには必ず何か大きな理由があるはずです。……私は王のためご子息を救い出して参りたいと思います」
「そなたは何か知っているのか?手はあるのか?」
「いいえ、王よ」
「……わかった。気持ちは嬉しい。だが、そなたをそばにおいておきたい。息子を失った今、そなたも失うことは耐えられないのだ」
「王よ、もったいないお言葉です。今まで世話を受けたことへの恩を全て返せるとは思いません。ですが私は王のために何もしないではいられないのです。どうかご子息を見つける手助けをさせて下さい。何か手があるわけではございませんが、私は必ずや王子を連れて参ります。これは私の命にかえてお約束いたします」
「それほどの心意気があるのだな……分かった、行きなさい。そうだ、あの石を持っていきなさい。きっと必要なときにそなたを守ってくれるだろう」
王はハナオカが王子を連れて来ることに期待はしていなかった。我が子が沈んでいくのをはっきりとこの目で見たからだ。ただ、若い力の漲る彼をこのまま王宮殿に縛り付けておくことも出来ないと考えていた。
ハナオカは翡翠を首からぶら下げ、5年ぶりに宮殿の大門をくぐった。王が自分を信じてくれたことに感謝した。
今日のヒトコト担当は…、えっ!? ネイヤロ・ニイニャさん!? えっとぉ、ニイニャさんがご登場されるのは、ずいぶん後の話になるんですけど…。(睨まれました…。)
【ネイヤロ・ニイニャさんのヒトコト】
あたいがいつ出たっていいだろ? なんか文句あっか? (しゅみませんっ!)よしっ。あたいたちは、ルールに縛られるのが大キライ! 好きなときに好きなことをするのがあたいたちのやり方さ。自由気ままに生きるのが一番さ! 昼寝したり、ご飯食べたり、爪を研いだり、遊んだりするの、大好き♡猫じゃらしは外せないねぇ。何が言いたいかって言うと…楽しくのんびり生きてみるのもいいよってことさ! なっ!(そうっすね、トホホ…)
(作者記)