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37. 新しい惑星

 食いしん坊なウサギのお陰で、ワープを偶然見つけたのだった。それは食料庫に浮かんでいた。


「ウサギ、お前意外とやるなぁ!」


「でしょ~! ん? "意外" と、ってどういうこと?!」


 ワープを形作っている輪は、小さく細かい緑色の砂粒が高速回転してキラキラしていた。


「ワープって、こんなんだっけ?」と、ウサギがワープに手を触れようと近づいた。


「やめろ、あぶねーぞ。うむ、うむ。ん? なんか違うよーな気がするな」


「だよね~。前は赤色をしていたもん。緑色じゃないよね。でさぁ、このワープを抜けたら、元の世界に戻れるんだよね?」


「んー、たぶんな……。いや、待てよ。ワープの場所が変わったっていうことは、出口も違う所になっている可能性があるだろ? ワープの色が違うってのが怪しいしな。そうなると、必ずしも元の世界には戻れるとは限らないというか……、むしろ無理な可能性、大かもな」


「そうかぁ……。でもさ、確かめてみないことには分からないよね? 絶対ってことはないもん。吾輩ウサギ族の先祖代々の教えに、『何事もやってみろ。そうすればわかる』という名文があるの。だからね、我輩がちょっと見てくるよ」


「やめろよ、ウサギ! あぶねーとこに繋がってたらどうすんだ?」


「んー、それも分からないよねぇ? だから確かめないと」


「わざわざ、やってみなくてもいいこともあるんだよ。こういうことはまず、あの二人の人間に相談してからにしようぜ。その方が安全牌(あんぜんぱい)だ」


「えー、相談? 結局、カラスは恐いだけじゃないのぉ? 意気地なしカラスめ!」


「違うわ! ちくしょーっ! 暗号も解かないといけないしな。急がしーなー! まぁ、いいかっ! じゃあ、早く二人のいるコントロールムームへ戻るぜ!」


 ガチャ!


 その時だ。シャトルの後方から扉が開いた音がしたのは。


「あ! ハナオカ様たちが帰ってきたよ!早く行こう!」


 ウサギは、音がした方へ一目散に駆け出した。


「ウサギ! 走るな! ……ん? なんか変だぞ……! おい、とまれ! ウサギ!」


 ウサギは、通路を勢いよく左へ曲がった。そこには自動開閉扉がある。


「く……黒服!!」


 大勢の黒服たちが、扉からなだれ込んできたところだった。ウサギは手前で異変に気がつき、前足を踏ん張り、同時に後ろ足で強く蹴り、素早く隠れたお陰で、彼らに見つかることはなかった。


「黒服だよ! カラス!」


「分かってるよ! 急に走り出しちゃ、あぶねーだろうが! 今度は絶対に俺のそばを離れるなよ!」


「うん、了解!」


 黒服は真っ直ぐコントロールルームへ、一直線に進んでいる。


「早く二人に知らせないと!!」


 二羽は黒服のあとを急いで追ったが、もう手遅れだった。黒服は磁石の反発力のように、数センチ浮いた状態で素早く移動できるのである。


「キャアァ! なんですかー! これはー?!」


 ユリコの悲鳴が聞こえた後、扉は静かに閉まった。扉の外に二体の黒服が残って見張りを始めた。


 扉に近い角から黒服の様子を見ていたウサギとカラスは、互いに目を合わせた。


「ねぇ、カラス。あいつらは、こっちを見ているのかな? それとも後ろ向きに立ってるのかな?」


「後ろ向きっちゅうことはないだろ。わざわざ、扉の左右に一体ずつ立っているんだから、あれは、こっちの様子を伺っているんだ。だからきっと、下手(へた)に出たら、気づかれて追いかけられるだけだ」


「そうかなぁ? 前も後ろも真っ黒なんだもん、目もないしさ。 あ? カラスは真っ黒だけど、ちゃんと、ちっちゃい目が付いているから分かるよぉ」


「ちっこい目だと?! お前だって、しょっちゅう鼻をヒクヒクさせてるし、ちんちくりんのしっぽじゃねぇか」


「うるさいなぁ。我輩はね、鼻をヒクヒクさせて、周りのようすをうかがっているんだ。人間より十倍以上も鼻がいいんだぞ」


「そんなに大きな声出すなよ。あいつらに聞こえるじゃないか」


 カラスとウサギが再び、扉の方に顔を向けた時だった。目の前には、黒服が立っていたのだ!


「ヒャーーー!!」


「逃げろー!!」


「どこへーー!!」


 二羽は、廊下を一目散に右へ左へとフェイントをかけながら走るが、黒服もすごいスピードで追いかけてくる。


「もう、ダメだー!!」


「カラス! あれに飛び込むよ!」


 さっき食料庫に浮いていたワープが、今度は目の前の通路の床の上に移動していた。今度は黄色く光っている。


「あれに!?」


「そうだよ!」


「黄色になってるけど、いいのぉー?」


「エエい! いっちまえ!」


 穴は二羽を吸い込むようにして、その後は跡形もなく消えた。黒服はそのまま猛スピードで通過していった。


「ヒェー!!」


「ワーー!!」


 真っ黒な空間の中をくねくねと曲がりながら、滑り台のように下へ下へと落ちていくウサギとカラス。四方八方から流れ星がキラキラと流れていく。


「なんか、俺たちが最初に来たときもこんな不思議な感じだったよな」


「うん。真っ暗で恐いけど、星がたくさん流れていて、綺麗だね」


 すると目の前に、特別明るい光が見え出した。その丸い光がどんどん強く、大きくなっていく。


「なんだ、なんだ。飲み込まれるぞ!!」


「違う、出口に出るんだよ!」


 ピヨーンと、ウサギとカラスは丸いワープを飛び出た。二羽が出ると、もうワープは消えていた。



 二羽が降り立った場所――。


 そこは、砂で覆われ凸凹(でこぼこ)とした地面が広がっている何もない所だった。よく見れば、所々に岩があった。それ以外は何もない所。


「ここはどこだ?」


「僕たち、死んだ?」


「んー、かもな」


「じゃあ、もう何も恐くないね!」


「ホントにそうかぁ?」


「ほら、我輩たちの仲間もいるし、安心だね、カラス」


「仲間?」


「ほら、あそこ!」


 ウサギが指差す方には、一際大きな岩から、ウサギみたいな2本の長い耳とちんちくりんのしっぽが見え隠れしている。


「隠れてないで、出ておいでよ! 我輩もウサギだよ!」


 ウサギは岩影に隠れていた何者かに近づいた。


「君は誰だ!! どうやってここへ来た! 黒服の手先か?!」


 飛び出してきたのは、ウサギのような2本の長い耳に、かわいい丸いしっぽのある、不気味な蟹であった。腹は真っ赤で、大きなハサミの手をカチカチいわせている。全体の約90%は蟹だったため、残りのウサギの要素はほんの付け足しくらいだ。可愛らしいにはほど遠い。


「ヒィエー!! なんか全然ちがーう!」


 ウサギは走っていって、カラスの後ろに隠れた。


「だから、言ったろ? 勝手に行動しちゃいけないって。俺についていなくちゃダメだってよ」


「死んだ後も、とは言ってないよぉ」


「そうだよな。悪かった。けど、俺たちはまだ、生きているんだ」


 そう言うと、カラスは不気味な姿をしたエイリアンに向かって言った。


「怖がらせてすまない。俺たちは、黒服の手下じゃない。黒服に追われて、ワープを使ってここへ逃げてきたんだ。俺たちも君たちと同じ被害者なんだ」


「本当にほんとだな?」


 蟹のエイリアンは(いぶか)った。


「ホントにホント!!」


 ウサギが、カラスの後ろに隠れながら必死に言った。


「うむ……。わかりました。


 ここには、まだ黒服は来ていませんが、ほかの星は、かなり奴らにやられているという話しがありますからね。きっとあなたたちは、逃げてきた星の住人なのでしょう。信じます。


 ……我々、ムーン星人は、みな(おび)えた毎日を暮らしているんです。だから、見知らぬ者が来ることにはとても敏感になっているんです。私は星の護衛(ごえい)の仕事についていまして、どんな異変も見逃さないように訓練を受けています。この星の男はみんな、警護の仕事についているんですよ。昔はもっとみんながのびのびと暮らしていましたが、今は駄目ですね。"あの者たち" の噂を聞いてからは。


 とにかく、あなたたちが危険ではないことはわかりました。この星は、あなたたちを受け入れます。どうでしょう、誤解したお()びに、我が家へ来ませんか?」


「いいのか? 俺たちが何者で、どこから来たのか聞かなくていいのか?」


「危険な者ではないなら、私たちは仲間です。()()()()()です」


「ホントに聞かなくていいのぉ? ちなみに、どこから来たのか当ててみてよ」


 ウサギが調子をこいて言った。ムーン星人は余裕の表情をみせた。


「ハッハッハッ。いいでしょう。……あなたたちは、地球から来たのでしょう? 」


「ピンポーン! なんで分かったの?」


「地球人は何度もここへ来るのでね。よく知っているんですよ。


 ほら、この岩のてっぺんに立ってみて下さい。あなたたちの住む地球がよく見えるでしょう」


 二羽は、一際大きな丸い岩の上に飛び乗った。


「わぁーお!!」


 ウサギの言い方だと、そこからの眺めは "天下一品" だった。漆黒の宇宙の闇に浮かんだ青い宝石。水の豊かな生物多様性の星。宇宙のどの星よりも美しく輝く星が浮かんでいたのである。カラスの言い方によると、それは "とんでもねーきらめき" だった。ウサギとカラスは息を飲んだ。呼吸を止めすぎたウサギは危うく、失神するところだった。


「あれが、地球? ……我輩たちがいた場所なの? あんなに……、綺麗な星だったんだね……」


「ああ……、親父やお袋にも、見せたかったなぁ。これを見たらとんでもねぇ~って言うだろうよ」


 二羽は感無量だという顔をした。ふと、カラスは真顔になって言った。


「ということは、ここは、月だ……」


 ムーン星人はにっこり笑った。


「そうですよ。月はね、地球の最友好星で、宇宙の始まりからずっと切っても切れない固い結び付きがあるんです。地球と月は二つで一つのようなもんなんですよ。実は、あなたがた地球人のお仲間が来たら、是非お話ししたいことがありましてね。聞いてもらえますか?」


 ムーン星人は、地球人に話せるのがとても嬉しかったのか、ほくほくした笑みを浮かべながら、遠い昔のことを語り始めた。



お疲れ様です。今回は、月星人(ムーン星人)からの、一言をいただきました!


ムーン星人: 皆様方、こんにちは。私たち月星人は、地球人の皆様を心から尊敬しています。地球人について、争いが多いとか、営利目的で自分達の惑星を汚しているなどと、批判的なことを言うエイリアンはいますが、私は希望をもっています。きっと、彼らは地球をもっと美しい惑星にして、みんなが幸せに暮らせる未来になることを信じています。それまで、どうか、地球を大切に扱ってください。そして、平和になりますように。

 それと、ここで少し私の星、月について少しお伝えします。


○月の基礎データ

・地球からの距離…約38万km

・大きさ…直径 約3476km(地球の1/4)

・重さ…地球の1/81

・月の公転/自転周期…約27.32日

・重力…地球の1/6


 素敵なお言葉、ありがとうございました! 月のデータも送って頂きました!

 ちなみに、月の特徴については、次回、息子さんからお話ししていただく予定です。

よろしくお願いいたします!(作者記)


(作者記)

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