34. 秘密のアンゴウ
「おれ様を呼んだかぁ?」
いまだにカラスは、紙とペンを使って、必死に暗号解読に頭をひねっていた。実は、カラスが目ざとく最後の扉の鍵と、一枚の紙切れを見つけたのだった。
「うん、呼んだ。なー、カラスぅ。本当にこれって、あんごーなの?」
「そうにちげーねー。こういう金庫には、必ずっていいほど、暗号ってやつがあるんだ。人間は忘れっぽい生き物だから、紙に書いて残すのさ」
「案外ドジだね、人間て」
ウサギはひっひっひっと、ひきつり笑いをした。その顔はなんと不細工なことだろう!
「まあな」
「で、どこまで分かったの?」
カラスは紙をウサギに示した。それには、こう書かれていた。
87Ky99Mt.CFE
「へーぇ。ほんと、秘密のアンゴウだねぇ」
「そんな大したものじゃないだろうよ。本当のお宝だったら、暗号の紙を、金庫の下の隙間に落とすってことはないだろ? そう考えると、中身はあまり期待しない方がいいかもしれないな」
「なーんだ。じゃあ、なんで、そんなにむきになってるの?」
「つまらないものだって分かっていても、ついつい頭を使いたくなる性分なのさ。特にこういう暗号を見るとさ」
「変なのぉ~」
「これは、アルファベットと数字の組み合わせなんだ。この金庫は、数字を入力するようになっているから、きっとアルファベットは数字に変換できると思うんだ。よくあるのは、アルファベットの表で見て、それが何番目にあたるか考えれば、数字に変えられるというもの。ただな……この『Mt.C』ってのが分からんのよ……」
「それは、何とかベットじゃないわけ?」
「アルファベットではあるのだが、この鼻くそみたいな丸いポチがよく分からないんだ」
「んーー。なんかゴミでも付いたんじゃないの?」
「んーー。ちげーなぁ。明らかにこいつは、わざとここに置かれているように見える」
「ふぅ~ん。丸ポチねぇ。なんか、豆みたいだね。おいしい煮豆でも食べたいなぁ……。あーあ、お腹空いちゃった。ちょっと、食べものを取りに行ってくるね」
ウサギはとっとこと、食料庫へ向かっていった。しかしすぐに、ハァハァしながら戻ってきた。
「カラスぅ!!」
カラスは解読に真っ最中で、ウサギの声が聞こえないようだ。
「カラス!! ねえ、カラスってばぁ!!」
ウサギは足で床をだんだん蹴った。カラスはビクッと体を震わせた。
「それやめろよー。驚くだろうが!」
「イラつくとつい、出ちゃうんだよ、ウサギの足だん! それよりもスゴいの見つけたよ!」
「何? 死肉?」
「ううん。もっといいの! あの不思議な輪っかだよぉ!!」
「例のワープか?!」
ウサギとカラスはついに、来たときに通ったあの赤い輪を見つけたのだった。それは食料庫に浮いていた。
「マジかっ!!」
「ハナオカ様に早く知らせねーとな!! いや、今はあの人間どもに知らせる方が先か?」
「本当に彼らを信用してもいいのかな? 本当に本当は、悪い奴の仲間ってことは、ないよね?」
「ないさ。ハナオカ様だって、あんなに打ち解けて話をしていたし、現に、奴らに協力しているじゃないか。きっと大丈夫さ」
その時だった。自動開閉扉が開いた音がしたのは。
***
「あれ? みんな帰ってきたんですかね? ずいぶんと早いお帰りだこと」
ユリコが車庫の扉を開くボタンを押そうとしたが、それはすでに開いていた。ススムは固まった。
「ホンダ……。たしか、車が出た後、車庫の扉のロックはかけたんだよな?」
「ええ。絶対にかけました」
「これは大変だ……」
「どういうことですか……?」
「こちらからロックを開けない限り、車庫の扉は、外から開かないようになっている。到着したら無線で連絡が来て、こちらが開けることになっているんだよ……」
ススムの見つめるパソコンには、扉が解除されていることを示す緑の光がついている。
さっき、確かにロック中であることを示す赤のボタンが光っていたはずだ。見間違えただけなのか。
「はっ」とした時、コントロールルームの扉がスゥと開いた。二人が後ろを振り返ると、そこには、団子みたいな黒い塊が何個か立っていた。そして、それらがぞろぞろと部屋の中へ入ってきたのだ。
「キャァ!! なんですかーこれー!!」
「もしかして、ハナオカ君の言っていた "あの者たち" なのか?」
黒服!?
口も目もない小さな黒服たちは、一斉に何かを叫び始めた。ラジオの周波数が合っていないような、キーンという高い音域と、ザーザーという低音の混じった耳障りな音だった。
「ここは占拠した! ×2回」
「我々に従え! 我々に従え!
従わないと大変なことになる! ×2回」
「武力行使も辞さない!
お前たちが我々の言うことを聞かなければ、おぞましい流血行為が行われるだろう!」
口がないのにどこから声を出しているのか不思議に思われる。
「お前たちが、どこの誰だか知らないが、ここは俺たちの船だ!
船長たちみんなが、外で頑張っている間、このシャトルを守るのは、俺たちの責任なんだ!
死んでもここは渡さない! 死守する!!」
ススムはユリコをかばいながら、黒服たちに光線銃を向けた。
「言うことの聞かないやつ ×2回。
武力行使! ×3回」
黒服から気味の悪い黒い触覚が、ススムの顔の近くまで、にょきにょきと伸びてきて、それが三股に分かれ、それぞれがススムの手足を突っつき始めた。先端が鋭い刃物のようになっている。
「やめろ! アイタッ!」
手足をばたばたさせて、触覚を振りほどこうとするが、皮膚に触覚が触れると、物凄い電流が走り、触れたところから稲光がきらめいた。
「ススムさん! 大丈夫ですか!!」
「大丈夫。ホンダは危ないから下がってろ!」
「こんな時にカッコ(格好)つけないでください!」
「これが俺の仕事だからだよ! それにこんな時こそ、カッコつけなくちゃ、逆にだめだろ!」
ススムは光線銃を連射モードにして、端から端まで撃ちまくった。黒服が軽く吹き飛ばされる。ユリコも慌てて腰に装着した銃を手に持ち構えるが、黒服の触覚の方が早く、勢いよく伸びてきて、銃をはたき落とした。
「キャア!!」
ススムの撃つ弾は、確かに黒服に当たっているのだが、数が減らない。それどころか、前よりも増えている気がするのはどういうことだろう……?
黒服は玉に当たった後、ビリビリと点滅をして、しばらく動かなくなるが、時間が経つとまた黒服として復活するらしい。悪いことに、撃たれると一匹の黒服から二匹の黒服が複製されるようだ。数十だった彼らは、今や数千匹にも達しているだろうか。
船内で一番広いコントロールルームには入り切らないほどの黒服の群れが、外にまで押し出されているのだ。それらが、ぐんぐんと押し迫っていく。
「おいっ! 来るな!!」
黒服の触覚が、また再びススムの目の前に迫ってきた。光線銃の鋭い黄色い光が、触覚を撃ち落とすが、その度に何本も新たな触覚が打ち落とされた部分から出てくる。
その時だった。触覚の一つが、ススムの目玉を突き刺したのだ。
「ウワーーー!!!」
ススムは目玉を突かれたまま、宙に浮かされた。
「キャーーァ!! ススムさぁん!!!」
ユリコが悲鳴を上げた時、ススムの目玉が急に真っ赤に光りだした。その時、ユリコは奇妙な感覚を覚えた。
ススムさんの目、とっても綺麗。まるで赤い宝石みたい。ルビーだっけ?
ユリコは自分の悲鳴を聞きながら、頭のほんの片隅でススムの赤い目玉を、美しく煌めく宝石か何かを連想していた。
一方で、体は金縛りにかかったように硬直して動けなかった。口は叫んでいるのに、口から下がコンクリートで固められたみたいに、うんともすんともいかない。
ススムさん……!?
触覚は、ようやくススムを離した。どたっと床に振り落とされたススムは、へたりと床に尻餅をついて動かない。すると、ユリコの体は急に動けるようになった。
突然、ススムがすっくと立ち上がると、床を擦るようにして、ゆっくりとユリコへ近づいてきた。
しかも、細かい血管が浮き出た真っ赤な目玉をぎょろぎょろとさせて。
「秘密のアンゴウを言え……」
ススムは確かにそう言った。
???
ス、ススムさん……!?
お疲れ様です。
本日は、ナメクジさん、ではなかった、ミス・ジュリアンヌス・リーンさんの一言です。現在、 乙女座銀河団プロンスキア星と繋がっています。
こんにちは。こちら、地球です。リーンさん、よろしくお願いします。
ハ~イ! お元気?
私、とっても魅力的なエイリアンよ。美女だらけのプロンスキア星の中でも、3本の指に入るくらいの美女なの。私たちの星に行けば、男のエイリアンはイチコロよ。問題は、私たちを本当にメロメロにさせる紳士はいないということね。メロメロにさせたら、私たちあれになってしまうから。
ナメクジですね!(作者)
それを言・わ・な・い・の♡
ありがとうございました。(作者記)




