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22. 恐竜星

 宇宙飛行士になった今も恐竜大好き少年であることに変わりはなかった。一同はコントロールルームへ戻り、この星について簡単に調べ、船外探索が可能かどうかの事前判断をすることにした。


 タナカはその場で小躍りした。


「信じられない!!


 本当に、僕たちは恐竜星にやって来たんだ!


 わー! なんてこった!」


 タナカが一人で喜びの躍りを踊っている中、他のみんなはススムの回りに集まってパソコンを見つめていた。


 ピコン!


 シャトル内部に取り付けられている、簡易的な大気成分センサーからの情報がメインパソコンへ送信された。


「おっ、きたきた。


 えーと……、酸素量も十分あるし、人体に有害な物質、とくに気体だけど、それも特に高くはないね……。


 まっ、詳しく調べてみないといけないけど、今まで見てきた星の中で一番、地球と酷似していると思うよ。


 ただね……、問題は恐竜がいることだけだよ!」


 船長は顎髭を撫でて言った。


「うむ。大型の生物がいるとなれば船外調査には危険が伴うな。こういう場合は、どうしたらよいか」


 質問しているのか、いないのか不明瞭な言い方をしたせいで、みんなは「?」となった。


「では、()()を使うときが来たということだな」


 腕組みをした船長は、にやりと笑った。


「あれとは?」


「もしかしてあれですか? あれですよねぇ」


 ハジメが腕くみして頷く。


「なに、あれって?」


 ナオはハジメが知ったかぶりをしていることを知っていたし、そういうのが一番嫌いなのだ。


「何? 何? 何なの? あれって」


 ナオに追及されて、頭をかきかき困り始めたハジメはすぐさま降参した。優しい顔をした船長が立ち上がった。


「では、それを見に行こう」


 シャトルの後方にある、部屋の前には、虹彩認証画面がついている。船長はその画面に顔を近づけた。するとドアがすっと開き、目の前に下へと続く急な階段が現れた。


 下に降りると、狭くて真っ白な壁に囲まれた空間があった。そこに、2台の車があった。スパイクがたくさんついた大きなタイヤのついた車が頑丈な鎖で柱に固定されていたのだ。


「ほんと、お楽しみだらけのシャトルですね(ユリコ)」


「ああ、初めて見たよ! こんな地下室に、車が搭載されているシャトルなんて!(ハジメ)」


「知ってたんじゃなかったの?(ナオ)」


 ハジメはへへっと笑った。


「これは "スペースカー" といってね、惑星の地表を見てまわれるように設計されている。


 落石にも耐えられる強化ボディと窓ガラス、どんな悪道でも走れるスパイクタイヤ、丸太100本つないでも走れる馬力もある。それに水陸両用で、水の中では完全防水加工だから潜水もできる。規定の水圧までには耐えられるように作られている。


 まさに我々の任務には、もってこいの作りになっているとは思わないか。これほどぴったりな設備を整えたシャトルのエージェントは、我々、宇宙飛行士のことをよく知っている人物なんじゃないかと思うよ」


「ほんとですね(ユリコ)」


「もう一度確認するが、この恐竜星は地球と酷似していると考えて良いんだよな」


 ススムを振り返った。


「はい、船長。


 恐竜が生きているということ以外、森や山、海があることを見ればそれは確実です」


「オーケー」


 車のエンジンをかけると、ぐぅんぐぅんと力強い音がした。煙も臭いもない。排気ガスが出ないエコな車でもあるのだ。


「よし、問題はなさそうだな」


 船長、ハジメ、ナオが乗り込んだ。ススムが彼らの簡易宇宙服、ヘルメットの装着を確認する。船長が部屋のスイッチを押すと、底の部分がスライドして、草がぼうぼう生えた地面が出てきた。


「危険な星には違いないですから、逐一報告してください」とユリコがハジメに発信器を手渡した。


「あと一人は誰が乗るんですか?」


 ハナオカが聞いた。


「まあ、4人乗りだから一つは空くな。ススムとユリコはシャトルの守り番だから乗らない。我々3人で船外調査を行う」


「俺も一緒に連れていって下さい! 足手まといにはなりません。きっと役立ちますから」


 ハナオカは拝むように言った。


「君は未成年だし、訓練も受けていない。危険だから中にいなさい」


「お願いします! 船長は、俺をさっき仲間だって言ってくれたじゃありませんか!


 それに船長やみんなだって、恐竜の星の訓練など受けていないですよね。みんな初めてなんでしょう? だったら僕も皆さんもそれほど変わりないと思うんです」


 船長は悩んだが、ついにハナオカも連れていくことにした。


「乗りなさい。ただし、勝手に行動しないこと。チームで動いているのだから、常に指示に従って」


「はいっ!!」


 車を載せた台がゆっくりと地面へ降下していく。


「スペースカー、主電源オン!


  出発!」


 ブロロロォン。


 恐竜の楽園と称すべき美しい惑星。


 先ほどからシャトルを取り囲んでいたのは、竜脚形類の『スピノフォロサウルス』だ。ここは彼らの住みかだろう。全長13mほどで、頭は小さい。大きな、とかげのような生き物は長い首を器用に使って、高いところにある草を食べている。形の違った別の恐竜も混ざっている。『ブラキトラケロパン』だ。

 

 少し進んでいくと、広い牧草地みたいな場所に出てきた。『ニジェールサウルス』は胴の長さよりも首の方が短い恐竜で、少し低いところにある植物を食べている。


「彼らはみんな草食恐竜さ」


 タナカは興奮気味に説明した。


「見て! あれ! あたしだって分かるわ。『ステゴザウルス』ね!」


 ナオが指差した方向には、背中に固くて尖った板をたくさんにつけたトカゲが二頭、仲良く草をはんでいる。


 そこへ近づいてきたのは、大きな亀のような生物。甲羅の上にこぶがいっぱいできていて、尻尾には鋭いトゲがついている、いかついフォルム。


 ブフゥッ! グフゥッ!


 その亀みたいな恐竜は、背中のこぶをステゴザウルスに向けて威嚇(いかく)している。同じ何体もの生物が群れをなしている。きっと群れのボスに違いない。ステゴザウルスはあまり気にしていないようだが、しつこい威嚇にうんざりして、ゆっくりとその場を立ち去っていった。


「あの亀みたいなやつは、『サイカニア』と言って、全身コブだらけの恐竜さ。コブは、骨も砕くくらいの強い衝撃を与えることができるんだよ」


 ギャイヤー! ギャイヤー!


「今度は何?!」


 突然激しい泣き声が、森の方から聞こえてきた。ステゴザウルスや『ヒプシロフォドン』が物凄い速さで走ってきた。


「何だ? 逃げろー!!」


 アクセル全開で飛び出した車を足の早いヒプシロフォドンが抜いていく。


「『ティラノサウルス』だー!!」


 その後ろから、大きな鋭い歯、大きな頭、強くて太い後ろ足、前足は小さい、10mほどの大きさの恐竜が迫ってきた。


「違うよ、あれは『タルボサウルス』だよ。ティラノサウルスじゃない!」


「そんなことは今、どうだっていいわ! 早く逃げましょう!」


 車は猛スピードで進む。目の前は崖だ。眼下には海が広がっている。車は急停止した。


「どうしますか?!」


 ハジメは船長を見た。


「飛び込むしかない!!」


 タルボサウルスは目の前の、見たこともない四角い物体に興味があるようだ。後ろ足で地面をガリガリして走り出す準備をしている。


 ついに車は崖から海へ飛び出していった!




本日もお疲れさまでした。本エピソード(次回も)はたくさんの種類の恐竜が出てきて若干カオスになりました。どうぞ次回も、よろしくお願いします。

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