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11. 華岡先生の岩

「船長、スズキ、タナカ、聞こえますか。こちらスペースレンジャー号」


 いつも通り、ススムの落ち着いた声が聞こえる。この声を聞くとなぜだか自然と安心できるのだ。


「こちらカネコ。ああ、聞こえる。


 いやぁ、こんな星は見たことがないよ。ほら、カメラをオンにしたぞ。見えるか?」


 シャトルのコントロールルームには透明で極薄のパネルが空中に浮いており、そこに船外の映像が映し出された。


「はい、見えました」


 ゴツゴツした大きな岩の突起が地表から突き出ている。よく見ると、小さな岩が何重にも積まれてできている。地面は赤っぽい細かい砂で覆われている。


 地球や火星と同じ『岩石惑星』の仲間だろうか?


 ススムは分析脳がうずうずしてくるのを感じた。


「見て下さい、船長! これなんか誰かに似てません?」


 ナオが指し示す所に、大きな岩の塊があった。それも人の形をしている。


「なんだ、これは(ハジメ)」


「華岡先生?(ナオ)」


「絶対違うだろ。きっと偶然こんな形の岩ができたんだよ。相当長い年月をかけてさ。


 鍾乳石(しょうにゅうせき)みたいに(ハジメ)」


「そうかなぁ?


 だってほら、華岡先生の左目の下のほくろだって忠実に再現されてるじゃん。誰かがわざとここに建てたっていう風にしか見えないんだけど(ナオ)」


 確かに彫刻刀で掘られたような石像にも見える。


「つーか、そんな細かいところまで覚えてんの?(ハジメ)」


「あったりまえじゃん。華岡先生だよ(ナオ)」


 ハジメは明らかにいい気持ちではないだろう。石像をずっと見ていた船長は言った。


「ふむ……、二人の意見はともに真実かもしれんな」


「ほらねっ(ナオ)」


「えっ」


 一瞬ポカンとしたハジメをよそに、船長が言う。


「AI生命反応装置はどうだ? 反応出ているか?」


 ハジメが持っていた装置には何の信号も出ていなかった。


「はい、今のところ半径1キロ圏内には生命体は確認できません。」


「オーケー、ではもう少し先に行ってみよう」


 三人は船と(つな)ぐ命綱のロープの金具がしっかり腰に固定されていることを再度確認し、船長の後に一列になって続いた。


 船内ではユリコとススムが三人の様子を見守っていた。ユリコはそれと同時に、ハナオカがどこかへ行ってしまわないように見張ってもいた。その間ウサギとカラスは、ハナオカをどう助け出したらよいものか話し合っていた。


「さっきから、堂々巡りなんだよ(カラス)」


「だからさ、まずカラスが白服たちの頭上から襲いかかって、奴らが慌てふためいている間に、我がハナオカ様を連れて逃げる。といっても、どこへ逃げたらいいのか分からないから、白服の奴らに、


『やいっ! そこの白服め! 出口を教えろ! さもないと、そこにいる凶暴鳥の鉤爪(かぎづめ)がお前たちの喉元を引き裂くぞ!』と脅すんだ。


 そしたら白服たちは、『ヒェッー!!』と顔面蒼白で歯をガタガタ震わせて、『あそこが出口にございます。ウサギ様。お命ばかりはお助け下さいましっ!』っとこういう具合に、」


「なるわけねーだろ!!


 そんなことしたら、みんな捕まって白服たちのエサになっちまうよ。


 へへへ、ウサギの煮物はマズイゾー。俺はごめんこうむる(カラス)」


「そんだったら、カラスの丸焼きだって絶対、ぜぇーったいマズイに決まってるね。だって死肉ばっかし食ってるから(ウサギ)」


「いーや、死肉ばかりじゃないぜ。俺は意外とグルメの美食家なんだ。ありとあらゆるものをまんべんなく食べてる(カラス)」


「おー! やだ!!(ウサギ)」


 ウエーっと吐くような仕草をしているウサギに、カラスが慌てて耳打ちした。


「おい、見ろ! ハナオカ様が何か白服と話しているぞ」


 ユリコが橙色(だいだいいろ)の液体が入ったコップをハナオカに差し出した。


 クンクンクン……。


「オレンジジュースです。もしかして苦手ですか?」


 なんだ、柑橘汁か。毒じゃなかった。


 飲んでみると素晴らしく美味しい。いつも飲んでいる苦くて酸っぱいやつとは、大違いだ。


 目をパチクリさせながらごくごく飲み干したハナオカを見て、ユリコは微笑んだ。


「リュウジン君は宇宙に来たのって何回め?」


「……宇宙? 初めてです」


「えっ? そうなの?


 初めてにしては、あの着陸動作、冷静で落ち着いた判断、操作も正確で……。


 えっ、本当に初めて?」


「はい」


「ふーん……。小さいのにスゴイね。


 って、本当は絶対にダメなんだよ。こういう機械とか、勝手にさわったら危ないから、今度は誰かにヒトコト言ってからだよ?」


「……はい」


 ハナオカはあの時、見たことも触ったこともない機械をどうして動かせたのか全く分からなかった。


 まるで昔に経験したことを体が覚えていたかのように……。


「そろそろ戻るぞ」


 船長からの連絡があった。


「了解!」


 ハッチを開ける。三人はエアロックに次々と入ってきた。


「エアロックの再加圧を開始します。(これで船内と同気圧になる)……酸素窒素交換完了。……酸素吸入完了」


 そして最後に恒例の……、


「お疲れさまでした!


 旅はお楽しみ頂けましたか?


 またご利用下さいね!


 See you again!!」


 またあの忌まわしいフレーズが管内に響く。


 三人は一先ずレストルームで小休憩をしてから、コントロール室へ戻ってきた。


「ただの岩だらけの星って言う感じでしたね(ハジメ)」


「ああ、生物が住めるような環境ではないが、かつていた可能性は否めない(船長)」


「それと、華岡先生みたいな岩を見つけたわ(ナオ)」


「華岡先生?(ユリコ)」


「あたしは絶対、この星の住人が遠い昔に、華岡先生みたいなエイリアン?を崇拝していたんじゃないかしら。きっと人間に似ているエイリアンだったのよ(ナオ)」


「先生とエイリアンを一緒にするなよぉ(ハジメ)」


「ハッハッハッ。華岡はいかにもエイリアンっていう風格だな。スズキ君、君は天才だ」


 船長は陽気に笑った。けれど、その笑いはすぐに薄れていく。


「まっ、この星の謎を解く鍵はこれだな。地表から何百、何千も突き出ていた岩の欠片(かけら)だ。採取した岩の成分を分析してみたら、何か分かるかもしれない。カトウ君、分析を頼むよ」


「はい」


 採取袋を持ったススムが特殊化学分析室へと向かう。ハナオカはススムの後に付いて行こうとした。


「リュウジン君、ここにいなよ。おしゃべりしよ」


 ナオが、ここに座ってと言わんばかりに、ソファをポンポンしている。困り顔のハナオカは、ススムの傍でもじもじしている。


「ん? 君も分析の方が好きか? 実は俺もなんだ。


 ああ、こっちは大丈夫ですよ。俺がちゃあんと見てますから」


 そう言ってススムはハナオカの肩に手を置いてにっこり笑った。




こんばんは、こんにちは、おはようございます。本日のお客様は…、田中一さんですね。ようこそ。

【田中一のヒトコト】

やぁ。田中一と申します。自分はこの世界で仕事するようになるとは、思っても見ませんでした。やっぱりね、華岡先生との出会いがね、自分の人生を変えたっていうか、運命の出会いがあったお蔭で今の自分があるんだと思ってます。どういう出会いがあったかと言うと、…あっ、すいません。ネタバレになっちゃいますよね。(危なっ)あっ、ちなみに『岩石惑星』っていうのは、岩石と金属を主として構成された惑星のことで、水星、金星、地球、火星が含まれているんだ。ススムさんの言うように、この星もその仲間だと思われる。ススムさんは分析のプロだから、何でも一刀両断ですよ。何か、皆さんにヒトコト?

そうですね…「Time is money」かな。(意外と普通だな)

 宇宙はいつも真っ暗だから、時計を見る習慣が特に大事になってくるんだ。一日の時間割が決まっていて、起床、食事、任務、トレーニング、睡眠って全部決まってる。宇宙じゃ体がなまっちゃうから、トレーニングをして筋力や持久力を保っているよ。さて、そろそろ自分は筋トレするので。今日みたいなインタビューって、この後もあるよね? 何回くらいある? えっ、分からない? そう。パワポ準備しとくんで、そのときは自分呼んで下さい。(強めに次回の予約をされました(;^ω^))(作者記)

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