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10. スマホとの出会い/白服たちの人物紹介

【人物紹介ー白服の乗組員たち】

①船長: 金子有蔵カネコユウゾウ(62)

 宇宙飛行士としてのキャリアが長い。国際宇宙局特派員メンバーの一人。冷静さと正確な判断、優しくもチームメイトを良く見ていて的確なアドバイスを与えて導いていく。華岡とは宇宙航空学校在学中から共に励まし合った仲。初めての任務の舞台は月だった。

②副キャプテン: 田中一タナカハジメ(38)

 宇宙飛行士としての経験をだいぶ積んできた、油ののった働き盛り。期待の若手パイロット。三人兄弟の長男(弟と妹)。弟は国立宇宙関連施設で勤めている。リーダー格で明るく皆のお兄ちゃん的存在。高校は野球部キャプテンでまさに文武両道。英語以外学年トップ。強烈な男子高校を出たせいで、未だ女性というものを知らない。彼が宇宙の同列くらいに未知なのは女性だ。そして付け加えておくと、イケメンマッチョ。

鈴木奈央スズキナオ(32)

 いつも明るく元気。サバサバしている性格のため、彼女を苦手に感じる女子もいるようだが、任務の成功率はトップクラス。ちなみに美人でスタイル抜群。華岡先生LOVE♡(ずっと推し)であり、同じくらいに虫が大好き。

本田由梨子ホンダユリコ(28)

 最少年で宇宙飛行士となり、当時はメディアに大きく取り上げられた。成績は超優秀。アメリカの名門大学を19の時に主席で卒業。父は大手企業のアメリカ支部で副社長をしており、母は名門音楽学校の指導者である。華々しい一家に生まれた彼女だが、自身は陰キャである。猫大好き♡

加藤進カトウススム(41)

 通常、彼は船外活動ではなく、採取した試料分析、コンピューター操作、プログラミングなどの頭脳分野担当である。気弱なところがあるが、それは常にクルー全員の安全を一番に考えることができるからである。眼鏡をかけている。

「へぇー、びっくりしちゃったよぉ。華岡先生のお子さんってこんなに小さかったんだね。


 かわいー! あたしも、こんな子ほしーいなー!」


 ナオのふくよかな胸の中でギュッとされて息が詰まるハナオカ。


 くっ、苦しい……。


 それに俺は成人した大人なのだが……。


「ナオさん、その子嫌がってますよ」


「えっー?


 ユリコだってほしいでしょー?


 コ・ド・モ!」


 奥で点検作業をしているハジメにチラチラ目を向けるナオ。


「はぁー?!


 もういい加減にして下さい! 怒りますよ」


 ハジメに密かに恋心を抱くユリコをからかうのが楽しいナオである。(悪よのぅ)


「はいはい。


 そう言えば、リュウジンってどう書くの? おしえて」


 ナオは部屋の引き出しのカギを開けて、中からスマホを取り出した。


「書いてみて」


 メモアプリを開いてハナオカに手渡した。ハナオカは見たこともない不思議なその薄い長方形のものを、あらゆる方向からしげしげと観察した。


「何? ああ、ガラケー派? 意外と使いやすいよね、ガラケーって。


 うんと、ここにこうすると文字が書けるよ、ほい」


 この薄い板に文字を書けるのか。教えてもらったように、長方形の表面を指でなぞってみると、線が浮かび上がった。


 何だこれは! すごいぞ!


 改めて自分の名前を書いてナオに返した。


「???


  何、えっ? まじ読めないんだけど。ユリコ読める? コレ」


「どれっ、見してみ。


 ……なんじゃこりゃ? 目が文字を拒否して判別できないみたいです。リュウジンって言うんですよね、これ。もう一度書いて下さい。リュウは?」


「これ」


ハナオカは文字を指差した。


「ジンは?」


「これ」


「はぁ? ナニゴ?……」


 丸、三角、四角、ミミズがのたうち回ったような奇妙な文字が合わさって並んでいた。二人は顔を見合わせてくすくす笑った。


「安全確認終了した。大丈夫そうだよ。船長からススム、ユリコが待機せよとのこと。俺とナオが出動だ。よろしく」


 無線イヤホンからハジメの声がやたらにキンキン響く。ナオはイヤホンの音量を小へ2つ進ませた。


「はい!」

「了解! 今行く」


「リュウジン君は、私と一緒にここで待っていましょうね」


「大丈夫よ、ススムもいるしね」


 そう言うとナオは部屋を出ていった。船内に残ったススムとユリコは周辺を警戒し、船外クルーの安全を確保する重要な任務がある。


 各クルーが手首に装着したバンドで心拍数、酸素飽和度、放射線暴露量が測定でき、そのデータがリアルタイムでシャトル内のメインパソコンへ送信されるようになっている。


 未知の宇宙ではいつ何時(なんどき)、不測の事態が起こるか分からない。待機するクルーには重要な仕事があるのである。


 コンピューターを操作していたススムが、「船外のAI検出器では異常はないようです。放射線測定値も問題ないし、生物センサーも反応無しでOK」と報告した。


 ハジメはススムが取得したデータをコピーしてiPadに送信し、任務管理簿のファイルに日時、時間船外活動者名、活動内容を入力した。会社の上司に報告するのに必要な資料なのだ。


「よし、行こう」


 いよいよ三人は船外活動用の宇宙服を着用し、重い酸素ボンベを背負う。正しいところに必要なものが揃っているか、きちんと装着されているかを互いにチェックし合うのは重要なことだ。


「OK」

「OK」

「OK」

 

 親指を突き立て、三人はシャトル後方部の連結室へ移動しボタンを押す。


「宇宙服着用完了!」


「窒素酸素交換まであと30秒です。


 ……終了しました。クルーは最終連結部へ移動し、高濃度酸素マスクを装着して下さい。


 ……宇宙服内の減圧操作を実施して下さい」


 三人はヘルメットについている目盛りを既定の数字(約0.3気圧)に合わせる。


「エアロック**減圧開始します」


(これでこの連結室内と宇宙空間は同じ圧力になる)


「完了。ハッチ、ロック解除。HAVE A NICE TRIP(良い旅を)!!」

 

 堅苦しい女のアナウンスが流れた。


「いつも思うんだけど、この最後のフレーズ、なんとかならないかな。僕らがやってるのは遊びじゃなくて仕事だよ?


 シ・ゴ・ト!(ハジメ)」


「まぁそーだけど。お金持ちが宇宙で楽しむために作られたスペースシップ用なんだから、しかたないでしょ。あたしらの会社もフケーキの流れを受けて、お下がりシップしか回ってこないんだからさぁ(ナオ)」


「諸君、さあ仕事に集中してくれたまえ。どんなに優秀な宇宙飛行士でも気を抜くと大きな事故の元になる。一人一人、華岡君の教えをいつも頭にいれておくんだ(船長)」


「ハイっ!(ハジメ&ナオ)」


 丸いハッチを開けると、そこはもう漆黒の大宇宙。どこまでも広がっている空間に数えきれないほどの赤や青白い星々が燦然(さんぜん)と輝いていた。

【ミニ豆知識】

●プリブリーズ(Pre-breath)**

 船外活動の準備の中で最も重要な作業がこれだ。

 宇宙服を着用して作業すると、宇宙服が膨張して作業がやりにくくなるのを防ぐため、宇宙服内の圧力を約0.3気圧に下げる。

 船内の1気圧にいた宇宙飛行士が、宇宙服着用時に約0.3気圧の環境におかれると、体内に溶け込んでいた窒素が微小な気泡となって毛細血管を詰まらせる減圧症になる恐れがある。

 そのため、約0.3気圧への減圧を開始するまでに、体内に溶け込んでいた窒素を体外へ追い出す作業が必要になる。

 クルーの健康を守るためにも、この前準備は非常に大切であるのだ。


●エアロックとは**

 気圧の異なる場所を人や物が移動する時に、隣り合う室内の圧力差を調節する機能をもった出入り口として利用する部屋のこと。


 船外活動するとき、宇宙飛行士はスペースシャトルからエアロックを通って船外へ出ていく。


*JAXAホームページ/よくあるご質問/船外活動の準備と終了までの概要を教えて下さい/より引用。

**JAXA「きぼう 日本実験棟の構成ーエアロック」より引用

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