隠れ里、ケイヴ村
カンッ……カンカンカンッ……バキッ
いつもの様に坑道に潜り結晶や鉱石を集める。
「おぉ! 良いのが取れた。今日はこのくらいにするかなぁ 」
手にした片手用のツルハシを腰の道具入れに刺して手に入れた鉱石を鞄に詰め込む。
鞄の中にはまだ岩の着いた状態の鉱石や透き通った結晶が幾重にも重なり詰まっている。
「さぁ、忙しくなるぞ! 」
体の倍程もある鞄を背負いながら坑道の出口を目指す。
あちこちには掘り尽くされた穴の後や以前に採取した結晶の断面には新たな芽が出来ていた。
「おぉ!これからだね」
陽気に結晶の新芽に声をかける。
無機物への反応は期待していないけれど育つなら声をかけたくなる物だ。
道中見落としはないか新たな変化はないかを一歩一歩踏みしめながら壁面を確認していく。
手にしたランタンの光に照らされて穴の奥から僅かな光の反射の様な輝きを感じる。
「なに?」
鞄を道に放り投げ腰のツルハシに手をかける。
カンッ……カンッ
何やらいつも採れる石とは輝きの違う様な気がする。
「とりあえず持って帰ろう」
鞄に詰めて再び背負い歩き出す。
坑道の入り口を出た途端に眼下に広がる真っ赤な光に包まれた村。
プロミネンス山のマグマ溜まりの空洞を利用した作られた隠れ里。
側にはマグマが絶えず流れ出る川がある。
この村では武具鍛冶屋、装飾鍛冶屋、鉱物材料屋、魔硝石材料屋などの職人が沢山賑わっていた。
現在は……ドワーフ族の若者は出稼ぎに出てしまいこの里でも職人達の高齢化により弟子不足、後継者不足の後を絶たない。
採掘する人手が足らず資源採掘の材料は供給不足、工房では腕のいい職人は高齢化して生産量を見込めない。
ただ生産される逸品に込められた魂は間違いない。
むしろ価値が上がりすぎて駆け出しの冒険者には手が出せない高級品となっていた。
若者達はそんな途方もかけて作り上げる武具を面白く無かった。
王都に出稼ぎに行き近代化された工房でナマクラな量産された武具を作り帰りに酒を浴びる日々を選んでいたのだった。