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8.加害者と被害者と幸せと謝罪と

「「ごめんなさい!!」」


謝り合う2人。2人とも、強い後悔と苦難が見て取れる。

俺にはよく分からない感情だが、きっと胸が苦しくて仕方がないのだろう。2人とも今にも泣きそうな、苦しげな表情を浮かべている。


だが、お互いに謝ったことで、はののんの方は表情が変化した。

驚愕と困惑が見て取れる。なぜ自分が謝罪されたのか全く理解できていないのだろう。

だからこそ、


「い、いや。悪かったのは私だし!謝られることなんて何も無いから!」


こんな言葉が出てくるのだ。これがきっと本心なのだろう。

はののんの今まで調べた限りの性格だと、全く恨みなどはないはずだ。それとは真逆で、ただただ罪悪感があるのみ。

だが、そんなはののんの言葉に、


「ち、違う!わ、私が悪かった所為です!私があの母親に知られてしまったから……」


自分が悪いと否定する。

彼女はこの序で、激しい罪悪感を感じているようだ。自分の所為で他人が心を痛めていれば、それが憎い相手でもない限り自分の心も痛むだろう。……勿論俺は痛まないが。


「そんなことない!私があんなことしなければ!!」


「いやいや!わ、悪いのは私だから!全部私とお母さんが悪いんだから!!」


「いやいや……」


「いやいやいや……」


「いやいやいやいや……」


その後もひたすら自分が悪いとお互いに言い合い続ける。なんとも滑稽だが、長く続くと流石に飽きてきたので、俺は適当に押しの配信を見ながらスナック菓子に手をつけた。


「……それでも私が。って」

「……やっぱり私が、って」


「「何かボリボリ言ってるんだ(です)けど!?」」


2人揃って目を見開き、ドローンに視線を向けてきた。

俺はとりあえず口の中に残ってたものを全て飲み込んでから、


『……なんだ?話は終わったか?』


「いや、終わってないけど!」


「終わってませんけど、音が凄く気になるんです!」


『音が?』


「そうよ!さっきらボリボリバリバリいっててうるさいのよ!」


「私たちがシリアスな雰囲気でゃなしてるのに、イレイサーさん何か食べてますよね!?」


どうやら、俺がスナック菓子を食べていたのが不満だったらしい。お腹がすいたのだろうか?

……という冗談は置いておいて。


『あまりその辺は興味がないからな。途中ならまだ続けても良いぞ?』


「あっ。そう。なら……って、できるかぁ!」

「できるわけ無いじゃないですか!」


2人は真面目に話ができないらしい。

しかし、ここで俺が譲歩して矢R角もなんか負けた気がして嫌だな。なら、


『あぁ。じゃあ、後で存分に俺のいないところで話し合ってくれ。俺は関係改善ができて、その後の話ができればそれで良いから』


「そ、そう」

「は、話って、何ですか?」


俺の話について質問が来る。

待ってましたその質問!2人を合わせてから俺の目的に関することを一切聞いてこなくなったから。というか、俺に一切話しかけてこなかったからいつ聞いてくれるのかとうずうずしてたんだ。

俺がわざわざ出張って関係改善にだけ取り組むと言うことはなく、


『それぞれ金関係、抱えてる思いがあるだろ?』


「「っ!?」」


2人とも肩をはねさせる。そして、見つめ合った。

はののんは驚愕で目を見開き、いじめられていた方は目をそらす。その反応を見たはののんは、


「ウソッ!?お金足りないの!?一体何やったらそんなことになるの!?」


「え?あ、いや、その」


「どうしても足りないって言うなら、2人でバイトしよう!お詫びの1つとして協力させて!」


「え、あ、いや、だから」


「何!?それだけじゃ足りないくらいの額なの!?」


はののんの圧に推されて、詳しい説明がなされない。これは放っておくとひたすらはののんの誤解が加速されそうだ。ここは俺がフォローしてやろう。

俺優しいからな!(時間が掛かりすぎると面倒くさいというのが本当の理由である)

……優しいからな!


『落ち着け竹中羽野』


「何!?落ち着いてられるわけないでしょ!私がいじめた相手がお金が足りないって困ってるのよ!」


『そう思うなら本当に落ち着け。そいつが困ってるのは金が足りないからじゃないぞ』


「……え?」


困惑した表情で、はののんはいじめられた子を見つめる。見つめられたいじめられた子は、気まずそうに視線を外した。

そうなのだ。金が足りないのでは泣く、


『逆に、金があって困ってるんだろう』


「え?何それ、そんなわけが」


はののんは俺の言葉を否定しようとする。

が、


「じ、実は、そうなんです」


「……え?」


本人が俺の言葉を肯定し、更に困惑を深めることとなる。

金があっても、通常は困ることがないだろう。どちらかと言えば嬉しいくらいあのはずだ。

それなのに困っているのは、


「お金を、私のお母さんが持っちゃってて……あんな害しかない人間がお金を持つなんて、あって良いわけがないんです」


「なっ!?じ、自分の母親にそんなことを!」


「良いんです!あんな親!この世に必要ありません!」


「っ!?」


いじめられた子は言い切った。

はののんは驚きで固まっている。


『……くくくっ。面白いな』

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