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3.復讐と幸せと

簡単な仕事だった。

月島玲の父親をおびき寄せ、周辺のカメラをハッキングして映像をすり替え、月島玲にナイフを渡す。ただ

それだけの作業だ。

あまりにも簡単な仕事過ぎて、月島一恵とか言う月島玲の母親との繋がりまで作ってしまった。母娘揃って美人だぞ。借金もさせられたし、良い感じだな。


「レイレイ。おっはぁ~」


「む?おはよう、レイレイとは私のことか?」


月島玲は父親を殺害した次の日も学校に来た。何食わぬ顔で、まるで何一つとして門田はなかったと言わんばかりの顔で登校してきたのだ。

だが、俺から見れば、


「レイレイ、何か良いことあった?いつも以上にかわいい笑顔してるけど」


「む?そ、そうか?笑顔だったか?そんなに分かりやすいつもりはなかったのだが……」


指摘されても、否定することはなかった。俺のイメージだと指摘されたら慌てるタイプだと思ってたから、この反応は予想外だ。

ただ予想外とは言えそれが悪いというわけではないから、何も問題無いがな。なんて思っていたのだが、


「なぁ。獅童」


「ん?どした?」


「イレイサーって知ってるか?」


まさかの質問だった。

こんな所で俺のこと尋ねてくるとか、予想外も良いところだろう。顔を見る限り俺がイレイサーだと分かっているとか、かまをかけてきているとかではないと思うから、


「ん?イレイサー?イレイサーって、消しゴムだろ?それぐらいなら俺も分かるぞ」


まるで俺が、イレイサーの意味も知らないと思われているなんて心外だ、とでも言っているかのような言葉を使っておく。何も知らない演技をするには最適だろう。

これを聞けば月島玲は苦笑を浮かべて、


「いや。馬鹿にしたわけではないよ。まあ、あの人を知らないならそれで良いさ」


そう言って肩をすくめた。この感じだと、随分と熱心に探しているようだ。

なら、俺はできるだけ茶化せば良いだろう。


「えぇ~。イレイサーって人?じゃあ、俺がイレイサーかもしれないぞぉ」


「いや、今思いっきり、じゃあ、とか行ってたよね?なぜそれで本人だと認められると思ったのか甚だ疑問だよ」


呆れたような、そして、どこか楽しげ笑みを月島玲は浮かべた。表情がかなり柔らかくなっているように感じる。

この表情を見れば、人助けをして良かったという気持ちにならなくもない。


……で、学校での変化はこれくらいだ。俺も仲の良いグループとだべったり表情が柔らかくなった月島玲と雑談をしたりして学校では過ごしている。

だが、正直これに関してはあまり興味がない。実際俺にとっては、俺の高校デビューにふさわしい人材がいることが大切だからな。月島玲の幸せになっちゃいけない発言だけ取り消すことができるのならそれで良い。


ただ、他の所に変化があったのだ。学校で。



「……そろそろか」


俺は時計を見て、今の時刻を確認する。

俺のいる場所は小さなオフィス、4,5人が作業できる程度ではあるが、決して広いというわけではない。まあ、1人で作業するなら十分な空間だ。

勿論それは、


「……こんにちは」


1人増えたとしても変わらない。

オフィスにやってきた、三十路を過ぎた程度のまだまだ若さ溢れる、所謂綺麗なお姉さんが俺の前に座る。


「あぁ。来たか。とりあえずそこに仕事は入れてあるから、終わらせられるところまで終わらせてくれ。報酬はいつも通りだ」


「分かりました」


仕事の連絡をした後は、暫く無言になる。

お互いPCをカタカタといじり、それぞれの仕事をしていく。


分かっているかもしれないが、今目の前にいるその綺麗なお姉さんは、月島玲の母親である月島一恵だ。仕事がないと言うことで、俺が自分の手伝いをさせている。

手伝いと行っても、ハッキングとかではなくAIの育成だがな。中卒のため学がないと行っているが、そこまで頭が悪いわけではない。悪くない人材だと俺は考えている。


キーボードを叩く音が数分間響いていたが、少し集中力も落ちてきたようで、


「あの、借金の額をもう少し増やせませんか?」


そんなことを言ってきた。


「200万までは貸す。が、それ以上を貸す場合には条件があると伝えたはずだが?」


俺は一旦作業を止めてデスクの向かうに目線を向ける。月島一恵は、俺と視線がぶつかると少し哀愁の漂う表情で目線を背けた。

俺が金を貸す場合、利子が増えるを止めたい場合。そして、返済を待つ場合。この3つの場合は、特定の条件を満たせば許可をするとしている、

月島一恵としてはその条件が嫌なのだろう。

ただ、嫌なら借りる額を増やさず、返済を毎回しっかりと行なえば良いだけの話だ。


「……はぁ。仕方ないです。色々と払わなければいけないお金がありますし」


「そうか。……そちらがそれでいいなら、時間は作るが?」


俺はその条件を満たすための時間をいつにするかと考えたのだが、なぜか月島一恵は立ち上がった。

なんとなくその後のイメージができたので俺は頬を引きつらせるが、向こうはそんなことは気にせず、


「今から、やりますね」


椅子に座ったままの俺に、月島一恵が覆い被さる。

……その後、利子を増やしたくないというのと返済を遅らせたいという名目の下、俺は何度か月島一恵に襲われた。

襲ってくるときのあのギラギラとした笑顔に、俺は苦笑せざるを得なかった。



※※※



「お母さん、最近元気だな」


「え?あ、そ、そそそ、そう?」


「何だ、その慌て様?何かあったのか?……あっ。もしかして、新しい職場で気になる人ができたとか」


「ち、ちちちち、違うから!こんな年齢になって若い子が良いなって思ったりしてないから!!!」


「ふ~ん。へぇ~、若い人なのか……お義父さんができるも近いかな」


「ほ、本当に違うからぁぁ~~~!!!」

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