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エピローグ 長女と幸せと正義と

「治樹ぃ。今日買い物行かね?」


「ん?楓が俺を誘うとは珍しいな」


ある日のこと。その日は月島(つきしま)一恵(ひとえ)が娘の月島(つきしま)(れい)と共に旅行に行くとかでいつもの仕事が休み。

楓が外出しないと魔法の練習ができないから、さっさと楓に外に行ってくれないかと思っていたときに、なぜか外出に誘われた。

買い物に行くらしいのだが、楓が俺を、というか人を誘うのは珍しい。


「いや、なんとなくもうちょっと服に関するセンスを磨きたいって思って」


「そうなのか?それなら家でそういう人の動画でも見ておけば良いと思うが……まあ折角の機会だ。行かせてもらおう」


楓の買い物に関しては正直あまり興味はない。

だが、その俺を買い物に誘うという心境の変化に関しては気になった。どういう気持ちで俺を誘ったのか。そして、口では何かとってつけたような理由を言っているが、本当の理由は何なのか。

最近ゼロツーに楓と関わらせてきた身としては、何か危ない思考になっているのではないかと心配する気持ちもある。

だからこそ、メンタルチェックも含めてついていくわけだ。症状なども観察しつつ行きたい。


で、楓と共にちょっとした大きなデパートへとやってきた結果。


「見ろ!これかわいいだろ!」


「……そうだな」


「でもやっぱりこっちの方が俺には似合う気がするんだけどどうだ?」


「……そうだな」


「なぁ!治樹は俺にどれが似合うと思う!」


「……さぁ?」


「さぁ?って何だよ、さ?って。良いから早く選べ!まだまだ見たいものが沢山あるんだから!」


テンションの高い楓に振り回されていた。ついてきたことを若干どころではなく後悔している。

幾つか服を選んでは俺に見せて良い物を選ばせ、俺が選んではまた自分で幾つか選び、俺に見せてくる。そして、俺が選んだとしても100%買われると言うこともなく。

お前が気に入ったのを選んでるだけなのでは?と言いたいところだが、ぐっと我慢して口を塞ぐ。この楓の行動が何を意味しているのか分からない状態で、精神的にマイナスになる事を言うべきではない。


「……あぁ~、楽しかった」


数時間買い物をして。一旦休憩で昼食を摂っている。

どこにでもあるファストフード店でハンバーガーを楓は食べ、俺はこの店のは味がきつすぎるからフライドポテトだけ食べて午後ももたせようとしている。正直これだけだと足りなくなるだろうから、途中でこれもまた全国展開しているチェーン店でアイスでも買おうかな、なんて思っていると、


「……なぁ。治樹」


真剣な表情と声色で、楓が俺に話しかけてくる。

何やら真面目な雰囲気を感じ取った俺は楓の目を見て、そして、不自然でない程度に緊張感を消して、


「うん?どうした?」


話しかけられて、自然に返すように。できるだけ不自然にならないことを意識して返事をする。

そして、無理に急かすような素振りは見せずに楓の言葉を待つ。

楓は少し迷ったような動きを見せた後、覚悟を決めたようにして、


「……正義って。何だと思う?」


そんな質問をしてきた。

それと同時に俺は理解する。楓が何に悩んでいるのか。そして、何を求めているのかを。


「正義…………正義か。正義って、曖昧な言葉だよな」


「曖昧?」


楓が目を細める。

俺はここで選択を間違えてはならないから、言葉選びは慎重にしつつ、


「正義って、場所によっても時代によってもコロコロ変わるだろ?」


「そう……かもしれないな」


「だろ?人殺しはいけないなんて言うのに、戦場では敵を殺すことは正義だし。しかも、多数のためなら少数を犠牲にすることは構わないなんて考え方もあるし」


「……ああ。あるな」


「だから、正義って言うのは曖昧だな。……まあ、言ってしまえば俺の正義と楓の正義も違うだろ?」


「……そう、なのかもな」


今のところマズいことは言っていない気がする。

おそらく楓が恐れているのは、自分が怪物を生み出す存在を殺してしまったいることが悪いことだとされることだろう。

正義について尋ねてきたんだから、その行動が正義かどうかが気になったんだと思う。


楓は異世界で沢山の命を奪ってきたようだし、その正しさについては色々と思うところがあるんだろうな。自分が幸せになる資格がないと考えていたのもその影響だったし。


となると、俺がすべきなのは楓が命を奪ってきたことを肯定、そこまでいかずとも批判しないこと。そうすることで楓は自身が間違っていないと思うか、自身のことを許すかできるはずだ。

さっきまでの会話で正義は人によって違うと言うことは伝えられたから、楓の中の正義かどうかと言うことの重要性は下がったはず。となると、


「結局大事なのって、正義よりも人の役に立つかどうかじゃないか?……まあ、少数が多数のために犠牲になるとかまでいくといき過ぎだとは思うが」


「役に立つかどうか、か……」


「ああ。……まあ、正義って何かって言う質問からはだいぶそれたな。すまん」


「いや。構わねぇよ。……何か、変なこと聞いて悪いな」


楓は謝っている。

だが、俺は気にしないどころか、喜ぶぐらいだ。

楓の笑顔が、朝に見たとき以上に輝いているのだから。


とりあえずこれで楓は大丈夫だろう。

まずは1人救えた……と言うことで一旦良いだろうか?

この調子で、他の奴らも救っていかないとな。

ここまでで完結です。お付き合い頂きありがとうございました。


現在

宇宙最強悪役令嬢艦隊!……の副官 ~シナリオブレイク?主砲で星もブレイクできますけど何か?~

というものを書いていますので、ご興味があれば是非こちらもお願いします!


それでは、またどこかで

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