プロローグ2
夕食後に自室に戻って、俺はPCをいじる。まずはネムのために個人情報をあさってるやつの排除だな。この排除は、インターネット上のものも有れば物理的なものも有る。物理的な排除は元々専門外だったのだが、AIを作ったらそっち方面まで得意になってしまった。ドローンと組み合わせて狙撃ができるAIとか……普通に軍用グレードなんだよな。
AIの万能性を実感しているところだ。
真っ黒なことを考えながら排除と情報収集を行なう。そうしていると、
ゴンゴンゴンッ!
「治樹!次お前が風呂入れって」
ノックと共に用件が伝えられる。ノックして俺が出たところで用件は伝えて欲しいのだが、まあこの姉の性格は分かっているので文句を言うことはない。
「分かった。すぐに済ませる」
「おぉ~。まだ後から入るやつもいるから急げよ」
扉越しにそんな話をして、俺はPCの電源を落とす。それから軽く支度をして、風呂に入った。
本当は長風呂な人間なんだが、後から入るやつがいると言われるとそういうわけにもいかない。俺はすぐに風呂を終わらせて自室に戻って作業をした。
普段やってる作業は、真っ黒なことに使うAIの作成&育成と、金持ちから金をふんだくる作業。ちゃちゃっとハッキングして、口座から金を奪っていくんだ。狙うのは、親から莫大な財産を受け取って上の方の立場にいるのに他人に金を使わせて自分は一切散在しようとしないボンボンだ。こういうのがいる所為で金の回りが悪くなるんだ(自分の懐に大量に入ってる数年前から使っていない金は見なかったことに)。
「……そろそろ寝るか」
一通り作業を終わらせて、俺はPCの電源を切る。
そしてそのまま、ベッドへと向かった(寝る1時間前からPCやスマホをいじるのは辞めようね!睡眠の質が下がっちゃうよ!)
……こんな感じが、俺の1日だ。
で、俺の言いたいことは分かるよな?
それはずばり、
「あの面倒くさい姉妹と保護者をどうにかしないと……」
私かを言い出したあいつらをどうにかしなければならない。
激しく面倒事の予感がするが、そこでだだをこねてはいられない。なんと言ったって、あいつら俺の家族だからな。
ということで、今度は俺の家族のことについて語っていこうか。
俺と同居している人間は5人。姉妹が4人と保護者が1人だが、残念(?)なことに誰1人として血は繋がっていない。
所謂複雑な家庭環境というやつなのだが、しっかり解説しよう。
まず、俺の母親なのだが5回ほど結婚している。
しかも離婚などはなく、4人の旦那とは死別する形だった。
お陰で保険金やらが入ってきて小金持ちに。今はその金を使って今の夫共に海外旅行をしているらしい。自由な人達だ。
で、そんな母親の最初の旦那との間にできた子供にして、唯一の腹を痛めて産んだ子供が…………そう俺である!
そして、俺以外の姉妹たちは、母親の結婚相手の連れ子だったりする。それぞれ結婚相手は1人ずつ子供を連れてきて、2人目の旦那、俺にとっては2人目の父親と結婚したときに入ってきたのが1番上の姉だ。
長女の名前は獅童楓。今は大学生。口調が荒く、一人称は「俺」だ。
風呂入れって行ってきたのがこいつだな。
で、その次に入ってきた(3人目の父親と共に)のが、獅童正里。落ち着いた雰囲気を出しているが、いつも何かに怯えた様子の次女だ。一人称は「僕」だな。現在高校生で、俺より1つ上の学年。
つまり、俺より1歳年上って訳だ。
それから入ってきたのが、家に帰ってたときに遊んでた片割れ。中学生で、初めての俺より年下の兄弟である獅童倉江。中学生だ。一人称は「アタシ」。
かなり生意気なところがあり、俺は心の中で「メスガキ」と呼んでいる、割と負けず嫌いで沸点が低い。
そんな3人の後、最後に入ってきて、今の父親の実の娘であるのが獅童テレサ。小学生。一人称は「自分」。
こいつがある意味1番のくせ者で、小学生でありながら世界でも類を見ないほどの天才だ。いくつも新しい理論なんて言うものを発表して世界的に有名な賞なんかも結構とっている。学校に行ったりメスガキと遊んでいたりするのを見ると、短い時間で結果を出すこいつは本当に優秀なんだなと実感する。
「……で、残るは1人」
俺はぽつりと呟く。
ここまで姉妹を紹介してきた。だが、まだ商会していない家族がいるな。
そう。保護者だ。
保護者と俺が呼ぶのは浅名千代。俺の母親の友人で、俺たちの親から金をもらって俺たちの世話をしている。
……まあ、世話といっても仕事で忙しくて、やることなんてテレサの授業参観に出たりするくらいだが。この人、確か自分で会社運営してたんだよな。
さて。ここまで紹介してきたが、彼女たちの「わたしか」について何か分かることはあっただろうか。
色々想像はできるだろう。
もしかしたら父親と死別したことなどが原因だと考える者もいるかもしれないが、実際は……




