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12.推しと幸せとAIと

「間に合った、か」


ひとまずは間に合った。

推しである「ネム」の自殺を止めることができた。解決までは行かないだろうが、時間稼ぎができるだけでも充分。後は俺がこの作られた時間の間でいかにネムの心を変化させるかどうかが大事だ。タイミングと、伝える内容。この2つを見極めることが大切だな。


俺はスマホで色々と調べる。家にある作業用のPCとも接続させて、他にも色々な機材をフル活用だ。

そうして俺が調べ物をしている間に、


『なんでこんなことしようとしたわけ?』


『……言いたくない』


『はぁ?じゃあ、なんで自殺場所を学校にしたわけ?」


『……あぁ。そういえば他の場所でもできたね』


『は、羽野ちゃん。ちょっと落ち着いて。……ね、ねぇ。夢野さん。何か嫌なことがあったんですか?』


『……うん』


会話が行なわれている。

竹中羽野が中心となって質問をしているな。所謂飴と鞭の尋問みたいなのが行なわれているぞ。

竹中羽野が高圧的に、そして、月島玲と飛應甲子がフォローをしつつ優しく問いかける。警察でよく行なわれるという有名な尋問の方法だが、一体どこで習得したのだろうか。……考えてやったと言うより、素でやってる可能性の方が高いかもな。


尋問(?)をしてくれてるお陰で、俺も情報収集ができる。ネット空間に広まって情報はAIとかPCとかに任せるが、こういう会話の情報もかなり大事だ。

そして、この会話の情報を更に引き出すために動くのが、


『身体的ナ不調ハアリマセンカ?』


少し高めの男性的な機械音声。


『だ、大丈夫」


それにまだ慣れていないようで困惑しつつも、俺の友人であり推しでもあるネムは返答をする。

機械音声の主は、AI。名前は高性能多機能AI01(ゼロワン)。喋る内容も声の種類も大抵自動で調整して色々とやってくれる優れものだ。これは俺と月島(つきしま)一恵(ひとえ)が協力して作ったものだな。土台となる部分は俺が作っていたので、2人でデータを入れたりバグを修正したりと作業をしていたのだが、やっと作業が終了したのだ。

今回がお披露目であり、試運転でもある。


『イレイサーさん。こんなものまで……』

『何者なんだ、あいつ』

『分かんないけど、絶対ヤバいやつでしょ。本当は関わっちゃいけないやつだと思う』


こそこそと、しかし、俺にはハッキリと聞こえる会話を3人は行なっていた。他の2人はともかく、はののんは割とひどい事を言っているな。否定はできないが、そこまで関わってはいけない人間ではないと思うんだが。


『何カ言イマシタカ?』


『『『な、何でもないです!』』』


『ソウデスカ?ナラバ良イノデスガ』


高機能多機能AI01(ゼロワン)、略称ゼロワンも耳ざとく3人お言葉を聞き取ったようだ。さらっと圧力をかけているな。さすがは俺たちが作ったものなだけ合って優秀だ。是非ともその調子で今後もお願いしたい。

俺がそう思っている間に、ネムとゼロワンの会話が再開され、


『ゼ、ゼロワンって、AI,なんだよね?』


『ソウデスヨ。何カ疑問デモアリマスカ?』


『ぎ、疑問って言うか、信じられないって言うか……AIってこんなに優秀なの?』


『ハハハッ。ソウ言ッテ頂ケルト制作者様モオ喜ビニナルデショウ』


『制作者?』


おっと、俺の話になったか?まだ俺の名前は出さないで貰えると嬉しいんだが。

端くれとはいえ、俺もネムのファンだからな。何かの拍子に色々とばれても困る。解決策を見つけるまでの時間稼ぎの間だけは、俺の情報は出さないで貰えると嬉しいな。

そんな俺の願いが分かっているのか、


『制作者様ハ、2人オリマス』


『2人?』


『ハイ。オ2方ノ共同制作デス』


『ふ、2人でゼロワンを作った、の?主に関わったのが2人なんじゃなくて、全部2人で?』


『ソノ通リデゴザイマス。トテモ優秀ナ方ガオラレマスカラ』


『そ、そうなんだ……』


ゼロワンの話にネムは驚いているようだ。意識が自殺からそれてゼロワンに行っているので、悪くない傾向かもしれない。正直に理想を言えばもう少し自殺の原因とかの深いところを言って欲しかったのだが、時間稼ぎができるだけでも御の字だ。

ゼロワンが下手に深く聞き出そうとしないのもあるし、もしかしたら触れると何かが起きる危険があるのかもしれない。


因みに、3人は完全に2人に、というか1人と1機が話をしている間は蚊帳の外といった感じで、


『イレイサーって、協力者がいるんだな』

『そうだね。意外。全部できる孤高な万能タイプかと思ってた』

『ぼっち仲間かと思ってたのに……』


俺の協力者という存在に驚いているな。

ゼロワンを作った2人のうち、1人が俺、イレイサーであることは理解できているんだろう。

ただ、説明があるまでは俺が全部1人で作ったと思っていたんだろうな。俺はぼっちだと思われていたらしい。……まあ、素の性格のことを考えると否定はできんな。

小学中学時代とか、周りとの温度差がありすぎたからな。


「……ん。ビンゴ」


色々考えている間に、辺りの情報を見つけた。思わず俺の口元が緩む。

……一瞬、目の前にいる友人カップルが怯えた表情をしたように見えたが気のせいと言うことにしておこう。

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