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11.推しと幸せと side月島玲

それは、突然のことだった。

私が1人で静かにお母さんの手作りのお弁当を食べていたとき。ブルルルッ!と、私のスマホが震動して、何かメッセージが送られてきたことを示した。返信は食べ終わってからで良いだろうかと思いながら、私はメッセージを確認して、


「っ!?」


ばっ!と顔を上げた。

視線を向けてみれば、最近話をするようになった竹中(たけなか)羽野(はの)、そして、飛應(ひおう)甲子(きね)と目が合う。彼女たちも私と同じメッセージが送られてきたのだろう。


見つめ合った私たちはうなずき合い、昼食を中断して、急いで教室を出る。とくに竹中は友人達と食べていたから、突然出て行ったことに皆驚愕しているな。普段私の隣の席に座っていてよくクラスに馴染むように声をかけてくれる獅童君も、ぽかんとしている。普段のあの若干のいやらしさのある目も完全に驚愕のみに染まっていた。

だが、私たちは誰にも説明する気はない。というか、説明している暇などない。


「屋上だったか?」


「私も屋上だった」

「私も屋上でした!」


私の問いかけに並んで走る2人が頷く。ということは、本当に同じ内容が送られてきたのだろう。

とりあえず、内容の話をしてみる。


「私のは至急来て欲しいというものだった」:


「私のもそうだったよ」

「私のもそうでした。……報酬は、100万だって書かれてました」


2人が頷き、飛應が報酬の話を付け足す。

私と竹中は見つめ合い、頷く。こちらも報酬は同じだった。竹中も同じだったのだろう。

2人がお金に困っているなんて話は聞いたことがないが、()()()()()の指示に従うのには何か理由があるのだろう。

お金に釣られたのか、弱みを握られているのか、それとも私のようにどちらもなのか。


とはいえ、私としても臨時収入は嬉しい。

屋上に走って何かするだけで100万貰えるのだ。割の良い仕事だろう……なんて表面上は思っているが、おそらく私は法主がなくとも走っただろう。それは弱みを握られているからではなく、イレイサーに感謝をしているから。

彼(おそらく声から判断して男性だと思われる)のお陰で私は復讐を果たせたのだ。隣で走っている2人に何があったのかは分からないが、話を聞く限り私と同じようにイレイサーに感謝をしている。

報酬も弱みもなくても、私はイレイサーの頼みならば聞くつもりだ。


「一体、何なのだろうな」

「さぁ?私にはさっぱり分かんない」

「私も。急いできて欲しいみたいですから、相当何か焦るようなことがあったんでしょうけど……」


イレイサーが焦るようなこと。そう言われてみても、良く分からなかった。

彼の計画は1度しか経験したことがないが、完璧と言っても良いものだった。そんな彼の計画が狂うなんて想像ができない。

私が10分近く死体にナイフを突き刺し続けていても、いっさい動じる素振りは見せなかったし実際に何も問題は起きなかったのだから。


私たちはそれぞれ大きな疑問を抱きながら、屋上の扉を開ける。

通常屋上の鍵は閉まっているはずだし立ち入り禁止になっているはずなのだが、すんなりと扉は開いてその先の光景が……


「ネム!?」


「っ!?」


竹中が叫ぶ。

私たちの目線の先にいた少女は、大きく体を飛び跳ねさせて驚いた。手で掴んでいたフェンスの上部を離してしまい、背中から下に落ちてしまう。


「ぎゅぷっ!?」


少女から変な声が漏れた。頭を打ちそうにもなっていたが、なぜかどこからか厚みのあるタオルが飛んできて、彼女の頭と屋上の床の間に入り込む。


「え?今の……」

「凄い遠くから飛んできた、よね?」

「あ、あああああああ、あんなことできるのって……イレイサーさんくらいでしょうか!?」


呆然とする私と竹中。そして、壊れたように驚く飛應。

イレイサーの技術があまりにも高すぎたのだ。どこから放たれたのかすら分からない。ただ、かなりの速度で飛んできて、その角度と速度から考えると相当な距離のあるところからだと考えられる。


なんて、私が思っている間。私と飛應は呆然とし続けていたのだが、


「ネム!何やってんの!」


「っ!」


竹中が真っ先に動いた。

見たこともないような険しい表情を浮かべ、ネムと呼ぶ夢野マクラに近づいていく。そして、迷いのない動きで腕を振り上げ、

パシンッ!と、振り抜いた。


「はののん……」


ぶたれた夢野は頬を抑え、光のない瞳で竹中を見つめる。その瞳からは、深い深い闇が感じられた。

しかし、そんな視線に竹中は戸惑う素振りするら見せることなく、


「何やってんのバカ!死んだら全部終わるでしょうが!!」


「で、でも!」

「でもじゃない!あんた、死んだって幸せになるのはあんたを嫌ってるやつだけなんだから!」


「…………」


竹中は、夢野の前身をしっかりと捉えている。その目は力強く、有無を言わさないような圧があった。

夢野はその圧に押されて目線をそらし


「私が、幸せになる資格なんて、ない」


絞り出すようにして呟いた。

……ん?なぜだろうか?似たような台詞をどこかで………………

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