間話 過去の逆転(短め)
いじめ問題から引きずっていたものが解決され、友人として仲を深めた竹中羽野と飛應甲子。
関係は修復されたとはいえ、これまでため込んできた思いが消えたわけではなく、
「ちょっと私、甲子ちゃんのパシリになる」
「……は?」
ある日のこと、竹中羽野がそんなことを言い出した。
勿論飛應甲子は困惑。と言うか性格的に、パシリができるとか耐えられないタイプである。突然の竹中羽野の発言を止めようとするが、
「な、ななな、何言ってるんですか!私たちお友達なんですよ!」
「だからだよ。友達なら、自分が相手に何をやって相手がどんな気持ちをしたのか、しっかり把握しておきたいじゃん!」
「え、えぇ」
飛應甲子には説得でいる言葉がない。いや、このまま説得していくことは可能なのだが、その説得に竹中羽野が頷く未来が見えなかった。
「ど、どうしても、ですか?」
「どうしてもだよ。とりあえず、移動教室の時の荷物は私が持つ。あと、お昼を購買で買うなら私が買ってくる」
「せめて一緒に何か買いに行くとか」
「それはなし。私がお金を出して買っている」
「うぅ」
バッサリ切られて、飛應甲子も半泣きである。このまま話しが進んだ場合の未来を想像して、自分がどんな風に見られるか予想が付いたのだ。
そのため、最後の砦とばかりに、
「せめて、せめて代金は私に出させて下さい!そこまでされると本当に辛いです!!」
土下座しそうなほどの勢いで頼み込んだ。
こればかりは飛應甲子としても譲れないところなのである。母親が鐘をむしり取っていってしまった身としては、自分が金を奪うようなことをするのはどうしてもやりたくないのだ。
流石にそこまで頼み込めば圧に推されて、
「わ、分かった!じゃ、じゃあ、代金は出してもらうってことで」
こうなった。
とはいえ、クラスメイトに金だけ渡してパシリをさせているのだ。しかも、クラスのカーストのトップを。
それはもう、
「ひっ、飛應さんって怖い人なんだ」
「竹中さんかわいそう……」
「怖いねぇ。関わらないようにしよう」
「見た目は大人しそうなのに……人は見かけによらないんだね」
色々なものが悪い方向に進んだ。
飛應甲子も泣きそうになっていたが、性格上竹中羽野の気持ちをはね除けることもできずにそんな状態が続く。
流石に1週間近くそれが続くと、
「キネネンマジかわいそ」
間に入るものが現われた。本格的に精神的に追い詰められているように見えたため、
「獅童、君?」
イレイサーの中身、獅童治樹が現われたのだ。
彼の言葉に竹中羽野はむっとしたような表情になり、
「かわいそうってどういう事?」
「いや、まじ可哀想じゃん。最近折角クラスのやつらが話しかけてこようとしてたのに離れていったし」
「はぁ!?なんで!?」:
竹中羽野が驚いている。
パシリになると、それはそれで忙しくてまた周りが見えなくなってしまったのだ。優秀だが周りのことが見えなくなってよく失敗する女、竹中羽野である。
「いや最近、はののんのことパシリみたいに使ってるから、怖い子だって思われてるらしいぞ」
「そ、そうなの!?……甲子ちゃんごめんなさぁぁぁぁい!!!!!」
その日、飛應甲子に土下座する竹中羽野の姿が見られたという。
その姿が一部の生徒や教師に見られて、余計に飛應甲子が恐れられたのは余談だ。
明日からはまた本編を投稿します。




