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9.加害者と被害者と幸せと修復と

「おはよ!」


「あぁ~。おはよ」

「うっす。はののん。元気だな」


はののん関連が解決した翌日。

はのんは元気に。今まで見たことも無いほどに輝いた笑顔で登校してきた。憑き物が落ちたような、そんな雰囲気だ。


そして変わったのは、はののんだけでは無い。


「た、竹中さん!お、おおおお、おはよう!」


竹中、つまりはののんに挨拶をする、前髪で目元を隠した少女。激しく緊張して噛みまくっている。

はのんは氏俺を聞いて一瞬目を見開いたが、すぐに満面の笑みを浮かべ、


「おはよ。甲子(きね)ちゃん」


「う、ううう、うん!おはよ!!」


はののんが挨拶を返すと、ぱっと顔を輝かせる目隠れ女子。そして、先程1度挨拶をしたにもかかわらずもう1度挨拶の言葉を口にした。その様子にはののんも薄笑いを浮かべている。


彼女の名前は、飛應(ひおう)甲子(きね)。はののんと昨日話をしていたいじめられっ子だ。

相も変わらず暗い雰囲気でコミュ障全開となっているが、それでもどうにかなりそうな雰囲気だ。2人ともまだ完全な距離感は掴めていないが、仲良くなろうという気概は見られるな。

ここは、


「えぇ?何々?はののんその子と仲良くなったわけ?」


「っ!?」

「あぁ~。治樹ね」


俺が絡みに行こう。

ただ、はののんは嫌そうな顔を浮かべたな。


「治樹ねってひどくね?もっと喜べよぉ」


「はっ。鏡見てから言えば?」


「えぇ~?もっとひどいって。鏡とか毎日見てるから」


はののんから軽いジャブが飛んできた。

俺たちの会話が陽キャ過ぎたのか、飛應甲子は完全に空気と化そうとしているな。空気と化してるんじゃなくて、自分から空気になろうとしているように見える。


「んで?2人は何?仲良かったっけ?」


俺は空気になろうとしている飛應甲子に目を向ける。

はのんもんは痛いところを突かれたとでも言うように引きつった笑みを浮かべ、


「同じ中学だったんだよ。べつに良いでしょ?」


「えぇ?マジ?……なぁなぁ。中学のはののんってどんな感じだったの?」


俺は、目線を向けていた人物に尋ねてみる。

さっきから視線を向けていたのだが何も反応が無かったので、今度はしっかりと話しかける。


「え?わ、私ですか?」


「そう。どうせはののん本人に聞いても恥ずかしがって話してくんないだろうから」


「え、ええぇと。中学時代の竹中さんはぁぁぁ……」


俺に話しかけられて焦っているのと、過去の記憶を思い出そうとしてるので頭がまとまっていないのだろう。目を回してふらふらとしている。

湯気っぽいのも出ているか?

そんな状態になると、流石に隣のはののんが黙っておらず、


「ちょっと。甲子ちゃんが困ってるじゃん。やめてよね」


「えぇ~。そんな嫌がってないだろ。べつに。……どちらかと言えば、嫌がってるのははののんじゃねえの?あれだろ?中学時代ミスって恥ずかしい思いしたとか」


「そ、そんなことしてるわけ無いでしょ!」

「そ、そそそ、そうですよ!竹中さん、凄かったんですから!!」


「えぇ?マジでぇ?何か無いの?」


俺が茶化すように質問をして、2人が感情を出して答える。

そんな光景がクラスで見えたことで、飛應甲子はクラスの中での立位置を大きく変えた。ぼっちの度陰キャから、女子ヒエラルキートップの友人へと。


これで、2人の話はめでたしめでたしとなった。……と、とりあえずは思っても良いだろう。

ただし、2人は弱みを握られている。誰にと言われば、勿論俺にだ。

俺がいじめのことを知っているため、はののんんは言いなりになるほか無い。周囲の人間達のためにも。

そして、はののん達の将来を楯にされれば飛應甲子も言いなりになる。

1つの事柄で2人を脅す材料になるのだ。とても素晴らしいよな。


そして、いじめ関連の脅しの他にも、2人が俺に逆らえない理由はある。

それが、金に関することだ。


飛應甲子は自身の母親がいじめに関する諸々の賠償として勝ち取った金が必要ないと述べた。だから、俺は飛應甲子の持っていた貯金の一部を引き出して飛應甲子に渡している。さらにその一部が、はののんの方まで渡っていた。

そのことを知っているのは、勿論俺とはののんと本人だけ。母親の方が気付いておらず、贅沢な暮らしを今もしているらしい。

奪った金が残っていると思っているんだろう。かなりの額が減っているのにもかかわらず。


が、きっとそのことに母親が気付くのはもっと先の話。

その頃には飛應甲子も家を出ていると思われるため、バレても全く問題無い。誰が降ろしたのかさえ分からなくなっているだろうから。


こうして飛應甲子の抱えているものを発散させるのと同時に、弱みも握った。これで2つも弱みを握ったことになるし、俺の命令に逆らうことはできないだろう。


2人が「わたしか」を言わないなら、今はそれで良いだろう。……友人を助けるというのも、気分が良いものだな。




「ねぇ。月島さん。イレイサーとかこの間言ってたでしょ?」


「うん。それがどうかしたか?」


「実は私たちもあれにあってさ」


「ほぅ?そうなのか。そちらも探していると?」


「そうなの。協力しない?」


「それは良いな」



「あっ。イレイサーは俺だって言ってるだろぉ?」


「嘘をつくな。嘘を」

「ははっ。流石にそれはあり得ないんだけど」

「べ、べべべべ、別人だと思います!」

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