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人族の少女

 

「あん♡♡♡ デアグレン様の毛布いいにおーい♡♡♡」

「私達も嗅いでください♡♡♡」


 レンバルダの街の宿屋。

 一番高級な宿屋に泊まらせてもらっていた。

 オーガー族は身体の関係で、金を出してもどこでも泊まれるわけではない。


 この宿屋はちゃんと大きめの部屋も用意されており、街にいる間ずっと過ごしていた。


 試合も終わり出て行く準備でもするかと荷物をまとめていたらこれ。

 二人が全裸で俺の毛布にくるまっている。


「お前ら本当に可愛いな」

 連れましてからずっと俺に媚びてくれる。

 闘技士になってから、生きるためにやっている感覚しかなかったが、この二人を連れまわしてから、もっと媚びさせたい、贅沢させたいという感情が湧いてきた。


「えへへー♡♡♡ 嬉しい♡♡♡」

「デアグレン様と一緒に過ごすのたのしいです!!!」

 それはいい。俺も楽しいからな。


「出発は明日でいい。今日は酒のんでゴロゴロしような」

『はーい♡♡♡』


 そうやって二人と抱き合って遊んでいると


「デアグレン様、ご来客がありまして……」

 宿の人間が呼びにくる。来客? 


「ウロポロスか?」

 いやあいつはわざわざ呼びに来ないと思うが


「踊り子、ニフェルアリュア様です」



「どうも。誤解が無いようにお話したいと思いまして」

 部屋に呼ぶのもアレなので、宿の来客ルームに通してもらう。


「誤解?」

「あなたの試合で舞わなかった件です」


 ああ。

「あれはウロポロス……俺のマネージャーから『サブ試合では格の問題があるから話をしなかった』と聞いた。失礼もなにもない。あなたにも話がいったのか」


「ええ。私に話はきておりませんでした。今度舞ってもいいと言っておきながら、頼んでみたら断ってきた。みたいな頭のおかしい対応されたと勘違いされたら私のプライドに関わります。キチンと理解して頂いてホッとしていますが」


「誰から聞いたか知らんが俺としてはアレで話は終わっている。それにウロポロスの話は納得する話だ。闘技士も格は大切でな」


「そうですか。それで聞きました。次はファーリスト王国でメイン試合を組むと」

「耳が早いな。俺がそれを聞いたのは昨日だぞ?」


 ウロポロスから

「次はファーリスト王国でメイン試合だ」

 と言われた。相手はウォーウルフのラウルブグ。

 相当な猛者で、しかも三連戦と聞いている。


 ラウルブグは何度かメイン試合も組んだことのある歴戦の闘技士で、あのミカエルとも互角に戦い抜いたと聞いている。


 ウロポロスが上機嫌に

「これは金がでかいぞ!!! 期待していろ!!!」と騒いでいたが


「ええ。まあこういう職業ですから。それで次の試合雇いませんか? ファーリスト王国はどちらにせよ向かう予定だったのです。あの国は今、歌と舞の名手が押しかけていますから」


「是非お願いしたい。ファーリストは前座は舞か歌が主流らしいのでな」

 それにニフェルアリュアはニコリと笑い


「ふふふ。本物の『舞』をあの国に見せつけてあげますわ」



「性格悪そうだったなー」

 最後のニフェルアリュアの意地の悪そうな笑い。

 まあプライド高いだけなんだろうが。


「性格悪いですよー」

「あいつ頭おかしそーですー」

 部屋に戻るなり、また半裸で抱きついてくるランとフル。


 しかしおっぱい大きくなってきてないか? 二人とも。やたら胸が主張している気がする。


 いっぱい食べているからかね? なにしろゴブリン族は食糧不足で痩せている連中が多い。


「まあいい。俺には関係の無い話だ。酒のんで騒ごうな」

『はーーーい♡♡♡』



 翌日、宿を出ていくことになった。

 事前に金貨で前払いしていて、足りない金額を払うことになったのだが


「その。お酒を随分飲まれまして。追加で金貨30枚ほど……」

 恐る恐る言ってくる宿の人間に、金貨の入った袋を突きつける。


「数えて取っていってくれ」

 宿が直接用意する酒は高くなる。

 それは知ってはいたのだが、部屋で飲みながらしたかったから仕方ない。


「ありがとうございます! いや、本当に……その。見た目というか、闘技のイメージと違うのですなー」

 闘技のイメージか。粗暴で凶暴というイメージだからな。言われたらちゃんと金を払うのは意外に見えるのかもな。


「ちゃんと値段が明示してある酒の値段で暴れるようなバカは闘技士などできんよ」


 宿の前には馬車を用意させていた。

 そのまま二人を乗せるために呼んでいたのだが


「……あ、あの!!!」

 宿の前に一人の人族の少女がいた。

 かなりガリガリで服もボロボロ。

 俺に用事らしい。

「どうした?」


「……ぜ、贅沢させてくれるって!!!」

 ?????


 知らない少女に「贅沢させてくれる」と言われ戸惑っていると


「デアグレン様、闘技のパフォーマンスで言ってたやつですよー」

「本気にしたみたいですー」


 ああ。そうか。言ってた。俺の闘技に惚れて、この二人の下で良かったら来いと。


「旅になるぞ。それにこの二人の世話が仕事になる。意味が分かるか? いきなり贅沢なんて出来ない。下積みして、それで良ければ贅沢させてやるが、最初は辛いぞ」


 人族の少女か。オーガー族の美意識的に、人族も良いという連中もいるらしいが、少なくとも俺は体毛が多いゴブリン族やオーク族の方が好みに近い。


「……そ、それでも。こんなところにいても……」

「デアグレンさまぁ♡ この人族臭いです♡」

「こんなのを奴隷でもこまりまーす♡」

 意地悪そうな顔をして人族の女を見下す二人。


 ゴブリン族は基本的には弱い種族。

 見下されているし、人族よりも下等とされている存在。


 そんな二人に人族が仕えるというのも悪くはないかもしれないな。


「この二人のお付きで良ければ拾ってやる。ただ食事と服装はしっかり贅沢させてやるが。あくまで立場はこの二人の下。それでいいか?」


 人族の少女はランとフルを見上げながら

「……頑張ります」

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