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迎えにきたウロポロス

『全裸みてーな格好ではいってくんな~~~♪

 ここは風呂場じゃねーんだ~~~♪

 男に抱かれたいのかいんら~~~ん♪♪♪

 なら娼館にいけ~~~♪♪♪』


 バルバレイとニフェルアリュアが入場しようとした間際。

 会場から鳴り響く合唱。


 ミカエルの囲っている合唱団。彼女たちはトラブルが起こらないように今回はアピール無しと決めていた。


 今回はわざわざ隣の大陸から最強の闘技士が来てくれた。

 それに、帝国認定の踊り子ニフェルアリュアが舞い踊る。

 それだけでアピールとしては十分成立する。


 ウロポロスはこれ以上のトラブルはゴメンだとミカエルを説得してそうさせた。


 ところが合唱団はニフェルアリュアに相当な嫌悪感があり、ミカエルにも黙って、客先から合唱を繰り出した。


 と言ってもど真ん中からの合唱ならばともかく、観客席にバラけての合唱は難易度が高く、また声量も足りない。


 そのため合唱団に弟子入りしている人達も総動員して、約100人近い人数で浴びせた。


 その結果ニフェルアリュアにはしっかりそれが聞こえたので、ニフェルアリュアは真っ直ぐに観客席に向かってダッシュ。


 そのまま合唱団の一人の首根っこを掴んで殴打をすると、合唱団がそのままニフェルアリュアを羽交い締めにして一斉に蹴り。


 そのままニフェルアリュア VS 合唱団15人の大乱闘になり、さらに弟子たちも会場に乱入。


 これに観客達は大盛り上がりになっていたのだが、バルバレイとミカエルがどうにかこの大騒ぎを止め、二人は戦った。


 その戦い自体も観客は喜んだのだが

「前座で女が悪態つきながら殴り合う」というのが大いに受け、その後の闘技のアピールとしてメジャーなものになってしまった。



 デアグレンを見出したウロポロス。

 アン・ミカエルでボロ儲けした彼は、デアグレンを使って更なる金儲けをしようとした。


 だがデアグレンは隣の大陸に行ったまま帰ってこない。

 幸い隣の大陸の闘技士バルバレイと契約出来たので、そちらで儲けていたため特に困らなかったのだが。


「連れ戻しに行くか」

 デアグレンが向こうの大陸に行ってから三年。

 流石にもう良いだろう。

 ウロポロスは先に手紙を出してから乗り込みに行った。



 デアグレンはヘルパスト・ガーデリングにいる。

 旅団を雇いウロポロスは街に着いたのだが


「なんだこりゃ???」

 街の真ん中にある像。

 どこからどうみてもデアグレン。


「あいつが作らせたのか??? そういうの好きじゃ無さそうだったんだが」

 デアグレンがヒール役をこなすのに葛藤をもっていたのはウロポロスも知っている。


 デアグレンは見た目の凶暴さとは真逆の繊細な性格をしていた。


 だからこんな銅像を作らせるような男では無かった筈と疑問に思っていたのだが


 ウロポロスが銅像の前でうなっていると


「あ、いたいた。ウロポロスさん。捜しましたよ。ご主人様から迎えにいけと頼まれまして」

 そう言って来たのはレム。


 ウロポロスとちゃんと面識があるのは、ランとフル、そしてレムの3人。

 ランとフルも別々で捜しにいっていた。


「すまぬな。待たせたか? いや、あいつこんなもん作らせて喜ぶタイプじゃ無かったんだけどなーと思ってな」

 その言葉にレムは嬉しそうに笑い


「はい! 『あんなもん早く壊せ』が口癖です!」



「ウロポロス。わざわざ迎えに来てくれるとは、有り難いやら申し訳ないやらだ。よく来てくれた」

 案内されたのは豪邸。


 デアグレンはその家の前で待っていた。


「いや、お前も色々あったのだろう。こっちにも色々聞こえていたからな。それはともかくもう三年だ。こっちに帰ってきても良い頃だろう」


「……もう三年も経つのか……ああ。俺はいい。俺はむしろもう帰りたいぐらいではあるんだが……」

「あるんだが?」

 ウロポロスの疑問の声に


「デアグレンは貴族。しかもスロイト家跡継ぎの父親。そんなに気軽にお出かけされては困りますわ」

 ファンクライアが現れ話をする。


「……なんか風の噂でも聞いたんだが。オーガー族が貴族って。それでいいのか? 人族の国でも人外が貴族の例はそらあるだろうが、俺はオーガー族の貴族なんぞ聞いたことがない」


「そうですね。それぐらいデアグレンがオーガーの中でも特別という事でしょう。一緒に過ごして本当に思いましたわ。気遣いは出来るし、優しいし。大混乱した帝国にとって、人外がどうなど大した話ではありません。デアグレンも貴族としてちゃんとやっておりますし」

 ファンクライアの言葉に


「……いや、俺はなんにもやってないのだが……」

 小声で抗議するデアグレン。


「ちゃんと帰ってくる約束が出来るなら仕方ありません。ですが、約束の日は厳守されてくださいね」



 約束の日。

 3日。


「あいつバカだろう? 3日とか、船に乗る以前に港町に行って終わりじゃねーか」

「ファンクライアも束縛が激しくてな……」

 デアグレンも少し疲れたように言う。


「実際どうなんだ? お前が帰りたいと言うならなんとか交渉するぞ? 今のままも悪くないというならば仕方ないが」


 ウロポロスの言葉に少し悩むデアグレンだが


「……この街は気に入った。暫くはこの街に残るよ。約束を引き伸ばしてすまないな。ウロポロス」

「いや、お前が良いなら構わん。俺はバルバレイで儲けたからな。久しぶりに顔を見れて良かった。また来るさ。その時気分が乗れば帰ってくるといい」


「そうするよ。ありがとう」

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