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宝石で飾るゴブリン達

 オーガー同士の殴り合い。

 互いに全力と言うが、あくまで闘技。急所は殴らず互いが筋肉で痛まないところを殴り続けていた。


 それでも迫力は観客に伝わったのか試合終了後街を歩くだけで

「良い試合だったぞー!!!」

「また見にいくからなー!!!」

 と笑顔で声をかけられた。


 対戦相手のドルグゥゥアの格も落とさず戦い抜けたと思う。

 個人的には満足度の高い試合だった。


 そのせいかその日の夜。

 酒が旨い。


「やはり勝ち試合の後の酒は旨いな!!!」

「格好よかったです♡」

「いっぱいのんでー♡」


 ランとフルの二人が俺の胸板で甘えてくる。

「そうだ。明日宝石店に行こう。宝石買って着飾ろうな。それから馬車で次の街に移動だ」


『はーーーい♡♡♡』



 宝石。

 俺自身はあまり興味はない。

 オーガー族でも宝石を付けている者は見たことがない。


 だがゴブリン族の富裕層は必ず宝石を付けている。

 特にウロポロスの付けている宝石の数は異常。


 常に宝石を見せびらかし歩いている。


 ゴブリン族は基本的には小柄で他種族から迫害されて生きている。

 そのせいで貧しい者が殆どだ。


 そのせいか、一部の成功者達は自分は貧しいゴブリンではないという主張なのか、宝石を着飾る。


 だからゴブリン族の女性も宝石を身に付けるのはステータスであり、誇り。


 二人は俺にもたれかかりながら

「宝石嬉しいです!」

「たのしみーーー♡♡♡」

 おっぱいをわざとらしく押し付けてくる。


 こういう下品な感じはとても好み。

 俺は礼儀作法なんぞ分からないからな。直接的なものが一番いい。


 二人を身請けるのに金貨100枚使ったが、まだ金貨は余っていたし、今回の賞金もそれなりにもらった。


 しばらく贅沢をするにしても、まだ金貨一袋、100枚程度は使える。


 宝石店は高級街にあり、種族が限定されたりもする。事前にウロポロスに頼んで紹介状を書いてもらい、オーガーやゴブリンでも入れる店に来た。


「いらっしゃいませ。デアグレン様でしょうか?」

 店の入口で立っている男が声をかけてくる。


「ああ。紹介状だ」

 それを渡すと男は笑顔になり

「どうぞお入りください。お連れの方もどうぞ」



 宝石と言っても俺には良さも価値も分からない。

 金貨100枚の袋を店員に渡し

「これで買えるだけ頼む。出来れば数が多い方がいい」


「かしこまりました。それでは目立つものがよろしいですな。エメラルドやルビーの宝石は大変に人気でそこまで値段もはりません。準備させて頂きます」


 二人は並べられる宝石にウットリしながら身につけていく。

 正直あまりゴブリンに宝石は似合わないと思う。

 ウロポロスもそうだ。

 正直似合ってはいない。だがその違和感に意味があると本人が言っていた。


 宝石は金持ちの印。

 目立ち、分かるようにするのが目的であって、さり気なくお洒落に着飾るのが目的ではないと。


 そういう理由ならば、この二人もそうなのだろう。目的は目立つことだ。


「二人とも目立って素敵だぞ」

「嬉しい!」

「これも付けていいんですか!?」


 首飾り、腕輪、指輪。

 複数用意されていくが、用意されたのは全部で100個近い。


「ここから何個だ?」

 俺の問いかけに店員は笑顔で

「頂いた金貨ですと、こちらにご用意したすべてです」


「ぜんぶーーー!!!」

「すごーーーい!!!♡♡♡」


 二人とも笑いながら身につけていった。



 宝石のついでに服も新調させた。

 二人は真新しい服と多数の宝石に包まれて、誇らしげな顔をしている。


「デアグレンさまーー♡♡♡」

「一生懸命お仕えしまーーす♡♡♡」

 ふたりは俺の頬に口付けをしてくる。よっぽど嬉しいらしい。


「集落に戻って最後挨拶してから、馬車で次の街にいくぞ」


 集落では二人の姿に他の女ゴブリン達が羨ましそうな顔をしたり、怒ったりしていた。

 嫉妬なのだろう。そういう直情的なのは嫌いじゃない。


「この集落は気に入った。また来るからな」

「はーい! また来てくださーい!」

「お元気でーー!!!」


 ゴブリン達に見送られながら、俺達は次の街に向かった。



 馬車というのは金がかかる。

 ましてやこのデカいオーガー族が乗る馬車というのは高い。


 だから今まで俺は旅団と一緒に移動して、護衛を兼ねるため金がかからない移動方法をしていた。


 今回からは女二人を連れ回すので、専属の馬車を雇う。しかし単にそれだけで移動するのはもったいない。

 俺はいつも通り護衛を兼ねて歩き、馬車には女二人。馬車を操る御者は、共に移動する旅団から出してもらうことにした。


 旅団と移動するのは、襲いかかる山賊というのは大抵群れているから。

 俺一人強くとも、多勢に無勢なのだ。

 だから基本的にはこちらも武装している者が多い方がいい。


 旅団から見ても、デカいオーガーが付いてくるメリットは大きい。

 護衛費を払う必要もなく、旅団からはいつも歓迎されていた。


 なのだが今回から連れてくる馬車。

 人族から見ると、馬車に女を載せるのは不思議ではない。だが、それがゴブリン族というのはかなり不思議らしい。


 ゴブリン族は男女関係無く肉体労働する種族。

 そのゴブリン族が女とは言え、宝石をつけ馬車に乗って優雅に移動する。


「人族なら分かりますけど、珍しいですねー」

 旅団の者に言われるが


「珍しいから良いんだ。滅多にないから彼女たちは喜ぶ」



 旅団は危険な道を通らない。

 街道を真っ直ぐ行くだけ。

 そこは軍隊が訓練がてら警備をしたりもする道で安全とされている。


 だが、次に向かうレンバルダの街の途中には山道がある。


 山道は山賊が群れている場所。


 軍隊も狭い山道では思うように活動出来ないのだ。


 旅団も街道ではノンビリした感じで進んでいたが、山道に差し掛かると武器の点検をするなど緊張感が高まっていく。


「デアグレン様。なにか物々しいですね」

「ああ。山賊が襲ってくるかもな」

「こわーい」

 怯える二人に笑いかけながら


「もし襲ってきたら俺の戦いぶりを見ておくといい」



 山道を進んでいく途中。

「剣戟の音が!!!」

「上か!?」


 旅団がざわめく。

 俺は上を見上げ

「他の旅団が襲われているな」

 木で見えないが、鳥が羽ばたいている。

 乱闘が起こっている証拠。


「どうする? 引き返すか?」

 旅団の声に俺は首を振り


「救援に向かった方がいい。一方的な虐殺になっておらず抵抗しているんだ。数は拮抗しているはずだ」


「そうだ! 我ら旅団は皆兄弟! 駆けつけよう!!!」

 旅団達も一気に腹を決め大声を叫んで突進する。


「山賊共!!! 旅団を襲うな!!!」

「助けに来たぞ!!!」


 その声が届いたのか

『うおおおおおおおおおっっっ!!!』

 叫び声。


 俺は先頭になって上に登ると


「オーガーだ!!!」

「あんた達が救援か!?」

 見てすぐに分かるほど、山賊と旅団の服装は全く違う。


 俺は

「山賊共!!! このオーガー族の闘士!!! デアグレンと戦う勇気のあるやつは前に出ろ!!! 複数人でも構わんぞ!!!」

 俺の叫び声に山賊達は怯む。


 その間に旅団達も後ろから駆けつけてくる。

 山賊達も後ろの弓を構えた連中は戦意を失っていない。


 一気に俺は弓を構えた山賊に突進していく。

「くっっっ!!!」

 苦し紛れに弓矢を放つが、それらを振り払うように弾きとばし


「くらえっっっっ!!!!!」

 弓を構えた3人程度の連中に、後ろ回し蹴りを放ち、そのまま一遍に吹き飛ばす。


「ぐげぇっっっ!!!」

「ぐおっっっ!!!!」

「ぎゃあああああっっっ!!!!」


 一撃で3人やられたのを確認すると


「引き上げろ!!!」

 山賊達は引き上げた。



「本当に助かりました!!! あなた方が来なければ山賊達の奴隷にされるところでした!!!」

 襲われていた旅団達はひたすら感謝していた。


「デアグレンさんがいらっしゃったからです。デアグレンさんは闘技士としても有名な方で……」


 俺が紹介される。

「デアグレンだ。山賊は立て直してまたくるかも知れない。喜ぶのはまだ早い。すぐに山を下ろう」


「そうしましょう! 暗くなる前に!」

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