帝都の到着と身の証
「遅い!!!」
帝都の手前の街に着いたころ、迎えに来たバァゼルに怒られた。
別にいつ行くなんて約束なんぞしてはいなかったのだが
「すまなかったな」
自分でも思うぐらいに遅かったのである。それも原因は自分の性欲。
(コントロールしないとマズいな。闘技にも影響が出る)
そういう反省もあるのだが。
「まあいい。取りあえず試合の段取りは出来ている。それでファンクライア様もアピール出来るのだろう? ファンクライア様のアピール目当てで帝都の民達は入場券に殺到している。今回はスタジアムなんてものじゃなくて、もっと大きな広場でやってもらうからな」
別にバァゼルにそんな段取り頼んではいなかったのだが
「まあ、今こちらで色々考える余裕も無いからな。お前のプランに乗ってみるが」
俺の女達は全員孕んだ。
なので、あまり無理して移動したくはない。移動時も気を使って移動させるようにした。
幸い金貨は腐るほどある。
そのため、旅団ごと雇い、馬車15台に及ぶ大行列で移動するようになっていた。
基本的に女達は馬車の中でゆっくりとくつろげるようにして、世話は旅団の人族にやってもらう。
唯一ファンクライアだけは、ターミルが世話している。彼女は俺の女ではないから孕んでもいないからな。
そんな大行列で帝都に乗り込んだ。
帝都は想像よりも小さい街だった。
また随分薄汚い。そんな感想。
ヘルパスト・ガーデリングは、城壁を囲うように街があった。
その構成自体は他の街もよくある。
だが、城壁の外にあるのは所謂バラック。
流民などの貧民達が街を作っていたりするのが一般的。
ヘルパスト・ガーデリングの素晴らしかったところは、そう言った貧民街が殆どなかった点だ。
城壁の外にもしっかりとした綺麗な街並みが広がっていた。
帝都は城壁の中は古い街並み。城壁の外は貧民街。
そんな貧民街を大量の馬車で通り抜ける段階で騒ぎがあった。
城壁には当然門がある。
そこで検問もあるのだが、城壁の中はなんだか知らないが人ゴミの山。
「あなたがデアグレンか!? ファンクライア様は!? 無事なのか!?」
兵士の声にターミルがすぐに駆け寄ってくる。
「こちらにいらっしゃいますが、奥様の意向でここで身を晒す訳にはいきません。皇族の指輪だけを見せますから」
「はい! それで構いません!」
兵士達はファンクライアの馬車に駆け寄る。
馬車からのびる手。
手だけが馬車から伸びている。
指輪だがまだ付けている。
一気に太って外せなくなったのだ。
指輪を外すことに関しては
「この指が腐り落ちようが外すわけにはいきません」と頑なに拒否。
こういう身分証明にも使えるから外さなかったのか。
痛々しいほど食い込む指輪。
それを見て兵士達は跪き
「お通りください!!!」
【うわぁぁぁぁああああああああっっっ!!!】
帝都の中に入ると街の人間達が大騒ぎをしていた。馬車を守るように兵士達がその人混みをかき分けてくれる。
「なんなんだこれは?」
祭りでもあるのか?
そう思っていたら、一人の兵士が呆れたような口調で
「陛下の姉を誑かしたオーガーを見にきた庶民達だよ。闘技の試合は入場券が高く、金持ちしか入れないからな」
帝都の闘技場は正直大きくはない。
一万人程度しか入らないのではないか。
そして次の兵士達の発言で驚いたのだが
「この帝都内のどこの宿屋でも受け入れられるところはない。あなた達目当てで人が殺到する。だから城に案内する」
城。
正気か?
皇帝の姉を誑かしたというやつをわざわざ城に入れるのか?
そんな混乱をしながらも、馬車はそのまま城に向かって進んだ。
城に到着したので馬車から降りる。
女達も慎重に馬車から降りて固まる。
先頭はターミル。
ファンクライアはかなり分厚いローブに身を包み、姿を見せないようにしている。
「デアグレン! こっちよ!」
城の入口にいたのは踊り子ニフェルアリュア。
俺はその馴染みの顔を見て少し安堵した。




