急遽の前試合
この大陸最強の闘技士。
見た目は標準的な人族の男に見える。
「そこのゴブリン。本気の戦闘で良いんだな? 俺から負けるとはとても言えん盛り上がりだ。幸いオーガーは身体がしっかり出来ているようだ。ガチ勝負でも問題あるまい」
ウロポロスが打ち合わせをさせてくれたのだが、その男は来るなりこれ。
「デアグレンだ。俺はそう聞いている」
俺の名乗りに向こうは頭を下げ
「名乗りが遅れたな。闘技士のバルバレイだ。あなたの悪名……いや、闘技士から見れば立派な名声だな。名声は今帝国全土に鳴り響いている。本来ならば俺の前に、何人かぶつけてから戦うという流れが本来なのだが、それどころではない騒ぎになっている。俺は全力で勝つために戦う。お前もなんの遠慮もなくぶつかってこい」
バルバレイか。随分自信に満ち溢れている。
闘技士はこうでなくてはな。
「無論だ。良い試合をしよう」
ウロポロスが来れば契約は終了。
バァゼルとはそう伝えたのだが
「バルバレイの試合までにまだ日がある! もう一試合やろう!!!」
「……メイン試合が3日後にあるのに、もしその試合で怪我をしたらどうするんだ? そもそも基本的には連戦などせぬわ」
バァゼルの話にはウロポロスも来ていて一緒に話をする。
「バァゼルとやら。金を稼げる時に稼ぐのは間違いではない。マネージャーの儂も日常的にそれを考える。だが、それはこの前の連戦で十分だろう。あれで足りんのか? あの闘技場で入れ替え戦をやったのだろう? 賭は間に合わなくとも相当な金だろうが」
そう。あのファイトマネーは相当なものだった。
俺にあれだけ与えたのだ。バァゼルの取り分はもっとあるはずだ。
「怪我をさせなければいいのだろう!? 前回の試合は評判になった!!! 対戦希望者はいくらでもいる!!! バルバレイは大物!!! その前に前座として戦っても良いだろう!?」
前座といっても。
「いつやる気だ。試合は3日後。今から手配ではまた賭は間に合わんぞ? また入場料目当てか?」
それにバァゼルは賭け札らしきものを手にして
「これだけ注目されている試合だ! 2日で賭けは取りまとめてみせる!!! 対戦相手は獣だ!!! 狼と戦わせる」
狼。
「……は?」
「……ばかか……」
思わず間抜けな声を出す俺と頭を抱えるウロポロス。
「狼だ!!! デアグレンは馬相手に上手く戦っていたろう!!! 今回の狼は戦場用に訓練のされたやつだ!!! 騎士の馬と戦えたお前なら余裕だ!!!」
訓練された狼。
「全然大丈夫じゃなかろうが。訓練された狼?
訓練度合いによるが、騎兵と共に戦うのが前提の騎馬と戦闘力が全然違う。怪我をしない相手? 狼がそんな手加減などできるか」
「デアグレンの言う通りだ。試合前日に狼と戦わせるだ? そんなもの通ってたまるか……ちょっと待っていろ」
ウロポロスはそう言って部屋を出る。
「……まあ、そういうことだ。諦めろ。俺は闘技士。マネージャーの意向に従うのは仕事の1つ。俺はもう次の試合は決まっている。そのマネージャーの意向に逆らう気はない」
「……いやぁ……だがなぁ。聞いたら次の賭け金はデアグレンに傾いていると聞いているぞ? 連戦になれば、バルバレイの倍率も良くなるだろう? 裏社会が絡まないなら基本的には拮抗倍率の方が色々良いと思うんだかなぁ」
バァゼルの感想は当たっていたようで、戻ってきたウロポロスは真顔で
「お前なら狼相手でも余裕だろう。仕方ないから戦ってやれ」
俺は溜め息をつき
「分かった、分かった。お前が言うなら従うよ」
その上で
「倍率が俺に傾いているのか。相手はこの大陸最強なのだろう? なぜそんな事になっているんだ?」
「……やはり時期が悪いんだと思う。いきなり対戦だろう? 相手が誰であろうとかませ犬扱いされているんじゃないか? という心配はあったんだ。だから俺も誰か挟めと言ったのに……」
まあ事情は分かったが
「しかし、獣相手に戦って、次に本気の勝負か。どうなるか俺にも分からんぞ。全力は尽くすがな」
打ち合わせが終わった後に俺は女達と打ち合わせをする。
「バルバレイ戦はファンクライアをメインにアピールしたい。それで狼戦はレムにお願いしたい。ランとフルは休ませる」
『えええーーーー』
ランとフルは不満そうにする。
「ランは妊娠したし、フルも無理をしない方がいい。あまり動いて流産などされたら悲しくて仕方がないからな」
『……はーーーい』
不満そうではあるが、納得はしてくれたらしい。
「ターミル。お任せしていいか?」
「ええ。奥様とよくお話をしますので」
問題は
「レム。なにかいいアイデアがあれば……」
「ありまーーーす!!! ありまーーーす!!! お任せを!!!」
元気いっぱい。それは良いのだが。
「……例えばどんなのだ?」
「はい!!! とりあえず公開孕ませセッ○スぶちかませば大盛り上がりかと!!!」
やっぱりそういう方向性か。
「性的なアピールは両刃の剣だ。一過性は盛り上がるが何度もやれば飽きられる。他をやれ」
他を。というと頭を捻る。
「あっ! じゃあ笑わせるのやります!!!」




