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素人達との戦い方

 トーナメント戦は順調に進み、4人まで絞り込まれていた。


 幸いなことに死者はいない。トーナメント戦では武器禁止になったからだ。


 しかし見た感じ

「これでは勝負にならんぞ?」


 闘技というものは基本は受け身。

 相手の攻撃を如何に受け流すか。これが闘技士の全てと言ってもいいぐらい。


 なにしろ例え素人の拳だろうが、全力で振るった拳や蹴りの当たりどころが悪ければ、普通にダメージを受けるどころか、運が悪ければ死にかねない。


 それをどうやって受け流すか。どうやってそれを派手に見せるか。


 何発かは食らってもいいが、素人は殴りかたも分からない。

 殴った側が骨を折るというのも普通にある。

 そして見た感じ、この全員かそうなのだ。

 基本の動きが出来ていない。


「おい、バァゼル。この国はどうなってるんだ? 軍隊経験者とかもいないのか?」

 軍で訓練を受ければ、少なくともこのような酷い態勢で殴ったりはしないだろう。腰が座っていない。


「そんなもんいないだろう。特にこの帝国領土内では100年戦争しておらんからな」


 …………


「百年戦争していない?????」

 なんだそれは。


 じゃあレゼンアルドはなんだ?

 勝てたとは言え、その騎馬技術は素晴らしかったし、馬も戦闘慣れしていた。


「この帝国は、隣国すべて友好国になったんだ。戦争するときは国外で戦う。軍隊はあるが、それは特権階級なんだよ。軍は庶民の憧れで待遇も相当いい。志願制で志気も高く強い。レゼンアルドも将としては素晴らしいからな」


 この街一つ見ても人口が多い。人口が多ければ別に徴兵しなくとも志願制で十分な兵士が得られるわけだ。

 まあ徴兵している国は俺の大陸でも少数ではあった。それでも元軍人というか、軍所属は少なくはなかった。


 手軽に金を稼げる仕事だからな。

 ここでは特権階級なのか。


 平和な街という最初の印象は間違っていなかったということか。


 そうこうしているうちにトーナメントは進む。

 観客入れ換えも大体済んだらしい。


 ふと目の前を改めて見るとレムが疲れていた。

「ごしゅじんさまーーー。いっぱい踊りましたーーーー」

 おお、そうだ。ずっと踊ってたんだ。


「もう十分だ。よく汗もかいたな。俺は肉と汗の匂いがすきなんだ。こっちに寄れ」


「……あせ?」

 するとレムは肌着をクンクン嗅ぎ始める。

「くさーーーーーーい!!!!」

「それが良いんだろうが。性行為など体液がぶつかりあうものだ。臭いが強いぐらいがちょうどいい」


「でも汗臭いです!!!」

「俺もそうだ。それがいいんだろうが」


 そう言ってレムを抱きかかえる。

 するとレムは戸惑うが

「……た、たしかに。酸っぱい匂いはしますが……すっごい男らしいというか……オスの匂いがします……臭いけど、その、癖になるというか」


 俺はそのままレムの頭を撫で

「そうだ。それが男の臭いだ。お前からはちゃんとメスの臭いがするぞ……そろそろ良いだろう。身体を拭かずに待っていろ。今から戦う男のエキスを身に纏ってくる」


 トーナメントは残り二人。

 動きは十分見た。これならば


「バァゼル!!! 二人に武器を持たせろ!!! 二人同時に相手をしてやる!!!」


 俺の咆哮に

『うおおおおおおおおおおおおっっっっ!!!!!』

 観客席から歓声。


 俺はバァゼルから音声拡大装置を受け取り


『観客が入れ替わったようだから改めて言ってやる!!! いいか! 俺は隣の大陸からやってきた!!! ここは良い国で!!! 良い街だな!!! こんなデカくて綺麗な街は俺の大陸にはなかった!!! 俺はその中でも森に住み、獣を狩るような暮らしをしていた!!! そちらから見れば蛮族のような生活だ!!!』


 俺のアピールに、観客達は戸惑うが、俺の言っていることは街を称えることなので、皆は喜んでいるようだ。


 これは新聞(しんもんと話をして、とても手応えを感じたところなのだ。相手をとにかく称えること。

 その上で


『そんな蛮族な俺の大好物はな!!! 酒と肉と女だ!!! 旨い肉! 旨い酒! 巧い女!!! どんな女も!!! 俺のコレを味わえはま言いなりになる!!! 今回、この街に来て! これを味わいたいという女が来た!!!』


 俺のアピールをしっかり聞いていたのか、ファンクライアが近寄ってくる。


『皇帝の姉だそうだな!!! だが関係はない!!! 俺から見れば!!! 俺に寄ってきた一人の雌犬にすぎない!!! いくらでも可愛がってやる!!! お前らが崇め、仕えている帝国の姉を!!! これで可愛がって、滅茶苦茶にしてやる!!!』

 そう言って露出した下半身を突き出す。



【うおおおおおおおおおおおおおおっっっっっ!!!!!】

 大歓声。


『それが嫌ならばかかってこい!!! 止められるものならばな!!! 言っておくが! 俺は強いぞ!!! そこでよく見ておけ!!! 俺の強さをな!!!』


 音声拡大装置を置く。

 トーナメントで勝ち残った二人は既に武器を構えている。


 一人は剣。一人は棍棒。

 棍棒は正しいチョイスだな。

 下手な素人が剣を振るっても意味がない。

 だったらナイフの方がしっかり威力が出る。


 棍棒の良いところは全ての角度でしっかりダメージが出るところだ。


 剣や斧、槍はダメージが出る部位が決まっている。

 その点棍棒は何となく振り回せばいい。


『それでは!!! 二人の勇者どの!!! 二人掛かりで!!! このデアグレンを倒してください!!! 戦闘開始!!!』


 バァゼルの勢いのある掛け声。

 だが二人はなにか顔を見合わせる。

 なんか

「お前先行けよ」みたいに見えるな。


 見合ったままだとこちらも困る。

 俺がゆっくり近付くと

「……くっっっ!!!」

 棍棒を持った男が迫ってきた。

 腕の力だけで振るっているのが分かる。

 俺は腕を構えてその棍棒を腕で受ける。


【ガンッッッ!!!】

 棍棒の衝撃。

 だが、闘技士の本気の拳に比べればこんなもの問題にもならない。


 問題は

【スポッッッ】

 俺の腕に当たった棍棒は、そのまま吹き飛んでいった。

 多分持ち手が緩かったんだな。


「…………」

 相手はびっくりした顔をしている。


「かくごぉぉぉぉっっっ!!!」

 その隙を見て、ということなのだろう。剣を持った男が迫ってくる。

 だが、闘技士にとっては近づいてくるやつの気配など分かって当然。


 俺は迫ってくる剣に向かって


【バギッッッッ!!!】

 裏拳で剣を狙って吹き飛ばした。

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