勝ち負け未定のガチ勝負
帝国の首都。帝都と呼ばれる都市。
そこで待ち合わせをする予定だったのだが
「お前、なにをしでかしてるんだ」
ウロポロスが呆れた顔をしている。
レムを連れて次の街に向かおうとしたら城門で取り押さえされそうになったのだ。
「彼女は準優勝ですから!!! 式典が沢山あります!!! 必ず出席してもらわないと困ります!!!」
目的は箔付けだったので
「別に辞退してもいいのだが」
と言ったのだが、向こうは全く折れず。
取りあえず俺達は首都に向かわないと行けないと事情を説明したらウロポロスが呼ばれて来た。
「どちらにせよ試合はここでやるから全然問題はない。だが、首都でアピールする必要があったんだ。なにしろデアグレンもラウルブグもこっちの大陸では全くの無名。名を売ってから試合の予定になっていてな。そのためにニフェルアリュアにも協力してもらう手筈にはしていたのだが」
ウロポロスはなんか上品なドレスを着せられているレムを見ながら
「ガーデリングコンテストにレムを出して箔付けをする。みたいなこと、俺だって発想せんぞ。わざわざこのために痩せさせたのか?」
「いや、船旅で酔って激やせしたんだ」
「もう船はこりごりですーーー」
ウロポロスは溜め息をつき
「俺のところにも『レムを街から出すな』と苦情が来ている。だからお前らはこの街にいろ。アピールはレムを囲っているという一点で十分すぎる。ラウルブグは帝都に行ってからアピールとなるが」
「分かった。苦労をかけたな」
なんかウロポロスがグッタリしているのだ。
余程気苦労が堪えなかったんだろうな。
そう思ったが
「お前にもビックリだが、一番苦労したのはニフェルアリュアだ! あのバカ、自分の誇りがどうこうしか言わん。この話をまとめるのが本当に苦労してな……」
そしてウロポロスは真面目な顔をして
「基本的にはいつもの闘技だ。基本的には勝つ。強さを徹底的にアピールする。知名度を高めて、高めて、ここぞという試合では負ける。問題ないな」
「……ああ。闘技士だからな」
葛藤は今でもある。
だが
「こいつらのおかげで大分覚悟は出来たつもりだ。全力を尽くそう」
準優勝のレムを囲っている闘技士。
その噂はすぐに街に広がった。
「決めた試合はこれからだが、まずは肩慣らしで戦ってみたらどうだ? ガチ戦闘もあるだろうが、お前ならば余裕だろう」
ウロポロスからのアドバイスに従い、こっちの街の闘技士が集まる場所に向かった。
隣の大陸から来たオーガー族の闘技士。
それだけならば、変わったやつが来たな程度で客も入らないだろう。
だがコンテスト準優勝の女を囲う闘技士というと話が変わってくる。
物珍しさ、嫉妬。そういうもので客は入る。
「俺のキャラは粗暴だからな。悪役として暴れてやるか」
「本当はこんなにやさしーのにー♡」
「デアグレンさまだーーーいすき♡♡♡」
ランとフルが抱きついてくる。
柔らかい。
「レム、皆の前で少し乱暴にするかもしれんが大丈夫か?」
「はい! 私もしっかり演じます!」
闘技士と言うのは特に団体があるわけではない。
俺がウロポロスに囲われているように、ラウルブグがゼミラと共にやっているように、基本的にマネージャーと組み試合を成立させる。
こうなっている理由は、闘技士というのが賭事に絡んでいるからだ。
闘技が成立する条件は複雑。
裏社会との関わりや、勝ち負けの交渉。
闘技士は戦うだけでもかなり負担となる。訓練や試合、それに備えるだけでもかなりな労力。
それに加え交渉などやってられない。
昔は闘技士の団体を作ろうという話もあったらしいが、団体にしてしまうと抗争が収まらず分裂につぐ分裂。
その結果、闘技士達はマネージャーを雇い、マネージャーに交渉してもらうのが当たり前となった。
だから、この闘技士との交渉もマネージャーを通してやることになる。
ウロポロスは既に街を出ている。
俺が直接交渉することになったのだが
「勝ち負けが決まっていない戦闘ならば喜んで受けよう」
あっさりと対戦相手が決まった。
相手はトロール族の戦士。
トロールというのはオーガー族よりも更にでかい。
俺の倍はありそうな闘技士。
体格の差というのは闘いにおいては重要な要素となる。
純粋な勝負となれば不利にもなるだろう。
だが
「勝ち負け未定の試合は血が騒ぐな。レム。ラン、フル。最高のアピールをして、最高の闘いをこの国に見せ付けてやろう」