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仕切り直しの試合

 試合開始の合図前に始めたということで仕切り直しすることになった。


 今日このあとやるのではなく別日でやる。

 今日の試合のベットは持ち越しとなるが、新たに賭けることもできる。


 たまにこういう試合がある。

 反則したから毎回こうなるわけではない。

 こうなる理由は「儲かりそう」だからだ。


「よくやったぞデアグレン。あのタイミングでの反則も最高なら掌底破という選択肢も良かった。あとわざとではなかったと思うがアレンバルドが女とバレた後に追撃しなかったのも良い。考えうる限りで最高のパフォーマンスだ」

 ウロポロスはうんうんと頷いている。かなり上機嫌。


 これを見るとアレンバルドが女というのは当然知っていたようだ。

 別に闘技士で女は変ではない。現に今の闘技の世界チャンピオンは女だ。


「絶対王者ミカエル」

 ウロポロスが送り出した最高傑作と呼ばれる女性。


 その実力は本物で、俺が実力では手も足も出なかった強者、「レグンヴァルム」という「世界最強の男」と呼ばれた男を蹴り一撃で気絶させる程の者。


 だから女なら女でいい。

 だがアレンバルドは男であると誤認させるような名前と姿。


「あいつはアレンバルドの妹だ」

 俺の心の中の疑問に答えるようにウロポロスは話す。


「兄は戦場で大怪我をおった。その兄の治療費を稼ぐために妹が出ることになった。なのだが、まあそんなド素人の女出しても賭けが成立しないから、兄の代わりに負け役をやらせることにしたんだ」


 なるほど。そういう事は闘技ではよくある話。


「あいつはフェルミエールと言うんだが、兄に憧れて必死に剣の訓練をしていた。そのせいか割と様になっていたんだ。だから負け役ならば出来そうだとおもったんだが。パフォーマンスがダメだったな。あれは訓練をまともにさせなかった儂が悪い」


「……戦うよりも、戦前いくさまえのパフォーマンスの方が難しいという奴は多い。誰か付けてやった方がいい」


 パフォーマンスは付け人がやることも多い。俺もそうして欲しいのだが


「そうだな。次回はそうする。なにしろアレンバルドの代わりのあいつは誰だという説明が必要だからな」


 対戦相手の詳細など本来はどうでもいいのだが

「別人だとして、賭けは成立するのか……?」

「そこだ。お前にお願いするのは次回の試合は相手の反則勝ちという形で終わらせたいのだ」


 相手の反則勝ち。

 つまり俺は負け役になる。


「……闘技には勝ちも負けもない。だな。だが、反則負けとするならば打ち合わせは必須だ。あいつの剣の扱い方は本物だ。下手に振るわれると大怪我をしかねない。剣を振られると困る」

 それにうんうんと頷くウロポロス。


「当然の話だ。初手で剣を吹き飛ばすなど、シナリオはこちらで考える。その上でフェルミエールと打ち合わせをさせる」



 フェルミエールという女は明らかにこちらを見て怯えていた。


 長い髪に、洒落っ気のある服装。

 正直な感想は

「……兄の代わりに戦うというのに、その格好か?」


「……なっ!!!???」

 怯えてこっちを見ようともしなかった女は顔を真っ赤にして俺を睨む。


「……ミカエルの話はウロポロスからよく聞かされた。戦場で大怪我をした姉の代わりに戦った女。だがその実力は実際にあったと。お前はその実力があるのか? その長い髪は掴むには容易いし、その服装は兄の代わりに戦うような格好とは思えん。ウロポロスになにを言われた知らんが、反則勝ちするにも痛みもあれば恐怖もある。あのように恐怖を全面に出されれば俺も上手くやれる自信はない」


 俺の話にウロポロスも頷き

「フェルミエール、その通りだ。既に話をしたように今回の賭けはお前さんの反則勝ちという形をとる。だがな、もし前回の試合や、先程のような怯えをだすようならば、儂はデアグレンにお前さんへの公開レイプを命じさせるぞ」


「……なっっ!!!」

「儂からすれば儲かるか儲からないか。それだけだ。ミカエルは本当に儲かった。お前さんの境遇はミカエルそっくりだ。だから儲かるかもしれないと試している。いいか、前回の試合はデアグレンのパフォーマンスに救われただけでお前さんはなにもしていない。デアグレンが素晴らしかったから、今回の話に繋がった。この好機を無駄にするようならば、お前は闘技場でデアグレンに陵辱されるし、その様を観客に見られるんだ。それぐらいの危機感で戦え。ミカエルは常にその恐怖と戦い続けて王者にまで這い上がった。それに耐えられないならば止めちまえ」


 それに、震えながら

「……頑張ります」

 フェルミエールは頷いた。



「女だとバレなきゃいいと思っていたんだがな。あっさりバレるし、そもそもあんなに怯えるとは思っておらんかったのだ。儂もミカエルの件で目が曇ったのかも知れんな。アレが普通だと勘違いをよくする」


 フェルミエールがいなくなった後、ウロポロスは酒を飲みながら愚痴のように俺に語りかける。


「……俺も敗北を命じられれば心が揺れる。そんな思い切れる訳でもない」

 俺の言葉にウロポロスは何度も頷く。


「それが当たり前だ。だから今回、試合の途中であいつが気絶したら破って構わん」


 ウロポロスの言葉に俺は目が見開く。

「……いいのか?」

 賭けの結果というのはもう決まっているはずだ。それを直前でひっくり返すのは通常有り得ない。


「そもそもはお前さんが勝つシナリオだったんだ」

 ああ、確かにそうだが


「幸い今回は裏社会の賭けが乗っておらんだ。だから勝敗をひっくり返せる」

 そういう事があるのか。

 ウロポロスもそういう調整が大変そうにしてはいるんだが。


「実際闘技場でレイプされても困るが。服ぐらいは破り捨てて構わんぞ」

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