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前座の大反省会

 結果的に予定通りになったのだが、何故か大反省会みたいな形になっていた。


 怒っているのはウロポロスと、実況をしていたリネースという人族の女。


 怒られているのは、あのアン・ミカエルとニフェルアリュア。


「なんで実況席に最後まで来ないの!?」

「……みんなを宥めていたら、時間が……」

「セッ○スしてたって聞いたわよ!!!」

「……慰めなので……」

 アン・ミカエルを怒っているのは、リネースという女。


 なんでも本来は実況はリネース。解説はミカエルという話だったらしい。


 ラウルブグと戦ったこともあるし、この街の英雄だ。解説者には相応しい。

 ところが時間になっても来ない。


 リネースはミカエルを探させていたので、当初実況が無かった。

 そして、実況も途中からとなり解説も無かったと。


「……あれが成立したのは二人が闘技の実力者だからだ。だかな! ラウルブグはともかくデアグレンは初めてのメイン試合だ! 知名度はまだ低い! そこを解説にフォローしてもらう必要があったのにだ! リネースがなんとか懸命に繋いではいたし、二人が映える技を選択し続けていたからなんとかなったが!!!」


 ウロポロスも怒る。


 そしてニフェルアリュアの方を睨み。


「あなたもだ! あなたは国認定の踊り子! あなたに暴力をふるえば国際問題になる! なのにあの挑発はないでしょう!!! 止めるこちらの立場になってください!!!」


 なんでも試合始まった後もミカエルの取り巻きと揉め続けていて

「うるせーーー!!! 田舎もののクソブス!!! くせえから口開くなよ! なんだその弛んだ脚はーーー!!!」

 と叫んで、相手が殴りそうになったので、身体を張ってウロポロスが庇ったそうな。


 それでもニフェルアリュアの罵倒は収まらず、最後は羽交い締めにして連れ戻したらしい。


 その挙げ句、試合終了したら飛び出してきてウロポロスのアピールを台無しにする。


「あんなアピールされたら、次回も貴女に出てもらわないといけなくなります! でも貴女はもうそろそろお国に帰る頃でしょう! どうされるおつもりですか!?」

 ウロポロスの怒りの声にニフェルアリュアは苦い顔をしながら


「……国には私から連絡します。別に船が遅れるなどはよくあること。そんなにシビアに日程管理をされているわけではありません。次の試合もそんなに日は空かないのでしょう?」


「そうですか。であれば是非。もちろんお金は払います。ただもうあのような喧嘩はおやめください。アン・ミカエルが悪いのはもちろんですが、そもそもあなたがあそこまで挑発しなければここまで大騒ぎになっておりません」


 そしてウロポロスはミカエルの方を見て

「お前もだ。お前が出たら観客は当然次の試合を望むに決まっている。だがラウルブグとデアグレンは三連戦と決まっておるのだ。もう騒ぐな。あの取り巻き共にもよく言っておけ。いいな」

「……すみませんでした」


 説教が終わったようなので

「……戦いは変わらないんだな。それならば次の試合の打ち合わせを……」

 俺の言葉を途中で遮り

「そこだ。この説教にお前とラウルブグを呼んだのはそのためだ。今回の終わりは予定通りだったが、想定以上に……まあこの二人が悪いんだろうが、決着をちゃんと付けて欲しいという反応は多かったように思う。次回はルール無しでやろうと思っている」


 ルール無し。そうなれば元々の予定の反則勝ちというのが成立しない。


「その代わり試合は一時間制限。決まらなければ再試合。今回の戦いを見るに、両者スタミナはまだ十分だった。一時間は長いがお前ら二人ならば耐えられよう」


「はあ? ワザと引き伸ばすんですか? 闘技にヤラセや打ち合わせがあるというのは知ってはいますが。前座として私が舞うんですよ? そんなシナリオじゃ困ります」

 ニフェルアリュアの突っ込みに


「……まだ儂の話に続きがある。今回は三連戦が決まっている。そして今回アン・ミカエルが茶々を入れた。そのため三戦目はガチ勝負にして、勝者がアン・ミカエルに挑戦という形はどうだ? もちろん双方に大怪我を負わせない配慮ぐらいは求めるが……」


「素晴らしい! 素晴らしいな! ウロポロス!!! 俺は賛成……」

「反対です!!! 二戦目は時間切れ、三戦目はガチ勝負まではいい! ですがミカエルとの戦闘は認めません!!!」

 ラウルブグの咆哮に被せるように、ゼミラが咄嗟に止める。


「……それは試合が終わってから決めろ。俺はどっちでもいい。とにかく二戦目、三戦目は了解だ。良い試合をしよう」

 そう言ってラウルブグに手を伸ばす。


 それにラウルブグは立ち上がり、大きく微笑み

「もちろんだ。最高の試合をしよう。そのあとの話など、終わってからすればいい。全くその通りだからな」

 強く手を握ってきた。



「真剣勝負ならばデアグレンが勝てると?」

 ラウルブグ達が去ったあとに、ウロポロスとニフェルアリュア、そして俺が残っていた。


「体格差はデカい。デアグレンは普通に強い。なのだが、ラウルブグも相当強い。真剣に戦えばどうなるかは分からん。儂の予想だが6:4でラウルブグが優勢。だがな、ゼミラはミカエルとの試合を組ませたがらない。勝てば戦えるとすれば、ゼミラは乗り気にならん。マネージャーが積極的でない試合というのは中々難しいものだ。あと純粋なスタミナならばデアグレンの方が上。二戦目と三戦目は間をほぼ空けないようにする。そのつもりで戦え」

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