ファーリスト王国
ファーリスト王国までは距離がある。何度か街で休憩をとりながら移動するのだが
「げひーーん」
「これがいいんだ」
レムは胸をあけ、娼婦のような格好をさせ二人の世話をさせていた。
レム本人も
「薄着のほうがあいます」とのことで別に気にしていないようだ。
何個か宝石も付けさせた。
だがそれ以上に
「おいしい!!! ご飯おいしい!!!」
モリモリ飯を食べる。
ランとフルはそこまでご飯を食べないが、レムは俺並みに食べる。
そのせいか本当に驚くレベルで身体が変わっていった。
胸は膨らみ、女性らしいふっくらした身体になった。
ボサボサだった髪もキチンと手入れをして、見た目はそれなりな立場の娼婦に見える。
それなりに身なりがちゃんとした娼婦が、甲斐甲斐しくゴブリン族二人の世話をしているので変な目で見られるのだが。
ファーリスト王国までは30日ほどかかる。
本来は小さな街でも試合をして稼ぎながら移動するものなのだが、メイン試合となれば話は変わる。メイン試合は貰える金額が違う。
その前に怪我をするリスクをする意味がない。
なにしろこの三連戦は全部で3000金貨を約束されていたのだ。
前金も十分もらった。
ならば試合は不要。
だから移動していたのだが
「おい、あんた。あいつ使わせろよ。いくらだ? 銀貨でいいか?」
一緒に移動していた旅団の男が絡んでくる。
俺に声をかけてくるだけマシだが
「あいつはまだ仕事できん。諦めろ」
「生娘か? なら余計いいじゃねーか。俺が男教えてやるよ」
俺はその男をにらみ
「……とっとと去れ。俺がキレる前にな」
俺は馬車に移動し
「レム、襲われるかもしれん。俺はここで寝る。なにかあれば叫べ」
「は、はい! なんか一人ウルサいのがいて。そいつだと思います」
「こんな格好させてるからだとおもいまーす」
「どこの娼婦だー」
まあそれはあるかもな。娼婦みたいな格好させてうろつかせれば、使わせろと騒ぐ男は出てくるか。
「仕方ない。多少は厚着をさせるか。だが俺はこういう服の方が好み……」
「私達が着ますからー♡」
まあそうするか。
レムが襲われても困るし。
多分レムは、元々人族の中でも美人だったんだろう。
それが貧困によりガリガリでそういう娼婦のような職業にすらなれなかった。
以前聞いたことがある。
本当の貧困は身体を売ることすら出来ない。
売春をするのにもそれなりの身体が必要になる。
そういった女が出来るのは食糧となること。
レムは生き延びて、食べまくることで本来の美貌を発揮した。
それはファーリスト王国に着く頃には隠せないレベルになっていた。
だが、レムはランとフル二人の小間使いとして喜んで働いていた。
美味しいご飯いっぱい食べれるし、服も沢山買ってもらえるし文句なんてありません!
そんな感じのようだ。
しかし、人族から見て美人の女がゴブリン族の女の下にいるのは色々変に映る。
そのせいでやたらレムは声をかけられるようになった。
「ゴブリン族に使われてるぐらいだから、きっと安いんだろう。端金で買えないか? そんな感じなんだろうが」
ランとフルを目立たせる目的で連れてきたのだが、なんか違う目立ち方をしている。
それはそれで構わないかと思いながらも、俺は訓練をしていた。
次の相手のラウルブグは強い。
シナリオを決めて戦うにしても、下手をすれば気絶しかねない。
最近はランとフル相手に食って飲みまくっていたからな。
その分をしっかり動いて身体を絞らないといけない。
「噛みつき攻撃は腕をもっていかれるし、ウォーウルフの脚力は異常だ。骨が折れかねん」
オーガーの身体はでかい。
素早く、威力の高い攻撃をするウォーウルフとの相性は悪い。
だが逆を言えば技のやりとりが決まっている闘技という面ではその攻防を面白くすることが出来る。
その攻防だが、生半可な攻撃では観客は白ける。
客達は金を賭けているのだ。
その金に見合った戦いをしないといけない。
森の中で跳躍や、巨木への体当たりを繰り返すが
「思ったよりコンディションは悪くないな。メイン試合か。徹底して暴れるぞ」
ファーリスト王国。
王国と名は着くが実質は公国に近い。
大国のティルヴァイス王国の友好国、衛星国として、都市一つの領域だけ独立している国。
だがこの王国の王都の華やかさは異常だった。
「すごーーーーーーい!!!」
「おしゃれーーーーー!!!」
ランとフルが大騒ぎしている。
街中はまるでお祭りのように賑わい、最先端のファッションなども飾られている。
またその値段も凄いのだ。
服一枚に金貨100枚とかある。
「……すっごい、たかーーーい」
レムはお洒落がどうこう以前にその値段にビビっていた。
基本的にファーリスト王国は観光都市のようで、観光客向けに値段の高いものが多い。
食い物も高い。まあ俺は金があるからいいんだが。
「服とかの買い物は試合が終わってからゆっくりしような。試合に集中したいんでな」
「はーい♡」
「楽しみにしてまーす♡」