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少女を金で囲う

 人族の女を勝手に連れ出して問題になっても困る。

 俺はこの女の親の所に連れて行ってもらい買取交渉をしに行ったのだが


「……なんだこりゃ」

「うちの集落よりひどーい」

「人族も酷いところは本当に酷いって聞きましたけどー」

 ランとフルもびびっている。


 その少女は「アレムの家の中妹」と名乗った。

 アレムというのは親の名前。自分の名前も無いのだ。


 貧民街はそういうのがある。

 しかしそれにしてもだ。


「臭いな」

 汚水に虫がたまり、その奥にはなにかの死体が浮かんでいる。


 こんなことろに人族が住んでいるのか。

「こちらです」

 これだけ貧しいところに住んでいればまともな言語教育もされていないだろうに、この少女の言語はしっかりしていた。


 なんでも闘技場近くで屋台売りの手伝いをしていたそうで、それで俺の話を聞いたらしい。

 屋台売りをしていれば自然と言語は覚える。


 その少女が案内したのは家とも言えない、申し訳程度に屋根があるだけの小屋とも言えない建物。


「……ここか?」

 すると少女の姿を確認したのかすぐに奥からガリガリの女が飛び出てきて


「金は!? くいもんは!? なにをグズグズしてんだい!!! はやくだしな!!!」

 母親か?

 汚れていてなんだか分からない格好をしている。

 森で生活していた俺も酷い境遇だと思っていたが、上には上がいるな。いや、下には下か。


「おい。この女は俺が買い取る。これで足りるか?」

 そう言って金貨を10枚を地面に置く。


 それに固まる女。


 流石に貧民とは言え金貨10枚は少ないか。

 いや、金貨が珍しいのかもしれない。念のため銀貨と銅貨も持っては来ている。


 銀貨100枚で金貨1枚程度。銀貨一枚は銅貨10枚程度。銅貨一枚で一食のパンが買える程度の価値。

 俺は銀貨500枚程度を地面にばら撒く。


「銀貨500枚と金貨10枚。これでいいか?」

「……銀貨! こんなに!!!」

「こいつは連れて行く。じゃあな」


 すると奥から子ども達が出てくる

「ねーちゃん?」

「キラキラ、おかね、いっぱい」

 子ども達は銀貨を見てハシャいでいる。


「私はこの人に買われたの。みんな元気でね」

「わかったー」

「キラキラー」


 すると貧民街から人が集まりだし、バラまいた銀貨を拾おうと狙っている。


 途端に

「全部拾え! 全部だ!」

 母親の指令と共に子ども達は一斉に拾っていく。


 そこに殺到する貧民達。


「……さようなら」

 その光景を濁った目で見ながら少女は俺達についてきた。



「みすぼらしい格好でお世話されても困るだけだろうが。それに俺はこいつに衣食住は贅沢させると約束したんだ」


「えーーー!!!」

「下積みなのに甘やかしすぎですー!!!」


 とりあえずボロボロの格好で乗られても困るので、有料の水浴び場で身を清めさせ、服も新調しようとしていたら、ランとフルが

「最初から贅沢させないほうが」と抵抗してきたのだ。


 なのだが


「汚れた服で世話されたいのか?」

 しぶしぶ二人は少女を綺麗にしていく。


 しかし名前が必要だな。

「名前を名乗れ。自分で決めろ」

 すると困った顔で


「……では、アレムの下をとってレムで」



 小綺麗にすると悪くない顔付きだったことに気付く。

 オーガー族の美意識で悪くないだから、人族から見てどうかは知らんが


「痩せているのは気に入らないな。食え。太れ」

「ちゃんと私達の世話もするんだよー」

「食事は食わせるけどー」


 馬車で三人を乗せて移動。

 今回も旅団と一緒に移動することにした。


「レム。不満があればすぐに俺に言え」

 そう言ったが、レムは夢中で飯を食っている。


 今は休憩中で焚き火で肉を食っているんだが

「おいひいです! しゃいこうでしゅ!」


 そしてランとフルは微妙な顔で

「……レムはちゃんと世話してきます。ゴブリン族が、とかそういうのも無いです。真面目でちゃんとしています……」

「生意気ならいびろうかと思っていたのですが……その。感謝を忘れませんし、私達も貧民から救われた身です。レムの気持ちもわかるので……」


 普通に二人も受け入れていた。

 揉めないならそれでいい。


 そしてこのレムだが、多分相当飢餓に近い状態だったのか、飯を食いまくることで一気に肉がつき、見るからに背が伸びてきた。


 馬車での移動は10日ほど。たったそれだけの間にレムの姿は見違えた。


「サイズが合わんな。また買うか。もちろんお前等もだ」

 レムの肉付きが急に良くなったので服がムチムチで破れそうになっていた。

「あん♡♡♡ わかりましたー♡♡♡」

「新しいのかいまーす♡♡♡」

 ハシャぐ二人。


 すると旅団から

「なあ、あのレムって言うのはあんたの女じゃないんだろ?」

「俺達に使わせてもらえんか? もちろん金は払う」


 その話に俺はキョトンとして

「……人族から見て、レムは魅力的なのか?」

 オーガー族から見れば美人に見えるが、例えば人族で踊り子として選ばれるぐらいの美貌を誇るニフェルアリュアは、俺から見れば美人とは思えない。


 俺から見れば美人ということは、人族からはそうでもないと思っていたのだが


「いや、最初は全然だったが」

「今は肉付いてきたろう。なかなか下品な感じでいい」

 おお。なるほど。多分下品と言われるような品のない直接的なエロスが通じるんだろうな。


「そうか。だが悪いな。あいつは拾ったばかりでまた体調も戻らん。そういうのはできん」

「そうか。まあ機会があれば」

「邪魔したな」


 あっさりと引き下がった。

 だが二人からの話に

「人族から見て下品でエロいと言うならば中々いいな」

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