第8話 冤罪
「――で、お前らは人の説教を面白がって見ていたと。何を考えているんだ!」
「――すみませんでした!」
先生から見つかった私たちは1列に並べられてお叱りを受けていた。
あーあ。わたし中学に入って初めて怒られちゃったよ。
「――だから、まだ説教って決まったわけじゃないだろって!俺は無罪だって主張してるんだ!」
横から六宮先輩が先生にかみつく。
「いや。これはお前がやったことだ。教室の中でただ1人。この落書きの真ん中にお前が立っていたんだぞ」
「いや、教室のど真ん中にこんな面白いもんあったら立っちまうだろ、普通!」
普通……ではないかな。
茜ならやるかもしれないけど。
「もっと生徒の言葉を信じろよ!先生だって、俺が先生みたいに友だちを責めてたら怒るだろ!?」
「なんだと、その口の聞き方は……!唐澤先生に報告されたいか?」
「唐澤先生!?頼む、唐澤先生だけはやめてくれ…!」
出た、唐澤先生。
1年生と関わりの薄い2年生の学年主任にも関わらず、入学して間もないわたしたちにも早々に噂が拡がっている名物先生だ。
「鬼の唐澤」。とにかく怒ると怖い。
というか、怒ってなくても怖い。
というか、いつも怒っているというか。
六宮先輩がビビるのも頷ける話だ。
それにしても、六宮先輩もこの先生もお互いかなりヒートアップしている。
このままじゃ、状況は悪くなる一方……
そう思ったとき、美咲先輩が止めに入った。
「――梅田先生。少し、よろしいですか。」
あ、この先生、梅田先生っていうんだ。
「私は3年1組の立花美咲といいます。
少し、このことについてお話を聞いてもよろしいですか?」
美咲先輩、もしかして六宮先輩を庇おうとしてる?
さっき、「冤罪かも」って言ってたし。
それを抜きにしても、美咲先輩は正義感の強い人だ。
将来の夢である先生が、こんな風に怒ってたら止めに行きたくなるよね。
「あ、ああ……。立花がいうのなら……」
先生がクールダウンする。
流石美咲先輩。
普段真面目だとこういうときスムーズなんだよな。
少し落ち着いた梅田先生はことのいきさつを教えてくれた。
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時間は午後5時くらい。
帰りのホームルームが終わって、皆が部活に向かってから約1時間くらいたった時間帯だ。
場所は、もちろん今いるこの場所。A棟だ。
2年生の全部のクラス(1組から6組)は順番にA棟2階に入っている。
A棟には階段が2つある。
B棟側(なんでもない部の部室とかがある棟の方角)の階段と、C棟側(職員室とか、理科室、音楽室系の特別教室がある棟の方向)だ。
梅田先生がこの現場に出会ったのは、職員室から自分の担任の2年6組に帰る途中だった。
職員室からだから、C棟側の階段を登って来たことになる。
C棟側から見ると2年6組は端っこだから、歩いてる途中に2年生の全ての教室を見ることになるのだ。
もし、先生がB棟側の階段を登ってきていたら六宮先輩とは出会ってなかったってことだね。
そして、暗い教室の中に人影を見た梅田先生は歩みを止めて中をよく見てみた。
すると、大きくて、やけに綺麗な魔法陣の中心で六宮先輩がノリノリでポーズをとっていたってわけだ。
――いや、まあ確かに六宮先輩怪しいけど。
でも、先生に見つかるっていう危険を冒してこんなことする意味あるのかな?(実際見つかって超めんどくさいことになってるし)
男子だったら、それにヤンチャで知られる六宮先輩ならやってもおかしくないのかな。
さて、どう無実を証明したものか。