第7話 陣
――2018年4月15日
「――またお前か、六宮!いい加減にしろ!」
「だから、今回は違うんだって!ちょっとは聞く耳持てよ!」
A棟2階、2年生の教室のエリアの廊下にいたわたしと茜、美咲先輩は首をかしげた。
「なにかしらね。揉め事?あっちの教室からだわ」
美咲先輩が相変わらずの落ち着いた声で言う。
「ちょっと見てみましょう!ちょっとだけ」
茜がウキウキで走り出す。
「2年3組」と書かれた札が上についている扉の陰から教室をそっと見ると、中には40歳くらいの男の先生と男子生徒が1人ずつ。
言い争っているようだった。
けど、それよりも私たちの目を奪ったのは……
「なにあれ、おっきな魔法陣……!」
思わずそう声が漏れる。
「六宮、お前先週美術室のガラス割ったばっかだろ!次はこんなふざけたもんで教室汚しやがって……」
「いや、確かにあのガラスはやっちまったけど……今回は違う!なんで信じてくれないんだよ……」
「お前の日頃の行いだ」
六宮と呼ばれた生徒は不満そうに頭をかいた。
「六宮君、また何かやらかしてるわね」
先輩が微かに笑いながらささやく。
「先輩、知ってるんですか?」
わたしがそう聞くと、
「ええ。2人は入ったばっかりだから知らないと思うけど、彼は2年生きっての問題児よ。
問題児といっても、タバコとかそんなことはしないからかわいいものだけどね。
でも、去年から生徒会も手を焼いてたわ」
そう答えてくれた。
「へぇー。わんぱく小僧ですか。うちの小学校にもいましたいました」
あ、いたいた。
なんだかんだ、そういう子がいた方が賑やかで楽しいんだよね。
「――でも、なんか妙ね。」
美咲先輩が真剣なトーンで言う。
「そうなんですか?」
「ええ。
六宮君は確かに超トラブルメーカーだけど、やってしまったことはやってしまったと素直に認める子よ。
そっちの方が怒られる被害が少なくなるってことをよく分かってる」
流石、説教を受けるベテランだ。
先輩が続けた。
「その彼があんなに否定するなんて、今回は本当に冤罪なのかもしれないわね」
「え、じゃあ可哀想じゃないですか!」
そう言って茜が頭を上げたとき、私の顎にジャストミート。
ゴツ、というかなり大きな音がした。
「あ、いったぁああ」
声を出して悶えずにはいられなかった。
そして、これが何を意味するかと言うと……
「おい、そこの3人!何を見ている!」
先生に見つかった。
六宮先輩に対する怒りっぷりからしてかなり厳しそうな先生だ。
厄介なことになりそうだ……
わたしがそう思っている間に、茜はもう動いていた。
「すみませんでした!!!!」
ここにも説教受けるプロがいた。