なんでもない部、活動記録
どうも、みなさん改めまして、三枝杏です。
わたしたち、なんでもない部の日常の水筒ティータイムの一部を見てもらおうかなって思ってね。
わたしの覚えてる限りだけど、よろしくね。
もしかしたら、第2弾があるかもよ。
――2018年5月24日
「みんな、おでんの具で何が好きですか?」
5月だというのに茜が突然おでんトークを切り出したが、わたしたちの会話はだいたいいつもこんな感じで始まるのだ。
「私は、うーん……ウインナーかな」
「え、おでんにウインナー入ってるですか?」
私の家では入ってないから、かなり意外だ。
「え、普通に入ってるわよね?」
「木暮家にも入ってます!」
みんな結構入ってるんだ……
「杏もやってみて。これが美味しいのよ。ウインナーって、おでんの具の中ではかなりジューシーな感じでしょ?牛スジとは違ったベクトルでさ」
「ベクトル……ってなんです?」
ナイス、茜。私もそれ思った。
「あ、えっと……数学の、いや、理科なのかな。なんか、力があるとしたら、必ず大きさと向きがあるのよね」
「???」
意外と、美咲先輩はテンパるのが早い。
「まあ、なんというか、『感じ』よ!『感じ』。ウインナーは牛スジとはまた違った感じでジューシーなの」
「分かりますよ!先輩!ベクトルは全然分からなかったけど!」
「うっ……」
茜が無邪気な刃を美咲先輩に突き立てる。
「将来先生になりたいんだから、もっと説明上手くならなきゃな……」
「杏は?杏は何が好きなの?」
わたしか。
ぶっちゃけ全部おいしくて好きなんだけど、家族にとられると悲しいのは……
「玉ねぎ揚げ」
「めっっっっちゃ分かる!!」
茜から絶大な支持を得たようだ。
「玉ねぎ揚げって、なに?」
「あれです!小さめの練り物で、中に刻んだ玉ねぎが入ってるやつです!」
テンションが急上昇したら茜がそのまま説明する。
「あ!あれね!私練り物は若干苦手だけど、あれなら美味しく食べれるわ」
「あれ美味しいんですよねー。なんであの中の玉ねぎあんなに甘いんでしょう……
食感も最高ですし。スーパーのおでんセットにちょっとしか入ってないのがもったいない」
わたしの舌も回る回る。
「ふふ。杏、よっぽど好きなのね」
私のあまりの熱弁に美咲先輩が笑う。
「いやー、分かるよ。あれはおでんを華やかにしてくれる。若干存在忘れてたけど、私も3、4番目とかに好きだな」
「じゃあ茜の1番はなんなの?」
わたしが聞くと、茜は淀みなく答えた。
「そりゃあ、スープだよ」
「スープ?」
「そ。卵が若干溶けたスープ」
「いやあんた細かすぎるでしょ」
「具っていったの茜でしょ」
わたしと美咲先輩からの一斉ブーイング炸裂。
「いやいや、あれにご飯とか入れて食べてみな。抜け出せなくなるよ」
「薬物じゃないんだから」
「確かにあれは美味しいわ。途中でからしを入れたりしてね。美味しいのよね」
「ですよね!美咲先輩!」
「というか、美咲先輩からしつけるんですか、大人ですね……」
「からし美味しいわよ?納豆のパックに入ってるやつだからそこまで辛くないし」
「あ、わたし納豆にからし入れられないんです……」
「え!そうなの!でもさ、杏お寿司にはわさび結構つけるよね」
「あ、逆に私がわさび苦手だわ……」
「えー!先輩それ可愛いですよ!ギャップ萌えってやつです」
「何ばかなこと……」
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