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第2話 デビューは突然に

 俺は、殴られていた。




 いや厳密に言うと殴られる“フリ”をしていたのだ。


殴られたフリで首を動かしその勢いのまま地面に倒れ込む俺。


 




「その倒れ方だと怪我するからもっと受け身をとって!」


「はい!」





チームリーダーの叶さんからのダメ出しが入り俺もそれに応える。





「武田さん、もう一度お願いします!」


「分かった。よし来い!」


「うおぉぉぉぉぉっ!!」





 俺は今、アクションチーム「ROSSO ACTION MEMBERSロッソアクションメンバーズ」通称:RAMの練習の為、RAM専用の道場にいた。





 俺は昔から特撮が大好きな所謂特撮オタクという奴で母親曰く、物心がつく前から毎週TVの特撮ヒーロー番組を欠かさず観ていたそうで、それは今になっても変わってない。


 この手のものは普通成長と共に興味をなくすものだが俺は逆で成長と共にどんどん特撮にのめり込んでいった、いつしか特撮ヒーローになりたい、そんな思いを抱く様になっていた。




 そんなある日、俺は運命の出会いを果たしたのだ。


入学式の帰り、たまたまある建物に貼ってあった一枚の小さな広告を見かけた。そこにはこう書かれていた。




「キャラクターショー、スーツアクター募集!」と。




 後で知ったが、そこはRAMを運営する会社の事務所でたまたま見かける人がいればと思い張り出していたのだったと。


 特撮ヒーローや怪人はスーツアクターと呼ばれる人達が演じているもの、そんな知識は既に身に着けていた俺は「スーツアクターになれば特撮ヒーローになれる…。今この機会を逃すと確実に後悔する!」と思い、事務所の門を叩いた。


 さすがにいきなり見ず知らずの高校生が「スーツアクターになりたい」と押しかけてきて事務所の人もさぞ迷惑だっただろうと思う。


 だが、俺は追い返されず、その場で履歴書を書かされ(証明写真は後で撮った)、簡単な面接ですぐ入団採用となった。




 そして土曜、日曜、祝日は大体ショーの現場がある事、ショーの現場のある日の前日夜にリハーサルがある事、月曜夜は週末のショーで使用した衣装の片づけとミーティング、火曜夜と木曜夜に通常の練習がある事を告げられ、改めて次の通常練習日に来てくれ、そこから始めようという事になった。


 




 正直、この時俺は興奮していた、人生で一番興奮していたと過言でも無い位に興奮していた。


 この仕事を続けていけばずっと憧れていた、大好きな特撮ヒーローになれる!と。





 そして初練習の日、緊張しながらも参加していた先輩メンバーの皆さんに挨拶し、そのまま練習となったのだ。


 そしてそれから2週間近くが経過して、好きな世界にいられる今の俺は充実感でいっぱいだ。




 このチームには上手い人達も大勢いる。いつか上手くなって先輩達と並んでヒーローを演じたい、それが今の俺の目標だった。





「「ありがとうございましたー!!」」





 今日の練習も無事に終了した。怪我とか無くて良かったな。


持参したスポーツドリンクを飲みながらクールダウンしていると一人の先輩が声をかけてきた。





「入ってから2週間経ったけど、どう?」


「まだやっぱり緊張しますけど、楽しいです!」


「そう、なら良かった」





 満面の笑みの俺に笑顔で返す人、この人は矢部陽介(やべようすけ)さん。


大学時代からこの仕事を始めてコンビニでバイトしながら二足の草鞋で参加している人で、俺の教育係だ。明るく屈託のない性格の人で俺も話しやすい。





「あ、そういえば叶さんが呼んでたよ」


「叶さんが?」


「早く行った方が良いと思うよ」


「分かりました、そうします。わざわざありがとうございます」





 俺は矢部さんに頭を下げ、すぐに道場を出て事務所に向かった。


事務所にはRAMのチームリーダー・叶雄一(かのうゆういち)さんがいた。


 叶さんは昔別の大きなアクションチームに所属していたが、そこを退団してRAM創立時のメンバーの一人となったキャリア25年のベテランだ。


 物静かな人ではあるがやはり歴戦の勇士のオーラを漂わせてちょっと気後れしてしまう所がある。





「桐生です」


「おぉ、桐生君か。わざわざ悪いな」


「いえ、別に大丈夫ですけど、話とは…?」


「あぁ、その話なんだけど桐生君さ、今週の日曜って空いてる?」


「ええ、空いてますけど…」





 俺は予定がない事を正直に答えた。友達はいない事は無いが非常に少ない、姉や幼馴染達も忙しいし、どうせ日曜は家で一人でいる事になるだろう。


 




「来週の戦隊の現場の人が足りてないんだ。桐生くん出てくれるか?」





それは俺にとって正に寝耳に水な話だった。

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 なおこの作品はフィクションです。実際にアクションチームの事務所にいきなり押しかけても追い返されます。

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