かわいいうえに女装してくれるなんてお得。
今回のひとことメモ
男の娘ってみんな貧乳ですよね。かわいい。そして関係ない。
幼なじみと付き合ってしまった。
告白されてから、二時間も経たないうちにボクのほうから告白してしまった。いや、別に告白したことに後悔はない。ずっと前からボクは翔のことが好きだったんだから、その気持ちを今日、今この瞬間翔にぶつけてしまっても問題はないはず。
問題といえば。
「天音。恋人として聞きたいんだが、女装してみる気あるか?」
「逆に恋人として聞きたいんだけど、どうして女装させようとしてるの?」
翔がカバンから取り出したうちの学校の女子生徒の制服を手に迫ってきていることくらいだ。部屋の隅っこに追い込まれてしまい、もうそろそろ翔の魔の手ボクのもとに届きそうである。
「というか、なんで持ってるの? カバンのなかに普通に入ってたけど、どうしたの?」
「いや、まあ、告白成功したら記念に着てもらって写真撮影させてもらおうかと……」
「嫌だよ、なんでそんなことしなきゃなんないんだよ? ボクは男の子だって言ったろ」
「? ああ、お前は立派な男の娘だろ?」
………………。
なんか、すごく違和感を感じる。普通に解釈してしまってもいいはずなのに、翔の言葉にどうしようもなく、違和感を覚えてしまう。
試してみるか……。
「ちょ、翔。男の子って、こんな字だよな」
翔の制服で埋まっていないもう片方の手を取り、「男の子」と指でなぞるようにして書く。
「お、おう、おう? 違うぞ? こう書くんだ?」
ボクの右手を逆さまにして──、
「ふ、ふふっ、くすぐったいぞ」
全身にぞわっとした感覚が駆け巡り、一瞬言い表せないような不思議な感覚に陥ったが、すぐにくすぐったいという感情のほうに思考がより、思わず笑ってしまった。これ、ちょっと気持ちいいな。ずっとこの感覚に浸ってたくなる。だがしかし、文字を書き終わったところで、翔の指はボクの手のひらからは離れて行ってしまう。あっ、と声を漏らしてしまいそうになるけれど、心のなかにその惜しいという感情を押し込めて、翔が書いた文字を感じる。
男の娘。
すうううう。
「ボクそんなにかわいい?」
男の娘という単語の意味は一応知っているつもりだけど、ボクなんかがそれに当てはまるのかという話だ。翔の目にボクのことがどう見えてるのか、告白する理由としても挙げていたがそれがどういうつもりなのか、また今度にでも聞いてみるとしようかな。そんなことよりも、今は翔がどうこたえるのか注目しよう。返事次第では女子生徒用の制服も着てあげないことはない。
「もちろん、オレにとってお前が一番かわいいということは自明の理だが、オレが見てみたいのは、かわいい×かわいいなんだ。これ以上ないほどかわいいお前が、さらにかわいくなる可能性があるなら、オレとしては死んでもチャレンジすべきだと思う。もし嫌だったら別に構わないが、もし一ミリでも可能性があるなら、この制服を着てくれないだろうか?」




