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白海を進め

 漆黒の蒸気船が白い海を進む。あと100キロで南極に到達するとのことで、艦長は海軍軍人の鵜月うげつをデッキに連れ出した。



「多少荒れているが航海は順調だよ鵜月大佐。今日の内に南極半島に着くだろう」



 南極海を初めて目の当たりにした鵜月は、その白さに驚いている。この白さ故に南極海は白海とも呼ばれている。



「この白い海。全てが溶けたバニラシェイクですか」


「その通り、温暖化が著しいのでバニラシェイク氷床も溶け出しているのだ。まったく白海の波飛沫は粘ついていかん。軍服がネバネバになってしまう」


「甘い香りがします」



 チラチラと雪が舞う。艦長は頬についた雪をペロリと舐めると、バニラシェイクの味がする。



「砂糖雲と乳雲が南極上空でぶつかってバニラシェイクの大雪を降らせると言われるが、実のところ原理は全く未解明だそうだよ」



 南極を覆うバニラシェイク氷床の厚さは平均で4000メートルと言われている。それが近年の温暖化で溶け始めているという。春になるとバニラシェイク氷河が溶けて川ができる。それが台地から一気に流れ落ち、落差200メートルのバニラシェイクの滝を作り出す。海に流れ出たバニラシェイクは、大洋を循環する寒流の大本になるのだ。



 艦長はデッキの手すりに掴まり海を眺めた。半透明のペンギンが白海を泳いでいる。



「氷砂糖ペンギン。あれは、なかなか美しい生物なのだが、連れて帰ろうとすると可哀想なことに溶けてしまう。冷凍技術がもっと進歩しないと無理だな」


「この辺りにはバニラ海老が豊富にいますから。砂糖鯨の生息域もこの辺りだったと思います」



 漆黒の蒸気船は白い煙をモクモクと吐きながら、白い海を進んでいく……。

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