始まりの始まり
春が来た
新しい制服
新しいカバン
サワサワサワ
風は心地良い
いつもと同じ春
桜のはなびらは毎年変わらず
ゆっくり舞うのね
「はぁー」
「ぅ?どしたの?瑠璃亜」
「…なんでもないのよ、飛鳥…」
この可愛いツインテールの娘が
私の想い人【一条飛鳥】
クセ毛、猫っけ
前髪もふかっと膨らんでいる
控えめに言っても撫で回したい
「そぅ?折角の美人さんが、眉間にしわ寄せてどうしたの?」
ヒラリと目の前に来て
じっと瞳の奥を見つめて数秒
飛鳥がほんの少し首をかしげ
私の頬にそっと触れる
「飛鳥には言えない悩みなの??」
「!?!?だから!それが!だめぇぇぇ!!」
「ぅ?」
「!!!飛鳥!!さっきお話しましたよね?!距離が近いの!貴女の距離感!今日からは『特に』それじゃあ駄目なのよ!?お分かり?!」
「……」
あら、困った顔…可愛い
と思ったらすぐに満面の笑みで
私は飛鳥に抱きしめられた
「瑠璃亜、心配しすぎ!この位、普通普通♪」
「分かってくれないのね…。ハグ禁止って言ったのに…」
飛鳥の腕が緩んで
髪の毛が首元をくすぐって離れた
「ハグ、いや??」
「…それは…いつでもウェルカムです」
「じゃぁいいじゃんかー」
「誰にでもがダメなんです」
「仲良しになるには一番手っ取り早いよ?」
「今年から男子もいるのよ!?」
「??だめなの??」
「駄目です!!!」
そう。私達が通う中間一貫校クローバー学園は
私達が高校生になった
この春から共学に変わってしまう。
女子校だったのに、時代の流れとはこんな所まで
私の邪魔をするらしい
これは危機!!
女子だけならまだしも、男子にまでなんて!!
なんとしても阻止しなくては!!
飛鳥のハグは男子などには渡さない!!